☝️ はじめに

「糖尿病になったらジュースは全部ダメ?」
「ゼロカロリー飲料なら毎日飲んでもいい?」
「無糖のカフェラテなら血糖値は上がらない?」
糖尿病の患者さんから、飲み物についてこのような質問をよくいただきます。
飲み物は食事に比べて糖質を摂っている感覚が少ない一方、砂糖を多く含む飲料では、短時間に多くの糖質を摂取してしまうことがあります。
一方、「ゼロ」「糖類ゼロ」「低糖質」などと表示された飲料については、
「人工甘味料は体に悪いのでは?」
「糖尿病ならゼロ飲料を選んでおけば大丈夫?」
と迷う方も多いでしょう。
今回は、2026年の米国糖尿病学会(ADA)の推奨やこれまでの研究をもとに、糖尿病の方の飲み物選びを分かりやすく整理します。
☝️ 結論:普段の水分補給は「水・無糖飲料」が基本
最初に結論からお伝えすると、普段の水分補給として基本にしたいのは、
・水
・無糖の炭酸水
・麦茶
・緑茶
・ほうじ茶
・烏龍茶
・砂糖を入れない紅茶
などです。
2026年の米国糖尿病学会(ADA)のガイドラインでも、糖尿病の方や糖尿病リスクのある方には、他の飲料より水を選ぶことが推奨されています。
水には糖質もカロリーもなく、血糖値を上げません。
「糖尿病に良い特別な飲み物」を探すより、まず普段の飲み物を水や無糖のお茶にすることが、最もシンプルで実践しやすい対策です。
☝️ 砂糖入り飲料はなぜ注意が必要?
注意したいのは、
・砂糖入りの清涼飲料水
・ジュース
・加糖されたコーヒーや紅茶
・エナジードリンク
・スポーツドリンク
・甘いカフェドリンク
などです。
液体の糖質は短時間に摂取しやすく、500mLのペットボトル1本だけでかなりの量の糖質を含む商品もあります。
また、飲み物は固形物に比べて満腹感を得にくいため、飲料から摂ったエネルギーを食事で自然に減らすことも難しい場合があります。
毎日甘い飲み物を飲む習慣がある方では、まずその飲み物を見直すことが血糖管理の大切な第一歩になります。
☝️ 「ゼロカロリー飲料」はどう考える?
「ゼロカロリー」「糖質ゼロ」などの飲料では、砂糖の代わりに、
・アスパルテーム
・スクラロース
・アセスルファムK
・ステビア由来甘味料
などの非栄養性甘味料が使われることがあります。
これらは砂糖と比較して非常に少ない量で甘みを感じるため、通常の使用量では糖質やエネルギーをほとんど増やさずに甘さをつけることができます。
そのため、
普通の砂糖入りコーラ
↓
ゼロカロリーコーラ
のように置き換えれば、その飲み物から摂取する糖質やカロリーを大きく減らすことができます。
2026年のADAも、砂糖入りの食品や飲料を普段摂っている糖尿病患者さんでは、非栄養性甘味料を使用した食品・飲料を、適量かつ短期間の置き換えとして利用できるとしています。
☝️ ただし「ゼロ飲料=健康飲料」ではありません
ここは大切です。
ゼロカロリー飲料は、
「砂糖入り飲料より血糖値を上げにくい」
という点では便利な選択肢です。
しかし、
「飲めば健康になる」
「水の代わりにいくらでも飲んでよい」
という意味ではありません。
長期的な健康への影響については、現在も研究が続いています。
フランスで10万人以上を追跡したNutriNet-Santé研究では、人工甘味料の摂取量が多い人ほど心血管疾患が多いという関連が報告されました。
一方、この研究は観察研究です。
つまり、
「人工甘味料を摂取したから心血管疾患になった」
と証明したものではありません。
もともと肥満や糖尿病リスクが高い方ほど、砂糖を避けるためにゼロ飲料を選んでいた可能性などもあります。
そのため、人工甘味料を必要以上に怖がる必要はありませんが、水や無糖のお茶の代わりに大量に飲む必要もありません。
☝️ WHOが「人工甘味料を推奨しない」としたのは?
