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痩せれば睡眠時無呼吸も治る?チルゼパチドの研究と、減量・CPAPの考え方

☝️ はじめに

「いびきが大きく、家族から呼吸が止まっていると言われる」

「痩せれば睡眠時無呼吸は治る?」

「マンジャロを使えば、CPAPをやめられる?」

このような疑問をお持ちではありませんか。

肥満を伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、減量によって無呼吸が改善することがあります。チルゼパチドを使った比較試験でも、改善効果が確認されています。

ただし、「体重が減った=無呼吸が治った」とは限りません。睡眠検査で状態を確認し、CPAPなどの治療と減量を組み合わせることが大切です。

この記事では、研究結果と、日本での薬の適応を分けて説明します。

☝️ 閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは?

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、眠っている間に上気道が狭くなったり塞がったりして、呼吸が繰り返し止まる・浅くなる病気です。[2–4]

大きないびき、睡眠中の呼吸停止、日中の眠気、熟睡感の乏しさなどが手がかりになります。

肥満による気道周囲の脂肪は原因の一つですが、あごや気道の形、扁桃、鼻づまりなども関わります。太っていない方にも起こるため、体型だけでは判断できません。

重症度の評価には、睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を表す「AHI」などを用います。症状だけで診断するのではなく、必要に応じて自宅での簡易検査や、詳しい睡眠検査を行います。

☝️ 研究では何が分かっている?

2024年に発表されたSURMOUNT-OSAは、肥満と中等症~重症のOSAがある成人469人を対象とした、2つの無作為化比較試験です。[1]

薬とプラセボへの割り付けを無作為に行い、参加者と医療者に割り付けを知らせない「二重盲検」で、52週間比較しました。

■ 試験1:PAP療法を使用していない234人
■ 試験2:PAP療法を使用中の235人

PAP療法は、CPAPなど、空気の圧力で気道を開く治療です。

チルゼパチドは週1回投与し、段階的に増量して、忍容性に応じて10mgまたは15mgを使用しました。両群とも食事・運動の支援を受けています。1型・2型糖尿病のある方は対象外でした。

■ 無呼吸・低呼吸の回数が減少しました

主要評価項目は、52週間後のAHIの変化でした。

52週間後のAHIの平均変化チルゼパチド群プラセボ群群間差
試験1:PAP未使用−25.3回/時−5.3回/時−20.0回/時
試験2:PAP使用中−29.3回/時−5.5回/時−23.8回/時

群間差の95%信頼区間は、試験1で−25.8~−14.2回/時、試験2で−29.6~−17.9回/時でした。[1]

「約30回減少」は治療群内の平均変化です。薬の効果を考えるときは、プラセボ群との差も確認する必要があります。

■ 体重や睡眠に関する評価も改善しました

チルゼパチド群の体重は平均17.7%、19.6%減少し、睡眠に伴う困りごとの自己評価などにも改善が認められました。[1]

ただし、すべての方の無呼吸がなくなったわけではありません。「全員が快眠になる」「必ずCPAPをやめられる」という結果ではありません。

☝️ 日本で使える薬は?マンジャロとゼップバウンドを区別しましょう

マンジャロとゼップバウンドは、同じチルゼパチドを含む薬ですが、日本で承認されている適応が異なります。[2,3,5]

■ マンジャロ
2型糖尿病の治療薬です。OSAの治療薬としての適応はありません。

■ ゼップバウンド
肥満症に加え、2026年に「中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の適応が追加されています。ただし、OSAの適応はBMI 27以上に限られます。

BMIと重症度の条件を満たせば、どなたでも、どの医療機関でも処方できるという意味ではありません。

保険診療では、最適使用推進ガイドラインに基づき、睡眠検査、食事・運動療法、管理栄養士による栄養指導、医師・施設の体制などを確認します。原則として、投与施設で3か月以上の食事・運動療法を行っても十分な減量効果が得られない場合などに検討します。[2,3]

また、ガイドラインでは原則BMI 30以上を対象とし、BMI 27以上30未満では適用の必要性を慎重に判断するとされています。

OSAに対する投与期間は最大52週間とされ、効果を確認しながら中止計画も含めて管理します。肥満症としての治療条件とは区別が必要です。[2,3]

当院で相談した場合も、適応と必要な医療体制を確認し、必要に応じて専門医療機関へ紹介します。

☝️ まだ分かっていないこと

■ 減量すれば、CPAPは不要になる?

改善する方はいますが、体重だけでは判断できません。

CPAP使用中の試験でも、無呼吸を評価するためのPAP休止は、研究計画に沿って管理されたものです。患者さんが自分で中止してよいことを示した試験ではありません。[1]

減量後の治療変更は、睡眠検査や症状、合併症を再評価して主治医が判断します。

■ 心筋梗塞や脳卒中を防げる?

