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クリニックブログ blog

糖尿病

【最新研究】「急激な改善」は危険信号?HbA1cを下げすぎ・下げ急ぐリスクについて

こんにちは、初台まちのクリニックです。

今年も残すところあとわずかですね。

診察室では、「次の検査までに絶対に数値を良くしたい!」「一気に正常値に戻したい!」という熱意あるお言葉をよくいただきます。

その前向きな姿勢は本当に素晴らしいです。

でも、実は「急いで下げれば良いというわけではない」ということをご存知でしょうか?

最新の研究(2024-2025年)では、「急激すぎる改善」が逆に体を傷つけてしまうことが分かってきました。

今日は、意外と知られていない「下げ急ぎの弊害」についてお話しします。

☝️「3ヶ月で2%以上」の低下は要注意?

「HbA1cが10%だったのが、3ヶ月で7%になった!すごい!」

一見すると大成功に見えますが、医学的にはここで「黄色信号」が灯ります。

最新の研究では、HbA1cが「3ヶ月で2%以上」急激に下がると、体がその激しい変化についていけず、次のような合併症を引き起こすリスクがあることが分かっています。

✅治療誘発性神経障害(TIND):

長年高血糖だった状態から急に正常化させると、神経がショックを受け、手足に「焼けるような激しい痛み」や「自律神経の乱れ」が出ることがあります。これを医学用語でTIND(ティンド)と呼び、近年特に注意が呼びかけられています。

✅網膜症(目)の一時的な悪化:

眼底の血管も急激な変化に弱く、急いで下げすぎると一時的に出血や白斑が悪化する可能性があります(早期悪化現象)。

☝️「下げすぎ」にもリスクがある(U字カーブ)

スピードだけでなく、「どこまで下げるか」も重要です。

かつては「低ければ低いほど良い」と言われていましたが、現在は「HbA1cと死亡率はU字型の関係にある」ことが分かっています。

✅高すぎる: 合併症が進む

✅低すぎる: 重症低血糖などが起き、かえって心臓への負担や死亡リスクが増える

つまり、「高すぎず、低すぎず、ちょうど良い範囲(安全域)」を目指すのが、最も長生きできる秘訣なのです。

☝️「ゆっくり、安全に」が合言葉

では、どのくらいのペースが良いのでしょうか?

一般的には、「1ヶ月に0.5%ずつ、3ヶ月で1〜2%以内の改善」であれば、目や神経への負担が少ないと言われています。

「ウサギのように急いで走ってバテてしまうより、カメのように着実にゴールを目指す」

これが、血管や神経を守りながら糖尿病と付き合うための鉄則です。

👩‍⚕️あなただけの「適正ペース」で

糖尿病の治療は、マラソンのようなものです。

焦ってペースを上げすぎると、思わぬ怪我(合併症の悪化)をしてしまいます。

✅今の数値をどれくらいの期間で下げるのがベストか?

✅自分の年齢や体の状態に合った目標値は?

これらは患者様お一人おひとりによって異なります。

「最近、急に数値を下げようと無理をしていないかな?」と気になった方は、ぜひ次回の診察でご相談ください。

安全第一で、長く続けられる治療計画を一緒に立てていきましょう。

【参考文献・根拠となるデータ】

以下の最新研究やガイドラインを参考にしています。

1. 急激な改善と神経障害(TIND)

Gibbons CH, et al. Treatment-induced neuropathy of diabetes. Brain / Neurology (2024-2025 updates)

2. 網膜症の早期悪化リスク

Akil H, et al. Incidence and Risk Factors for Early Worsening of Diabetic Retinopathy. (2025)

3. 厳格なコントロールと死亡率の関係(ACCORD試験ほか)

Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Study Group. N Engl J Med.

4. 日本の高齢者における治療目標

日本糖尿病学会・日本老年医学会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」

※本記事は最新の研究データをご紹介するものであり、効果には個人差があります。