2023年、WHOは非糖質甘味料について、
「体重管理や生活習慣病予防を目的として、長期的に使用することを推奨しない」
というガイドラインを発表しました。
これを見て、
「人工甘味料は危険なの?」
と思った方もいるかもしれません。
しかし、このWHOの推奨は、
「人工甘味料に毒性がある」
という意味ではありません。
また、この推奨はすでに糖尿病と診断されている方を対象としたものではありません。
WHOが伝えているのは、
「砂糖を人工甘味料に置き換えるだけで、長期的に肥満や生活習慣病を予防できるとはいえない」
ということです。
糖尿病患者さんの実際の飲み物選びでは、
水・無糖飲料を基本にする
↓
砂糖入り飲料を頻繁に飲んでいる方では、ゼロ・低カロリー飲料へ置き換える
↓
最終的には甘い飲み物そのものの頻度を減らしていく
という考え方が現実的です。
☝️ 「人工」か「天然」かで選ばなくても大丈夫
「人工甘味料は心配だけれど、天然のステビアなら安全」
と考える方もいます。
しかし、
人工由来=悪い
天然由来=安全
という分け方は適切ではありません。
ステビアも非糖質甘味料の一つです。
大切なのは由来ではなく、
・何を置き換えるために使っているか
・どのくらい摂取しているか
・普段の食生活全体がどうなっているか
です。
☝️ 「糖質ゼロ」と「糖類ゼロ」は同じ?
パッケージを見ると、
「糖質ゼロ」
「糖類ゼロ」
という似た言葉があります。
実は意味が異なります。
「糖類」は、ブドウ糖・果糖・砂糖などの単糖類・二糖類を指します。
一方、「糖質」は糖類を含む、より広い分類です。
そのため、
「糖類ゼロ」=「糖質が完全にゼロ」
とは限りません。
また、日本の食品表示では、飲料100mLあたり0.5g未満であれば「ゼロ」と表示できる場合があります。
商品を選ぶときは、パッケージの大きな文字だけでなく、
・炭水化物
・糖質
・糖類
・1本あたりの容量
も確認しましょう。
100mLあたりの量が少なくても、500mL飲めば5倍になります。
☝️ 果汁100%ジュースなら健康的?
「普通のジュースはダメでも、果汁100%なら体に良いのでは?」
と思う方もいます。
果物そのものは、食物繊維やビタミン、ミネラルなどを含む食品です。
一方、ジュースにすると食物繊維が少なくなり、短時間で多くの糖質を摂取しやすくなります。
2026年のADAでも、砂糖入り飲料だけでなくジュースを、水または低・無カロリー飲料へ置き換えることが勧められています。
糖尿病の方では、
「果物を食べること」
と、
「果汁を飲むこと」
は分けて考えましょう。
普段の水分補給として果汁100%ジュースを水やお茶の代わりに飲むことはおすすめしません。
☝️ スポーツドリンクにも注意
「スポーツドリンクだから体に良い」
と思われがちですが、一般的なスポーツドリンクには糖質が含まれています。
運動をしていない日常生活で、水やお茶の代わりに何本も飲むと、思った以上の糖質摂取になることがあります。
一方で、高温環境での長時間運動や大量発汗などでは、糖質や電解質を含む飲料が必要になる場合もあります。
用途によって使い分けましょう。
☝️ コーヒー・紅茶はどう選ぶ?
