☝️ はじめに


健康診断で、
「尿酸値が高いですね」
と言われたことはありませんか?
尿酸値が高いと聞くと、多くの方がまず思い浮かべるのが「痛風」だと思います。
足の親指などの関節が突然赤く腫れ、非常に強い痛みを起こす痛風発作は、高尿酸血症の代表的な合併症です。
一方で近年、
「尿酸値が高い人では心臓病や腎臓病も多い」
という研究結果が多数報告されています。
では、
「尿酸値が高い=心臓や腎臓が傷つく」
ということなのでしょうか?
実は、ここには少し注意が必要です。
今回は、高尿酸血症について、
・確実に分かっていること
・関連はあるけれど、まだ分かっていないこと
・どのくらいの尿酸値から注意すべきか
・生活習慣で何を見直せばよいのか
を、研究とガイドラインをもとに分かりやすく解説します。
☝️ そもそも「高尿酸血症」とは?
尿酸は、体内の「プリン体」が分解されることで作られる物質です。
作られた尿酸の多くは腎臓から尿中へ排泄されます。
しかし、
・尿酸が作られすぎる
・腎臓から十分に排泄できない
・その両方がある
と、血液中の尿酸値が高くなります。
日本では、
血清尿酸値が7.0mg/dLを超える状態
を「高尿酸血症」と定義します。
これは男性・女性で共通です。
なお、高尿酸血症があっても、多くの方には自覚症状がありません。
そのため、健康診断の採血で初めて気づくことも珍しくありません。
☝️ 尿酸値が高いと「痛風」のリスクが上がります
高尿酸血症について最も確実に分かっていることの一つが、痛風との関係です。
尿酸値が高い状態が続くと、尿酸が「尿酸塩結晶」として関節などに蓄積することがあります。
この結晶に対して強い炎症が起こるのが痛風発作です。
典型的には、
・足の親指の付け根
・足首
・膝
などが突然赤く腫れ、非常に強い痛みを生じます。
尿酸値が高くなるほど、将来的に痛風を発症するリスクも高くなります。
つまり、
「痛風発作がないから、尿酸値が高くても問題ない」
とは言えません。
☝️ 尿路結石にも注意
高尿酸血症は、痛風だけでなく尿路結石とも関係します。
尿中の尿酸が多くなるなど一定の条件が重なると、尿酸を含む結石ができやすくなります。
尿路結石では、
・突然の強い腰背部痛
・血尿
・吐き気
などが起こることがあります。
痛風や尿路結石は、高尿酸血症との関係が比較的明確に確立している病気です。
☝️ 心臓病や腎臓病とも関係する?
ここからが少し難しいところです。
高尿酸血症のある方では、
・高血圧
・慢性腎臓病(CKD)
・冠動脈疾患
・心不全
・糖尿病
・メタボリックシンドローム
などが多いことが、さまざまな観察研究で報告されています。
例えば、約96万人を含む29件の前向き研究を統合したメタ解析では、高尿酸血症のある人は、ない人と比べて冠動脈疾患の発症や死亡が多いという関連が認められました。
しかし、ここでとても大切なのが、
「関連がある」ことと「尿酸が原因である」ことは同じではない
という点です。
☝️ 「尿酸が高いから心臓病になる」とはまだ言い切れません
尿酸値が高い方では、
・肥満
・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・腎機能低下
・飲酒量が多い
など、心血管疾患のリスクとなる要因を同時に持っていることが少なくありません。
そのため、
「尿酸そのものが心臓病や腎臓病を引き起こしているのか」
「同じ背景にある生活習慣や代謝異常の影響なのか」
を完全に分けることは簡単ではありません。
実際、尿酸値を薬で下げることで心筋梗塞・脳卒中・腎機能低下などを確実に予防できるかについては、研究結果が一致していません。
特にCKDについて、KDIGO 2024ガイドラインでは、
「無症候性高尿酸血症に対し、CKDの進行を遅らせることだけを目的として尿酸降下薬を使用することは勧めない」
としています。
したがって、
「尿酸値が高いから心臓や腎臓が必ず傷つく」
「尿酸値を薬で下げれば心筋梗塞や腎不全を防げる」
と断定するのは、現在のエビデンスでは適切ではありません。
☝️ では、症状のない高尿酸血症は放置していい?
これも「放置してよい」という意味ではありません。
日本では、尿酸値が7.0mg/dLを超えれば高尿酸血症です。
まず大切なのは、
・尿酸値がどのくらい高いか
・一時的な上昇ではないか
・腎機能はどうか
・尿路結石がないか
・高血圧や糖尿病などを合併していないか
・飲酒や食生活、体重などに改善できる点がないか
を確認することです。
症状がなくても、繰り返し尿酸値が高い場合には、一度きちんと評価しておくことをおすすめします。
☝️ 薬を始める尿酸値の目安は?
