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かぜのあと、首の前が痛い?亜急性甲状腺炎の症状・検査・治療

☝️ はじめに

「かぜが治ったと思ったのに、首の前が痛い」「熱が続き、動悸もする」「甲状腺のホルモンが高いと言われたけれど、バセドウ病なの?」

このような症状では、甲状腺に炎症が起きる「亜急性甲状腺炎」が見つかることがあります。ウイルス感染後の不調として知られていますが、原因にはまだ分からない点もあります。

今回は、見逃したくない症状、治療の考え方、痛みが治まったあとも必要な確認を解説します。

☝️ 亜急性甲状腺炎とは?

甲状腺は首の前側にあり、体の代謝に関わるホルモンを蓄えています。亜急性甲状腺炎では、炎症によって甲状腺の細胞が傷つき、蓄えていたホルモンが血液中へ漏れ出します。[1,2]

特徴的なのは、首の前側の痛み・腫れ・押したときの痛みです。飲み込むと痛んだり、痛む場所が反対側へ移ったりすることがあります。発熱や倦怠感に加え、ホルモンが多い時期には動悸、汗の増加、手の震えなども起こります。

ただし、かぜのあとに首が痛む原因は甲状腺炎だけではありません。咽頭炎やリンパ節の炎症、まれに細菌による甲状腺の感染などとの区別が必要です。

☝️ ウイルス感染が原因なの?研究から分かること

日本甲状腺学会は、亜急性甲状腺炎とウイルス感染との関連が示唆されること、先行する上気道感染症状を伴うことがあるとしています。[1]

一方、「特定のウイルスが直接甲状腺を傷つける」と、すべての患者さんで証明されているわけではありません。

2025年1月15日オンライン公開の研究は、ドイツの2015〜2022年の亜急性甲状腺炎の入院記録6,856件と、ウイルス感染症の流行データを比較しました。感染症が大きく減った時期にも甲状腺炎の季節的な発生パターンは続き、調べたウイルスの流行と甲状腺炎の発生に、原因を支持する一貫した関係は確認されませんでした。[3]

これは集団のデータを比較する観察研究で、患者さん一人ひとりの感染を調べたものではありません。ウイルスの関与を完全に否定する研究でもなく、「かぜのあとに発症した」ことだけで原因を決めつけない姿勢が大切です。

☝️ どんな検査をする?バセドウ病との違いは?

症状と診察所見に加え、次の検査を組み合わせます。

✅ TSH・FT4・必要に応じてFT3:甲状腺ホルモンの状態
✅ CRP・赤沈など:炎症の程度
✅ 超音波検査:痛む場所に一致する炎症の所見
✅ 必要に応じてTRAbなどの抗体検査:バセドウ病との区別

典型的な急性期にはFT4が高く、TSHが低くなりますが、検査結果は病気の時期によって変わります。一つの数値や抗体だけで判断せず、経過や超音波所見も確認します。[1]

バセドウ病ではホルモンの「産生が増える」のに対し、亜急性甲状腺炎では蓄えていたホルモンが「漏れ出す」のが中心です。そのため、通常、ホルモンの産生を抑える抗甲状腺薬は用いません。[2]

☝️ 治療は、痛み・炎症・動悸に合わせて

軽い痛みには非ステロイド性抗炎症薬などを使い、痛みが強い場合や十分に改善しない場合は、ステロイド薬を検討します。動悸がつらいときには、心拍を抑える薬を使うこともあります。[2]

2023年の中国5施設のランダム化比較試験では、中等度以上の痛み、または抗炎症薬への反応が不十分な患者さんを対象に、プレドニゾロンの開始量15mg/日と30mg/日を比較しました。解析対象は60人で、主要評価項目の治療期間は平均34.6日と41.2日。「低用量で治療期間が7日以上長くならない」という事前の基準を満たしました。[4]

ただし、小規模で、患者さんや医師に投与量が分かる試験です。再燃や副作用まで同等と確立したわけではなく、日本の患者さん全員に同じ量が適するという意味でもありません。

日本ではプレドニゾロンに亜急性甲状腺炎の適応があります。量と減らし方は、痛み・炎症・再燃の有無に合わせて調整します。痛みが消えても自己判断で中止しないでください。[6]

糖尿病の方は、治療中の血糖も確認を

ステロイド薬は血糖を上げることがあり、糖尿病の薬やインスリンの調整が必要になる場合があります。必要な治療を受けながら血糖も管理できるよう、糖尿病の主治医と情報を共有しましょう。[6]

☝️ 痛みが治まったあとも、確認が必要な理由

炎症が落ち着く途中で、甲状腺ホルモンが一時的に不足することがあります。多くは回復しますが、一部では低下が続き、ホルモンを補う治療が必要になります。[1,2]

