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内臓脂肪と糖尿病の関係|見た目だけで判断しない、食事と運動の考え方

☝️ はじめに

「お腹が出ていると、糖尿病になりやすいのでしょうか?」
「体重が標準範囲なら、内臓脂肪は気にしなくてよい?」
「内臓脂肪を減らせば、血糖値は必ず正常になりますか?」

診察では、こうしたご質問をいただきます。

内臓脂肪の過剰な蓄積は、血糖・血圧・脂質の異常と関係します。ただし、お腹の見た目だけで内臓脂肪の量や糖尿病の有無を判断することはできません。

大切なのは、体重や腹囲だけでなく健診結果も確認し、自分に合った食事と運動を続けることです。今回は、研究で分かっていることと、日常生活で取り入れやすい対策を整理します。

☝️ 内臓脂肪とは?

皮下脂肪とは、つく場所が異なります

お腹の脂肪には、大きく分けて次の2種類があります。

・皮下脂肪:皮膚の下につく脂肪
・内臓脂肪:お腹の中の臓器の周囲につく脂肪

お腹が出て見えることには皮下脂肪なども関係するため、見た目だけで「内臓脂肪が多い」とは決められません。

また、肝臓などの臓器の中に蓄積する脂肪は「異所性脂肪」と呼ばれ、臓器の周囲にある内臓脂肪とは区別して考えます。[1]

なぜ血糖値と関係するのでしょうか?

インスリンは、血液中のブドウ糖を筋肉などに取り込ませ、血糖値を調整するホルモンです。

内臓脂肪の過剰な蓄積は、脂肪組織の炎症や脂肪酸の代謝の変化などを通じて、インスリンが効きにくい「インスリン抵抗性」と関係します。[1]

一方、脂肪組織にはエネルギーを蓄え、体の働きを調整する役割もあります。「脂肪はすべて悪い」「内臓脂肪から出るホルモンはすべて悪玉」という説明は適切ではありません。

2型糖尿病の発症には、インスリン抵抗性だけでなく、膵臓からインスリンを分泌する力、遺伝的な体質、年齢なども関わります。

そのため、内臓脂肪が多い人全員が糖尿病になるわけではなく、体重が標準範囲の人でも糖尿病を発症することがあります。

☝️ 研究では何が分かっている?

1.食事・運動・体重管理を組み合わせると、糖尿病予防につながります

米国のDiabetes Prevention Program(DPP)は、血糖が高めで2型糖尿病を発症するリスクの高い成人3,234人を対象としたランダム化比較試験です。ランダム化比較試験とは、参加者を無作為にグループに分け、介入の効果を比較する研究です。[3]

生活習慣介入のグループでは、食事の調整に加え、体重の7%以上の減量と週150分以上の身体活動を目標に、継続的な支援を行いました。

平均2.8年間の追跡で、2型糖尿病の発症率はプラセボ群より相対的に58%低くなりました。

ただし、これは食事・運動・体重管理を組み合わせた結果です。

「内臓脂肪だけを減らすと、糖尿病のリスクが58%下がる」
「すでに糖尿病の人も、同じ方法で必ず正常血糖になる」

という意味ではありません。また、米国の高リスク集団での結果なので、日本の患者さん全員に同じ減量目標を当てはめることもできません。

2.食物繊維の研究は、「減る」と「蓄積が少ない」を区別します

IRAS Family Studyでは、米国のアフリカ系・ヒスパニック系成人1,114人について、CTで測定した腹部脂肪の5年間の変化と生活習慣との関連を調べました。[4]

水溶性食物繊維の摂取量が1日10g多いことは、内臓脂肪の蓄積率が3.7%低いことと関連していました。

ここには、重要な注意点があります。

・食物繊維全体ではなく、水溶性食物繊維についての結果です。
・食物繊維を増やすよう割り付けた介入試験ではなく、観察研究です。
・「内臓脂肪の量が必ず3.7%減る」という意味ではありません。
・食事の調査は追跡時に行われており、摂取量の自己申告などにも限界があります。

この研究だけで因果関係は判断できません。野菜、豆類、全粒穀物などを食生活に取り入れることは大切ですが、特定の食品やサプリメントだけで内臓脂肪が減ると考えないようにしましょう。

3.運動による内臓脂肪の減少も報告されています

STRRIDE AT/RTでは、過体重で運動習慣の少ない成人196人を、有酸素運動、筋力トレーニング、その両方の3群に無作為に分け、8か月間比較しました。155人が介入を完了しています。[5]