血圧などの改善は認められましたが、この試験から、心筋梗塞・脳卒中の発症や死亡を減らす効果まで確立したとは言えません。[1]

■ 日本のすべての患者さんにも同じ効果がある?

国際共同試験ですが、対象は肥満を伴う中等症~重症のOSA患者です。肥満のない方、軽症の方、糖尿病のある方などに、同じ効果量をそのまま当てはめることはできません。

また、薬による治療効果は示されていますが、そのすべてが減量だけによるものか、減量以外の作用も関わるのかは、この比較だけでは切り分けられません。

■ 副作用はある?

吐き気、下痢、嘔吐、便秘などの胃腸症状が報告されています。持病や併用薬も含めて、効果と負担の両方を確認する必要があります。[1,5]

強い腹痛や繰り返す嘔吐などがある場合は、処方した医師へ相談してください。

☝️ 実生活ではどうすればいい?

✅ 1.「痩せてから受診」ではなく、まず睡眠の状態を確認する

大きないびき、呼吸停止の指摘、日中の強い眠気があれば、ご相談ください。

症状の数だけで診断や重症度は決まりません。眠気が目立たなくても、無呼吸がある場合があります。

✅ 2.無理のない減量を、治療と並行して進める

減量が必要な方は、食事量や間食、飲み物、運動習慣を見直しましょう。極端な食事制限ではなく、持病や体力に合わせた計画を主治医と相談します。

CPAPが必要な場合は、減量の効果を待つ間も治療を続けます。

✅ 3.寝酒を控え、使用中の薬を伝える

飲酒は、いびきや無呼吸を悪化させることがあります。特に寝酒を見直しましょう。[4]

睡眠薬などを使用している方は、お薬手帳を持参してください。自己判断で中止・増減せず、処方した医師と相談します。

✅ 4.CPAPがつらいときは、調整を相談する

マスクの圧迫感、空気漏れ、鼻づまりなどがあれば、機器やマスクの調整で使いやすくなる場合があります。「つらいからやめる」前に相談してください。

✅ 5.強い眠気があるときは運転を避ける

日中の過度の眠気は事故につながるおそれがあります。運転中に眠くなる、居眠りしそうになる場合は運転を避け、早めに受診してください。[4]

☝️ まとめ

肥満を伴う睡眠時無呼吸では、減量は大切な治療の一つです。チルゼパチドの比較試験でも、無呼吸・低呼吸の改善が確認されました。

✅ 痩せても、無呼吸が治ったとは限らない
✅ CPAPの中止・変更は、検査で再評価して判断する
✅ マンジャロとゼップバウンドの適応を区別する
✅ 薬だけでなく、食事・運動と継続的な評価を組み合わせる

初台まちのクリニックでは、いびき・睡眠のお悩みと、体重、血糖、血圧などを合わせて確認し、必要な検査や専門医療機関への紹介につなげます。

いびきや日中の眠気が気になる方は、健診結果やお薬手帳をお持ちいただき、ご相談ください。

初台まちのクリニック
初台駅南口から徒歩1分

【参考文献・参考資料】

1.Malhotra A, Grunstein RR, Fietze I, et al.; SURMOUNT-OSA Investigators. Tirzepatide for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Obesity. N Engl J Med. 2024;391(13):1193–1205.
DOI:10.1056/NEJMoa2404881
PMID:38912654
PubMed

2.厚生労働省.最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(販売名:ゼップバウンド皮下注)~閉塞性睡眠時無呼吸症候群~.2026年5月.
ガイドライン

3.厚生労働省.閉塞性睡眠時無呼吸症候群の効能又は効果を有するチルゼパチド製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について.2026年5月18日、保医発0518第4号.
通知

4.日本呼吸器学会.呼吸器Q&A「Q14.夜、いびきをかく、と言われました」.
日本呼吸器学会

5.PMDA.ゼップバウンド皮下注アテオス 電子添文.2026年9月改訂、第6版.
電子添文

※薬の承認・保険診療に関する情報は2026年10月確認時点です。本記事は一般的な医学情報であり、診断・治療は個別に判断します。CPAPや薬の中止・変更は、必ず主治医にご相談ください。

院長 富田恭子

この記事の監修

富田 恭子初台まちのクリニック 院長/日本糖尿病学会 糖尿病専門医

経歴

  • 2008年 福岡大学医学部医学科 卒業
  • 鳥取大学医学部附属病院、山陰労災病院、上尾中央総合病院、総合健診センターヘルチェック 勤務

資格・所属学会

  • 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
  • 日本内科学会 内科認定医
  • 日本医師会認定産業医/認知症サポート医
  • 抗加齢医学会 会員/日本フットケア・足病医学会 会員

糖尿病は初期に自覚症状が乏しく、放置すると合併症につながることがあります。糖尿病専門医として、将来の合併症を見据えながら「今できること」を一人ひとりと一緒に考え、継続して治療を進めます。

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