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足のピリピリ、我慢していませんか?糖尿病の足の痛みと治療の選び方

☝️ はじめに

「足先がピリピリして、夜になると眠れない」
「痛みの薬を飲んでいるけれど、十分に楽にならない」
「糖尿病があるから、足のしびれは仕方がない?」

こうした症状は、糖尿病による神経障害で起こることがあります。しかし、足の痛みやしびれの原因は一つではありません。

まず原因を確認し、痛みの程度や生活への影響、副作用に合わせて治療を見直すことが大切です。今回は、糖尿病の神経痛に対する薬の比較試験「OPTION-DM」と、日常でできる足のケアを紹介します。

☝️ 糖尿病による足の神経痛とは?

糖尿病によって末梢神経の働きが障害されると、足先のしびれや痛み、感覚の鈍さなどが生じることがあります。

痛みを伴う場合は「有痛性糖尿病性神経障害」などと呼ばれ、次のような症状がみられます。

✅ 両足の先がピリピリ、ジンジンする
✅ 焼けるように痛む、電気が走るように感じる
✅ 夜間に痛みが強くなり、睡眠を妨げる
✅ 靴下や布団が触れるだけでも痛い

一方で、神経障害があっても痛みがなく、感覚だけが鈍くなる場合もあります。「痛くないから大丈夫」とは限りません。[2,3]

足の痛みを、すべて糖尿病の神経障害と決めつけない

足の血流障害、腰の病気、ビタミンB12不足、けがや感染などでも、痛みやしびれが起こります。

特に、片足だけに急に症状が出た場合、歩くと痛くなり休むと軽くなる場合、傷や腫れがある場合は、ほかの原因も確認する必要があります。

診察では症状の経過に加え、足の皮膚、感覚、反射、血流などを調べ、必要に応じて追加検査を検討します。[2,3]

☝️ 研究では何が分かっている?

OPTION-DM試験は、3つの治療経路を比較しました

2022年にLancet誌で発表されたOPTION-DMは、英国13施設で行われた無作為化・二重盲検・クロスオーバー試験です。同じ患者さんが、異なる治療経路を順番に受ける方法で比較しました。[1]

対象は、糖尿病性の神経痛があり、痛みを0〜10点で評価した平均点が4点以上の成人です。140人が無作為に割り付けられ、治療を開始した130人が主要解析の対象になりました。

比較したのは、次の3経路です。

  1. アミトリプチリンから開始し、不十分ならプレガバリンを追加
  2. プレガバリンから開始し、不十分ならアミトリプチリンを追加
  3. デュロキセチンから開始し、不十分ならプレガバリンを追加

各経路は16週間で、最初の6週間は単剤治療、十分な鎮痛が得られない場合は2剤目を追加しました。主要評価項目は、各経路の最後の1週間の平均疼痛スコアでした。

特定の組み合わせが「一番」とは示されていません

平均疼痛スコアは、治療前の6.6点から、16週時にはいずれの経路でも3.3点まで低下しました。3経路の間に統計学的に有意な差はありませんでした。[1]

また、単剤で十分な効果が得られなかった方では、2剤目の追加後に痛みがさらに軽くなりました。

ただし、追加治療を受けた方と単剤を続けた方は、治療への反応によって分かれています。この比較だけで「誰でも2剤にすれば、単剤より必ずよくなる」とは言えません。

研究が示しているのは、特定の組み合わせの優越性ではなく、単剤で不十分な場合に追加治療を検討する意義です。

☝️ まだ分かっていないこと

痛みが軽くなることと、神経が回復することは別です

今回の試験は、主に痛みを和らげる効果を調べたものです。神経障害そのものが治ることや、失われた感覚が回復することを示した試験ではありません。

血糖管理は神経障害の予防・進行抑制に重要ですが、血糖値が改善すれば、すでにある痛みや感覚低下が必ず解消するわけではありません。[2]

日本の診療には、そのまま当てはめられません

日本でも、プレガバリン、デュロキセチン、アミトリプチリンは、それぞれ神経障害による痛みに関する適応があります。[5–7]

ただし、海外試験と日本では承認用量が異なる薬があります。例えば、試験でのデュロキセチンの最大量は120mg/日でしたが、日本の添付文書上の最大量は60mg/日です。

この試験は、すべての治療薬や組み合わせを比較したものでもありません。「どの薬から始めてもよい」と一般化せず、患者さんごとに選ぶ必要があります。

☝️ 実生活ではどうすればいい?