CTで測定した内臓脂肪面積の平均変化は、有酸素運動群で約−15.9cm²、筋力トレーニング群で約+0.8cm²でした。同試験では、有酸素運動のほうが内臓脂肪の減少に有効でした。

ただし、糖尿病患者さんだけを対象とした試験ではなく、糖尿病の発症や心筋梗塞などを評価した研究でもありません。運動量や強度も決められており、誰でも同じ変化が得られるわけではありません。

筋力トレーニングには筋力の維持・向上という役割があります。内臓脂肪の変化だけで運動の価値を判断せず、体力や持病に合った方法を選びましょう。

☝️ まだ分かっていないこと

内臓脂肪は健康状態を考えるうえで重要ですが、次のようなことまでは断定できません。

・内臓脂肪を一定量減らせば、全員の血糖値が正常になる。
・内臓脂肪を減らすことだけで、心筋梗塞や脳卒中を確実に防げる。
・特定の食品やサプリメントで、内臓脂肪だけを選んで減らせる。
・同じ減量をすれば、誰でも同じ程度に内臓脂肪が減る。

体重や腹囲は経過をみるのに役立ちますが、腹囲の変化から内臓脂肪の減少量を正確に計算することはできません。[2]

体重があまり変わらなくても健康状態が改善することもあります。反対に、体重が減っても筋肉が減り、体力が落ちてしまう場合があります。検査結果と体調を合わせて評価することが大切です。

☝️ 実生活ではどうすればいい?

✅ まずは健診結果を確認しましょう

体重や腹囲に加えて、次の項目を確認します。

・血糖値、HbA1c
・血圧
・中性脂肪、HDL・LDLコレステロール
・肝機能など、健診で指摘された項目

腹囲は体重だけでは分からない情報を補いますが、腹囲だけで糖尿病を診断することはできません。

内臓脂肪の詳しい評価にCTなどを使うことはありますが、必要性は診療で判断します。お腹が気になるという理由だけで、全員がCTを受ける必要はありません。

✅ 減量が必要か、目標はどの程度かを相談しましょう

日本ではBMI 25以上を「肥満」とします。ただし、BMI 25以上の人が全員「肥満症」というわけではありません。

肥満関連の健康障害や内臓脂肪の蓄積などを評価し、医学的に減量が必要な状態を肥満症として治療します。[6]

高度肥満症を除く一般的な肥満症では、現在の体重から3%以上の減量が初期目標の一つです。高度肥満症では、合併症に応じて5〜10%などの目標を検討します。[6]

標準体重の人や高齢者では、体重を減らすことより、栄養状態や筋肉を保つことが大切な場合もあります。全員が一律に5〜10%減量する必要はありません。

✅ 特定の食品より、食事全体を見直しましょう

始めやすい工夫は、次のようなものです。

・日常的な甘い飲み物を、水や無糖のお茶に置き換える。
・野菜や大豆製品などを、普段の食事に取り入れる。
・主食を含め、食事・間食全体の量を振り返る。
・魚、肉、卵、大豆製品などを組み合わせ、たんぱく質も適切に摂る。
・飲酒量と、飲酒時の食事・間食を確認する。

「内臓脂肪を減らすために炭水化物をすべて抜く」「たんぱく質を大量に摂る」といった極端な方法は必要ありません。腎臓病などがある方では、たんぱく質量も個別に調整します。

健康に良さそうな食品でも、大量に追加すればエネルギー摂取が増えます。食事全体の中で取り入れ方を考えましょう。

✅ 今より少し動くところから始めましょう

運動習慣がなければ、例えば5〜10分の歩行から始め、体調を見ながら時間や回数を増やします。長く座り続けず、こまめに立って動くことも役立ちます。

筋力トレーニングは週2〜3日が目安として示されていますが、内容や強度は体力・関節の状態・合併症に合わせて調整します。[7]

糖尿病のある方は、治療薬による低血糖や、網膜症・神経障害などにも配慮が必要です。運動を強くしたい場合や合併症がある場合は、主治医に相談してください。

胸痛、強い息切れ、めまいなどが出た場合は運動を中止し、症状が強い・続く場合には速やかに医療機関へ相談しましょう。

✅ 睡眠や生活のリズムも整えましょう

成人では6時間以上を目安に、自分に必要な睡眠時間を確保することが勧められています。6時間眠れば誰でも十分という意味ではなく、朝の休養感や日中の眠気も大切です。[8]

