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| 一般内科

健診で「脂肪肝」と言われたら?マンジャロの研究と「線維化」を確認する大切さ

☝️ はじめに

「お酒をほとんど飲まないのに、脂肪肝と言われました」

「マンジャロを使えば、肝臓も良くなるのでしょうか?」

「肝臓の数値が正常なら、心配しなくて大丈夫ですか?」

健康診断で脂肪肝を指摘されると、このような疑問を持つ方もいらっしゃいます。

チルゼパチドという薬について、脂肪肝炎や肝臓の線維化の改善を報告した臨床試験があります。ただし、健診で脂肪肝を指摘された方全員に、この薬が必要という意味ではありません。

まず大切なのは、脂肪肝の原因と、肝臓にどの程度の炎症・線維化があるかを確認することです。

☝️ 脂肪肝・脂肪肝炎・線維化とは?

脂肪肝は、肝臓に脂肪が過剰にたまった状態です。

肥満、糖尿病、脂質異常症などの代謝異常に関連する脂肪性肝疾患は、現在「MASLD」と呼ばれています。その中で、炎症や肝細胞の傷害を伴うものが「MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)」です。

一方、飲酒、ウイルス性肝炎、薬剤などが関わることもあるため、原因を確認する必要があります。

「線維化」は、傷ついた肝臓で修復が繰り返され、傷あとに相当する組織が増えた状態です。進行すると肝硬変につながることがあります。

ただし、脂肪肝の方が全員、脂肪肝炎や肝硬変へ進むわけではありません。肝臓に脂肪があることと、炎症・線維化が進んでいることは分けて考えます。

☝️ 研究では何が分かっている?

2024年に医学誌「The New England Journal of Medicine」で、SYNERGY-NASH試験が報告されました。

これは、肝生検でMASHとF2~F3の線維化(中等度~高度)を確認した成人190人を対象とする、第2相のランダム化比較試験です。2型糖尿病のある方・ない方の両方が含まれました。

参加者を無作為に分け、チルゼパチドまたはプラセボを週1回、52週間使用して比較しました。薬の効果を検討する介入試験であり、診療記録から関連を調べる観察研究とは異なります。

主要な評価項目は「線維化を悪化させずに、MASHが消失した割合」でした。重要な副次評価項目として「MASHを悪化させずに、線維化が1段階以上改善した割合」も調べています。

治療群線維化の悪化を伴わないMASHの消失MASHの悪化を伴わない線維化の1段階以上の改善
プラセボ10%30%
チルゼパチド5mg44%55%
チルゼパチド10mg56%51%
チルゼパチド15mg62%51%

※本表は原論文抄録の解析に統一しています。解析方法によって報告される数値は異なります。
※用量は研究の条件を示したもので、患者さんへの使用量の推奨ではありません。

52週時点で評価可能な肝生検結果があったのは157人で、欠測データには統計的な補完が行われています。

この結果は、対象となった患者さんで、チルゼパチドによる肝組織の改善が期待できることを示しています。「肝臓の数値が下がった」という結果だけではありません。

☝️ まだ分かっていないこと

今回の研究から、次の点までは判断できません。

  • 健診で脂肪肝を指摘された方全員に、同じ効果があるか
  • 肝硬変がある方にも、同じ結果が得られるか
  • 肝硬変・肝がん・肝臓に関連する死亡を長期的に減らせるか
  • 治療を終了した後も、効果が続くか

また、体重減少による効果と、それ以外の作用による効果を、この試験だけで明確に分けることはできません。

線維化の改善は有望な結果ですが、副次評価項目であり、52週間の第2相試験です。「肝臓が完全に修復される」「肝硬変を確実に防げる」とは言えません。

消化器症状などの副作用も報告されています。患者さんごとの利益とリスクを考えることが必要です。

☝️ 日本でマンジャロは何の薬?

マンジャロの有効成分はチルゼパチドです。GIPとGLP-1という、血糖や食欲の調節に関わるホルモンの受容体に作用します。

2026年10月現在、日本でマンジャロの承認適応は「2型糖尿病」です。脂肪肝やMASHだけを理由とした使用は、承認されていません。自費診療であっても、承認適応が変わるわけではありません。

2型糖尿病と脂肪肝を併せ持つ方では、肝臓の状態も考慮しながら糖尿病治療を選択します。ただし、患者さんによって適した薬は異なります。

研究結果、薬の承認適応、保険診療の条件は、それぞれ分けて確認することが大切です。

☝️ 実生活ではどうすればいい?

