こんにちは。初台まちのクリニックです👩⚕️

糖尿病治療薬としてだけでなく、メディカルダイエット(肥満症治療)としても広く普及している「GLP-1受容体作動薬(オゼンピック、マンジャロ、リベルサスなど)」は、体重減少や血糖改善に高い効果を発揮する一方で、実は「咳(せき)」という意外な副作用リスクがあることが、2025年11月に発表された最新の研究で明らかになりました。
今回は、米国の一流医学誌『JAMA Otolaryngology–Head & Neck Surgery』に掲載されたこの論文について、分かりやすく解説します。
☝️どんな研究結果が出たの?
この研究は、約200万人のデータを解析した大規模な調査です。
GLP-1受容体作動薬を使用している患者さんは、他の糖尿病薬を使用している患者さんと比べて、慢性咳嗽(8週間以上続く咳)と診断されるリスクが「約12%」高くなることが分かりました。
特に以下のポイントが注目されています。
1. 「逆流性食道炎」がなくても咳が出る?
GLP-1製剤は胃の動きをゆっくりにするため、胃酸が逆流しやすくなる(逆流性食道炎)ことが知られています。しかし、今回の研究では「逆流性食道炎の診断がない人」でも、咳のリスクが高まることが示されました。
2. 神経への直接作用の可能性
胃酸の逆流だけでなく、薬が咳に関係する神経(迷走神経)を過敏にさせている可能性も指摘されています。
☝️なぜ「咳」が出るの?(メカニズム)
考えられる原因は主に2つです。
• 胃酸の逆流(GERD/LPR): 胃の内容物が食道や喉まで上がってきて刺激する。
• 迷走神経への刺激: GLP-1受容体は神経系にも存在するため、咳のスイッチが入りやすくなっている可能性。
☝️こんな症状があればご相談ください
もし、GLP-1製剤(注射・内服)を開始してから、以下のような症状でお困りではありませんか?
✅風邪ではないのに、空咳(からせき)が続く
✅喉のイガイガ感が取れない
✅咳止めを飲んでもあまり効かない
これらは、薬剤による副作用の可能性があります。
一般的に咳の原因としては「アレルギー」や「喘息」が疑われがちですが、もしGLP-1製剤を使用中の場合は、お薬の影響も考慮に入れる必要があります。
最後に👩⚕️
GLP-1受容体作動薬は非常に有用な薬ですが、稀にこうした「咳」の症状が出ることがあります。
「最近ずっと咳が出るけれど、まさかダイエット薬(糖尿病薬)のせいだとは思わなかった」というケースも今後増えてくるかもしれません。
心当たりがある方は、自己判断で中断せず、まずは診察時に医師へご相談ください。症状に合わせて、胃薬、消化管運動改善薬の併用や薬剤の変更などを検討いたします。
【参考文献】
Gallagher TJ, et al. Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists and Chronic Cough. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2025 Nov 26.
DOI: 10.1001/jamaoto.2025.4181
※本記事は最新の研究データをご紹介するものであり、効果には個人差があります。
※現在、日本国内におけるマンジャロの保険適応は「2型糖尿病」です。脂肪肝治療のみを目的とした保険診療は認められていません(自費診療等の適応については医師にご相談ください)。