大きないびき、睡眠中の呼吸停止、強い日中の眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の評価も検討します。

睡眠を整えることは健康管理の一部ですが、「よく眠れば内臓脂肪が必ず減る」とは言えません。

☝️ まとめ

内臓脂肪の過剰な蓄積は、インスリンが効きにくい状態や生活習慣病と関係します。ただし、糖尿病の原因や治療効果は内臓脂肪だけでは説明できません。

✅ 見た目だけで判断せず、腹囲と健診結果を確認する。
✅ 食事・運動・体重管理を組み合わせる。
✅ 特定の食品やサプリメントの効果を過信しない。
✅ 減量が必要か、どの程度を目指すかを個別に考える。
✅ 体重だけでなく、血糖・血圧・脂質・体力の変化も確認する。

初台まちのクリニックでは、糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満症などについて、健診結果と生活習慣を合わせて評価します。

「腹囲が増えてきた」「血糖や中性脂肪が高い」「自分に減量が必要か知りたい」という方は、健診結果とお薬手帳をお持ちいただき、ご相談ください。

初台まちのクリニック
初台駅南口から徒歩1分

【参考文献・参考資料】

  1. Neeland IJ, Ross R, Després JP, et al. Visceral and ectopic fat, atherosclerosis, and cardiometabolic disease: a position statement. Lancet Diabetes Endocrinol. 2019;7(9):715–725.
    DOI: 10.1016/S2213-8587(19)30084-1
    PMID: 31301983
  2. Ross R, Neeland IJ, Yamashita S, et al. Waist circumference as a vital sign in clinical practice: a Consensus Statement from the IAS and ICCR Working Group on Visceral Obesity. Nat Rev Endocrinol. 2020;16(3):177–189.
    DOI: 10.1038/s41574-019-0310-7
    PMID: 32020062
  3. Knowler WC, Barrett-Connor E, Fowler SE, et al.; Diabetes Prevention Program Research Group. Reduction in the incidence of type 2 diabetes with lifestyle intervention or metformin. N Engl J Med. 2002;346(6):393–403.
    DOI: 10.1056/NEJMoa012512
    PMID: 11832527
  4. Hairston KG, Vitolins MZ, Norris JM, Anderson AM, Hanley AJ, Wagenknecht LE. Lifestyle factors and 5-year abdominal fat accumulation in a minority cohort: the IRAS Family Study. Obesity (Silver Spring). 2012;20(2):421–427.
    DOI: 10.1038/oby.2011.171
    PMID: 21681224
  5. Slentz CA, Bateman LA, Willis LH, et al. Effects of aerobic vs. resistance training on visceral and liver fat stores, liver enzymes, and insulin resistance by HOMA in overweight adults from STRRIDE AT/RT. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2011;301(5)–E1039.
    DOI: 10.1152/ajpendo.00291.2011
    PMID: 21846904
  6. Ogawa W, Hirota Y, Miyazaki S, et al. Definition, criteria, and core concepts of guidelines for the management of obesity disease in Japan. Endocr J. 2024;71(3):223–231.
    DOI: 10.1507/endocrj.EJ23-0593
    PMID: 38123337
  7. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023.
    身体活動・運動ガイド2023
  8. 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023.
    厚生労働省「睡眠対策」

※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。診断・治療・減量目標・運動の内容は、年齢、体力、栄養状態、持病や治療薬によって異なります。極端な食事制限や、自己判断によるお薬の中止・変更は避け、主治医にご相談ください。

院長 富田恭子

この記事の監修

富田 恭子初台まちのクリニック 院長/日本糖尿病学会 糖尿病専門医

経歴

  • 2008年 福岡大学医学部医学科 卒業
  • 鳥取大学医学部附属病院、山陰労災病院、上尾中央総合病院、総合健診センターヘルチェック 勤務

資格・所属学会

  • 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
  • 日本内科学会 内科認定医
  • 日本医師会認定産業医/認知症サポート医
  • 抗加齢医学会 会員/日本フットケア・足病医学会 会員

糖尿病は初期に自覚症状が乏しく、放置すると合併症につながることがあります。糖尿病専門医として、将来の合併症を見据えながら「今できること」を一人ひとりと一緒に考え、継続して治療を進めます。

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