✅ 1.健診結果を持参し、線維化のリスクを確認する

AST・ALTなどの肝臓の数値に加えて、血小板数、血糖、脂質、飲酒量、服薬状況などを確認します。

年齢・AST・ALT・血小板数から計算する「FIB-4」は、線維化のリスクを見積もる指標の一つです。ただし、これだけで診断が確定するわけではなく、年齢などの影響も受けます。

必要に応じて、肝臓の硬さを測る検査や、肝臓専門医への紹介を検討します。全員に肝生検が必要という意味ではありません。

ALTが正常でも、MASHや進んだ線維化を完全には否定できません。また、通常の腹部エコーで脂肪肝が分かっても、それだけで線維化の程度を正確に判断できるとは限りません。

✅ 2.飲み物と食事全体の量を見直す

毎日の砂糖入り飲料を、水や無糖のお茶に置き換えることから始めてみましょう。

主食を一律に禁止する必要はありません。食事全体の量を確認し、野菜、魚、肉、卵、大豆製品などを組み合わせます。間食や夜食も含めて振り返ることが大切です。

飲酒している方は、量と頻度を医師に伝えてください。線維化が進んでいる場合などは、禁酒が必要になることがあります。

✅ 3.減量が必要かを相談する

体重が多い方では、無理のない減量が肝臓の改善につながることがあります。

欧州の診療ガイドラインでは、過体重・肥満を伴うMASLDに対して、5%以上の減量が肝脂肪の改善目標として示されています。より大きな減量が炎症や線維化の改善につながる可能性もあります。

ただし、全員に同じ目標を当てはめるわけではありません。体格、年齢、筋肉量、持病に合わせて、段階的な目標を相談しましょう。

✅ 4.続けられる運動を選ぶ

運動は、体重が大きく減らなくても肝臓や代謝に良い影響が期待できます。

運動習慣がなければ、例えば5~10分の歩行から始め、体調を見ながら少しずつ増やしましょう。長く座り続ける時間を減らすことや、無理のない筋力運動も役立ちます。

糖尿病治療中の方は、低血糖や合併症にも配慮して運動を選びます。

✅ 5.血糖・脂質・血圧も一緒に管理する

脂肪肝の診療では、肝臓だけでなく、糖尿病、脂質異常症、高血圧などを合わせて確認します。

健診結果、お薬手帳、使用中のサプリメントの情報をお持ちください。サプリメントを、処方薬や生活習慣改善の代わりにすることは避けましょう。

☝️ まとめ

脂肪肝を指摘されたら、まず「原因」と「線維化のリスク」を確認することが大切です。

チルゼパチドの比較試験では、MASHと中等度~高度の線維化がある患者さんで改善が報告されました。ただし、健診で脂肪肝を指摘された方全員に薬が必要という結果ではありません。

日本でマンジャロの承認適応は2型糖尿病です。肝臓の状態、血糖、体重、持病を踏まえて、適した治療を考えます。

初台まちのクリニックでは、糖尿病・生活習慣病の診療と合わせて、肝機能異常や脂肪肝についてご相談いただけます。必要に応じて専門医療機関と連携します。

健診で脂肪肝や肝臓の数値の異常を指摘された方は、健診結果を持ってご相談ください。

初台まちのクリニック
初台駅南口から徒歩1分

【参考文献・参考資料】

1.Loomba R, Hartman ML, Lawitz EJ, et al.; SYNERGY-NASH Investigators. Tirzepatide for Metabolic Dysfunction–Associated Steatohepatitis with Liver Fibrosis. N Engl J Med. 2024;391(4):299–310.
DOI:10.1056/NEJMoa2401943
PMID:38856224
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38856224/

2.上記論文に関連する訂正通知:Tirzepatide for Metabolic Dysfunction-Associated Steatohepatitis with Liver Fibrosis. N Engl J Med. 2026;394(12):1248.
DOI:10.1056/NEJMx250014
PMID:41880634
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41880634/

3.European Association for the Study of the Liver; European Association for the Study of Diabetes; European Association for the Study of Obesity. EASL–EASD–EASO Clinical Practice Guidelines on the management of metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease (MASLD). J Hepatol. 2024;81(3):492–542.
DOI:10.1016/j.jhep.2024.04.031
PMID:38851997
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38851997/

4.医薬品医療機器総合機構(PMDA).マンジャロ皮下注アテオス 電子添文(2026年9月改訂).
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/530471_2499422G1024_1_11

5.佐賀大学 肝疾患センター.FIB-4 indexについて.
https://sagankan.med.saga-u.ac.jp/fib-4/1357.html

※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断や処方を行うものではありません。薬の開始・中止・増量や、極端な食事制限は自己判断で行わず、主治医にご相談ください。承認適応や診療情報は2026年10月5日に確認した内容です。

院長 富田恭子

この記事の監修

富田 恭子初台まちのクリニック 院長/日本糖尿病学会 糖尿病専門医

経歴

  • 2008年 福岡大学医学部医学科 卒業
  • 鳥取大学医学部附属病院、山陰労災病院、上尾中央総合病院、総合健診センターヘルチェック 勤務

資格・所属学会

  • 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
  • 日本内科学会 内科認定医
  • 日本医師会認定産業医/認知症サポート医
  • 抗加齢医学会 会員/日本フットケア・足病医学会 会員

糖尿病は初期に自覚症状が乏しく、放置すると合併症につながることがあります。糖尿病専門医として、将来の合併症を見据えながら「今できること」を一人ひとりと一緒に考え、継続して治療を進めます。

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