2026年6月17日オンライン公開のデンマークの研究は、病院で亜急性甲状腺炎と診断された1,763人を対象とする後ろ向きコホート研究です。診断後4年間の処方記録では、459人(26.0%)がホルモン補充薬を開始し、そのうち224人が36か月を超えて治療を続けていました。[5]

「26%が永久にホルモン不足になる」という結果ではありません。処方の継続は、検査で確認した永続的な機能低下と同じではなく、病院へ紹介された患者さんの偏りもあります。日本での割合としてそのまま使えませんが、痛みが消えたあとも経過を確認する大切さを示しています。

☝️ まだ分かっていないこと

どの感染や免疫反応が発症の引き金になるのか、誰が再燃や長期の機能低下を起こすのか、最適なステロイドの量・期間などには不確実性があります。

感染後の倦怠感がすべて甲状腺炎というわけではなく、逆に、感染の記憶がなくても発症することがあります。症状・検査・経過を合わせて判断します。

☝️ 今日からできる3つ

✅ ① 症状の経過をメモする

かぜの時期、首のどこが痛むか、発熱、安静時の動悸を記録し、受診時に伝えましょう。

✅ ② 痛みが続くときは、かぜの長引きと決めつけない

首の前側の痛み・腫れと発熱、動悸が続く場合は内科へ相談してください。強い症状があれば早めの評価が必要です。

✅ ③ 痛みが消えても、再診・採血を続ける

薬の減量時期と次の採血予定を確認しましょう。治療後に寒がり・便秘・むくみ・疲れが出た場合も伝えてください。糖尿病の方は血糖管理の予定も確認しましょう。

☝️ まとめ

かぜのあとに首の前が痛み、発熱や動悸が続く場合、亜急性甲状腺炎が見つかることがあります。原因を決めつけず、血液検査と超音波検査などで確認することが大切です。

治療は病状に合わせて行い、症状が改善したあとも甲状腺の働きを確認します。

初台まちのクリニックでは、一般内科として甲状腺の症状に関するご相談を受け付けています。必要な検査や専門医療機関への紹介を検討し、糖尿病のある方は治療中の血糖についても相談できます。発熱がある場合は、予約時にその旨をお知らせください。

初台まちのクリニック
初台駅南口から徒歩1分

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【参考文献・参考資料】

  1. 日本甲状腺学会. 甲状腺疾患診断ガイドライン2024:亜急性甲状腺炎(急性期). 2024年11月21日改定。
  2. American Thyroid Association. Thyroiditis.
  3. Orth HM, Killer A, Gliga S, et al. Subacute Thyroiditis—Is it Really Linked to Viral Infection? J Clin Endocrinol Metab. 2025;110(10):2938–2945. DOI: 10.1210/clinem/dgaf023. PMID: 39812071. オンライン公開:2025年1月15日。
  4. Zeng J, Jia A, Zhang J, et al. Comparison of the therapeutic effects of 15 mg and 30 mg initial daily prednisolone doses in patients with subacute thyroiditis: a multicenter, randomized, open-label, parallel-controlled trial. Ann Med. 2023;55(2):2288941. DOI: 10.1080/07853890.2023.2288941. PMID: 38048390. オンライン公開:2023年12月4日。
  5. Thomsen MJ, Bruun NH, Torp NMU, et al. Subacute Thyroiditis in Denmark: A Nationwide Study of 1763 Cases. Clin Endocrinol (Oxf). 2026;105(5):573–581. DOI: 10.1111/cen.70173. PMID: 42310494. オンライン公開:2026年6月17日(11月号の巻・頁が割り当て済み)。
  6. PMDA. プレドニゾロン錠5mg「ミタ」電子添文. 2026年3月改訂。

※本記事は2026年10月15日時点の情報に基づく一般的な解説です。個別の診断・治療に代わるものではありません。首の腫れが急に増す、息苦しい、唾液も飲み込めない、胸痛や意識の異常を伴う場合は、通常の予約を待たず救急受診を検討してください。

院長 富田恭子

この記事の監修

富田 恭子初台まちのクリニック 院長/日本糖尿病学会 糖尿病専門医

経歴

  • 2008年 福岡大学医学部医学科 卒業
  • 鳥取大学医学部附属病院、山陰労災病院、上尾中央総合病院、総合健診センターヘルチェック 勤務

資格・所属学会

  • 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
  • 日本内科学会 内科認定医
  • 日本医師会認定産業医/認知症サポート医
  • 抗加齢医学会 会員/日本フットケア・足病医学会 会員

糖尿病は初期に自覚症状が乏しく、放置すると合併症につながることがあります。糖尿病専門医として、将来の合併症を見据えながら「今できること」を一人ひとりと一緒に考え、継続して治療を進めます。

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