✅ ブラックコーヒー・無糖の紅茶
砂糖を加えなければ、糖質はほとんどありません。
普段の飲み物として選択できます。
ただし、カフェインの摂りすぎや睡眠への影響には注意しましょう。
✅ 無糖のカフェラテ・カフェオレ
ここで注意したいのが、
「無糖=糖質ゼロ」
ではないことです。
砂糖が加えられていなくても、牛乳には乳糖という糖質が含まれています。
大きなサイズのカフェラテでは、牛乳由来の糖質もそれなりの量になります。
また、
「低脂肪乳なら糖質も少ない」
とは限りません。
血糖値が気になる方は、サイズと栄養成分表示を確認しましょう。
☝️ トクホ飲料なら好きなだけ飲んでいい?
「食後の血糖値の上昇を穏やかにする」と表示された特定保健用食品(トクホ)もあります。
難消化性デキストリンなどを含み、食後血糖値の上昇を穏やかにする作用が確認された商品もあります。
ただし、
「トクホを飲めば糖尿病が治る」
「食事を気にしなくても大丈夫」
というものではありません。
商品によって成分や糖質量も異なるため、トクホのマークだけでなく栄養成分表示も確認しましょう。
☝️ コンビニで迷ったら、この順番で
糖尿病の方がコンビニで飲み物を選ぶなら、次の順番で考えると分かりやすいでしょう。
◎ 普段の水分補給に
・水
・無糖炭酸水
・麦茶
・緑茶
・ほうじ茶
・烏龍茶
・無糖紅茶
○ 量を確認して
・ブラックコーヒー
・無糖カフェラテ
・無糖カフェオレ
※ラテ・カフェオレは牛乳由来の糖質があります。
△ 砂糖入り飲料からの置き換えに
・ゼロカロリー清涼飲料
・低カロリー甘味飲料
毎日砂糖入りジュースを飲んでいる方が置き換えるのであれば、糖質・カロリーを減らす助けになります。
ただし、水や無糖飲料の代わりに積極的に大量摂取する必要はありません。
▲ 頻度・量に注意
・砂糖入りジュース
・清涼飲料水
・果汁飲料
・スポーツドリンク
・加糖コーヒー
・甘いカフェドリンク
☝️ 「ゼロか、砂糖入りか」の二択ではありません
糖尿病の飲み物選びで大切なのは、
「人工甘味料は危険だから絶対ダメ」
でも、
「ゼロなら何本飲んでも大丈夫」
でもありません。
まずは水・無糖のお茶を基本にすること。
砂糖入り飲料を習慣的に飲んでいる方では、ゼロ・低カロリー飲料を上手に利用して糖質を減らし、徐々に甘い飲み物そのものの頻度を減らしていく方法もあります。
「毎日コーラを飲んでいる」
「カフェラテはどのくらいなら大丈夫?」
「いつも飲んでいる商品を見てほしい」
という方は、普段飲んでいる商品の写真や栄養成分表示を診察時に見せていただいても構いません。
初台まちのクリニックでは、糖尿病専門医と管理栄養士が、血糖値や生活スタイルに合わせて食事や飲み物について一緒に考えていきます。
初台まちのクリニック
初台駅南口から徒歩1分
☝️ 参考文献・参考資料
・American Diabetes Association Professional Practice Committee. Facilitating Positive Health Behaviors and Well-being to Improve Health Outcomes: Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1).
・Debras C, et al. Artificial sweeteners and risk of cardiovascular diseases: results from the prospective NutriNet-Santé cohort. BMJ. 2022;378:e071204. DOI: 10.1136/bmj-2022-071204.
・Fagherazzi G, et al. Consumption of artificially and sugar-sweetened beverages and incident type 2 diabetes in the E3N-EPIC cohort. Am J Clin Nutr. 2013;97:517-523. DOI: 10.3945/ajcn.112.050997.
・World Health Organization. Use of non-sugar sweeteners: WHO guideline. 2023.
※本記事は一般的な医学・栄養情報を提供するものです。糖尿病治療の内容、腎機能、心疾患などによって適切な飲料や水分量が異なる場合があります。