① 痛みと生活への影響を記録する

受診前に、次の点をメモしておくと治療の見直しに役立ちます。

  • いつから、どこが痛むか
  • 両足か、片足か
  • 痛みの強さを0〜10点で表すと何点か
  • 夜眠れるか、歩行に支障があるか
  • 現在の薬でどの程度楽になるか
  • 眠気、ふらつき、吐き気などがあるか

治療の目標は、痛みの数値だけでなく、睡眠や日常生活を改善することも含めて考えます。

② 薬は、効果と副作用の両方で選ぶ

代表的な薬には、次のような注意点があります。[5–7]

  • プレガバリン:眠気、めまい、むくみ、体重増加など。腎機能に応じた用量調整が必要です。
  • デュロキセチン:吐き気、眠気など。腎機能・肝機能や、ほかの薬との相互作用を確認します。
  • アミトリプチリン:眠気、口の渇き、便秘、排尿しにくさなど。心疾患や緑内障などがある方では、特に慎重な判断が必要です。

単剤で不十分な場合は、用量の調整、別の薬への変更、追加治療などを検討します。自己判断で薬を増やしたり、急に中止したりしないでください。

運転についても注意が必要です。プレガバリンとアミトリプチリンは、添付文書で服用中の運転などを避けるよう求められています。デュロキセチンでも眠気・めまいに注意し、処方時の説明に従いましょう。

③ 毎日、足を見て確認する

痛みの治療と並行して、足の傷を防ぐことが大切です。[4]

✅ 足の裏や指の間まで、傷・赤み・水ぶくれがないか確認する
✅ 見えにくい場所は鏡を使う、家族に見てもらう
✅ 足を優しく洗い、指の間まで水気を拭き取る
✅ 足に合った靴を選び、履く前に靴の中を確認する
✅ 裸足で歩くことや、湯たんぽなどによるやけどを避ける

タコやウオノメを自分で削ることも避け、医療機関に相談してください。

④ 血糖管理と生活習慣の見直しを続ける

血糖だけでなく、血圧・脂質の管理、禁煙なども大切です。運動は足の傷や血流の状態を確認し、無理のない方法を相談しましょう。

こんな変化は、早めに受診を

傷の周囲の赤み、腫れ、熱感、膿、発熱がある場合は、当日中に医療機関へ相談してください。傷がなくても、片足が急に赤く腫れて熱を持つ場合は、痛みが軽くても受診が必要です。

足が急に冷たくなる、白っぽくなる、強い痛みや急なしびれが出る場合は、急な血流障害の可能性があります。すぐに救急医療機関へ相談してください。

☝️ まとめ

糖尿病による足の痛みには、症状を和らげる治療の選択肢があります。

OPTION-DM試験では、比較した3つの治療経路に明確な優劣はありませんでした。単剤で不十分な場合には、効果と副作用を確認しながら追加・変更を検討することが大切です。

また、痛みが軽くなっても、足の感覚が戻ったとは限りません。毎日の足の観察と、糖尿病の継続的な管理を組み合わせましょう。

初台まちのクリニックでは、糖尿病専門医が、足の痛みやしびれ、血糖管理について相談をお受けします。必要に応じて専門医療機関と連携し、患者さんに合った治療を考えます。

初台まちのクリニック
初台駅南口から徒歩1分

【参考文献・参考資料】

  1. Tesfaye S, Sloan G, Petrie J, et al.; OPTION-DM trial group. Comparison of amitriptyline supplemented with pregabalin, pregabalin supplemented with amitriptyline, and duloxetine supplemented with pregabalin for the treatment of diabetic peripheral neuropathic pain (OPTION-DM): a multicentre, double-blind, randomised crossover trial. Lancet. 2022;400(10353):680–690.
    DOI:10.1016/S0140-6736(22)01472-6
    PMID:36007534
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36007534/
  2. American Diabetes Association Professional Practice Committee for Diabetes. 12. Retinopathy, Neuropathy, and Foot Care: Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1)–S276.
    DOI:10.2337/dc26-S012
    PMID:41358886
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41358886/
  3. 国立健康危機管理研究機構(JIHS)糖尿病情報センター「神経障害」。
    https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/060/060/01.html
  4. 国立健康危機管理研究機構(JIHS)糖尿病情報センター「フットケア」。2026年1月15日更新。
    https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/070/11.html
  5. PMDA「リリカ」電子添文。
    https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/1190017F1029_3?user=1
  6. PMDA「サインバルタ」電子添文。
    https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/1179052M1022_2?user=1
  7. PMDA「トリプタノール」電子添文。
    https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/1179002F1068_3?user=1

※本記事は一般的な医学情報を提供するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。薬の選択や用量、併用の適否は、症状・腎機能・持病・服用中の薬などによって異なります。自己判断で治療を変更せず、主治医にご相談ください。医薬品情報は2026年10月確認時点のものです。

院長 富田恭子

この記事の監修

富田 恭子初台まちのクリニック 院長/日本糖尿病学会 糖尿病専門医

経歴

  • 2008年 福岡大学医学部医学科 卒業
  • 鳥取大学医学部附属病院、山陰労災病院、上尾中央総合病院、総合健診センターヘルチェック 勤務

資格・所属学会

  • 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
  • 日本内科学会 内科認定医
  • 日本医師会認定産業医/認知症サポート医
  • 抗加齢医学会 会員/日本フットケア・足病医学会 会員

糖尿病は初期に自覚症状が乏しく、放置すると合併症につながることがあります。糖尿病専門医として、将来の合併症を見据えながら「今できること」を一人ひとりと一緒に考え、継続して治療を進めます。

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