日本の「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」では、痛風発作がない無症候性高尿酸血症の場合でも、
・尿酸値9.0mg/dL以上
・尿酸値8.0mg/dL以上で、腎障害・尿路結石・高血圧などの合併症がある場合
には、生活習慣の改善に加えて薬物療法を検討する考え方が示されています。
ただし、
「8.0になったら全員薬」
「9.0になったら必ず薬」
という単純なものではありません。
年齢、腎機能、合併症、尿酸値の推移、痛風歴などを確認して、一人ひとり判断します。
また、薬物療法を行う理由も、
「尿酸を下げれば心筋梗塞を必ず防げるから」
というものではありません。
痛風や尿路結石など高尿酸血症そのものによる合併症のリスクも含め、総合的に考えます。
☝️ 尿酸値を下げるために、まず見直したいこと
薬を使う場合でも、使わない場合でも、生活習慣の見直しは重要です。
✅ ① 体重を見直す
肥満、特に内臓脂肪の蓄積は高尿酸血症と深く関連しています。
体重が多い方では、極端なダイエットではなく、無理なく体重を減らすことで尿酸値の改善が期待できます。
一方、急激な減量や極端な糖質制限・絶食などでは、一時的に尿酸値が上昇する場合もあります。
継続できる方法で減量しましょう。
✅ ② アルコールを控える
「プリン体が多いからビールだけ避ければいい」
というわけではありません。
アルコールそのものが尿酸の産生や排泄に影響するため、
・ビール
・日本酒
・焼酎
・ワイン
など、種類にかかわらず飲みすぎには注意が必要です。
「プリン体ゼロのお酒だから尿酸値には関係ない」とは限りません。
✅ ③ 甘いジュース・清涼飲料を減らす
果糖(フルクトース)を多く摂取すると、尿酸が作られやすくなります。
特に、
・清涼飲料水
・砂糖入りのジュース
・エナジードリンク
・甘い飲み物
などを頻繁に飲む方は見直してみましょう。
水や無糖のお茶などへの置き換えがおすすめです。
ただし、
「プリン体より果糖のほうが悪い」
という単純な比較ではありません。
どちらも食生活全体の中で考えることが大切です。
✅ ④ 肉・魚介類は「完全禁止」ではなく量を意識
肉類や一部の魚介類にはプリン体が多く含まれています。
ただし、
「肉や魚を全部食べてはいけない」
というわけではありません。
たんぱく質は体に必要な栄養素です。
特定の食品を完全に禁止するよりも、過剰摂取を避け、野菜などを含めて食事全体のバランスを整えることが大切です。
また、植物性食品に含まれるプリン体を、動物性食品と同じように一律に避ける必要性は高くありません。
✅ ⑤ 乳製品は健康的な食生活の選択肢に
観察研究では、乳製品を摂取している人では高尿酸血症や痛風が少ないという関連が報告されています。
無糖のヨーグルトや牛乳などは、食生活全体のバランスを考えながら取り入れてよいでしょう。
ただし、
「ヨーグルトを食べれば尿酸値が治る」
という意味ではありません。
✅ ⑥ 脱水を避ける
脱水は尿酸値の上昇や痛風発作のきっかけになることがあります。
特に、
・暑い日
・運動時
・飲酒時
などは水分不足に注意しましょう。
ただし「全員1日2リットル」といった一律の目標はおすすめしません。
心不全や腎臓病などで水分制限が必要な方もいるため、適切な水分量は体の状態によって異なります。
✅ ⑦ 適度な運動を続ける
ウォーキングなどの有酸素運動を継続することは、体重管理や生活習慣病の改善に役立ちます。
一方、激しい運動を突然行ったり、運動中に脱水になったりすると、一時的に尿酸値が上がることがあります。
「無理なく続ける」ことがポイントです。
☝️ 尿酸値だけを見るのではなく「生活習慣病全体」を見る
高尿酸血症の診療で重要なのは、
「尿酸値だけを6.0にすれば終わり」
という考え方ではありません。
高尿酸血症の方では、
・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・肥満
・脂肪肝
・慢性腎臓病
などを合併していることがあります。
むしろ、こうした病気を一緒に見つけて適切に治療することが、将来の心血管疾患や腎疾患を予防するうえで非常に重要です。
健康診断で尿酸値が高かった場合には、
「痛風になっていないから大丈夫」
ではなく、血圧や血糖、コレステロール、腎機能なども一緒に確認してみましょう。
☝️ まとめ
高尿酸血症について、現在分かっていることをまとめます。
✅ 日本では尿酸値7.0mg/dL超を高尿酸血症と定義します
✅ 高尿酸血症が続くと、痛風や尿路結石のリスクが高まります
✅ 心血管疾患や慢性腎臓病との関連も多数報告されています
✅ ただし「尿酸そのものが原因」とはまだ確立していません
✅ 尿酸値を下げるだけで心筋梗塞や腎機能低下を防げるとも言い切れません
✅ 無症状でも繰り返し高値の場合は、合併症や生活習慣を含めて評価することが大切です
✅ 体重、飲酒、甘い飲み物、食事、運動などの見直しが基本です
「健康診断で尿酸値が高かった」
「8〜9mg/dLあるけれど薬は必要?」
「痛風はないから放置している」
「腎機能や血圧も気になる」
という方は、お気軽にご相談ください。
尿酸値だけでなく、血圧・血糖・脂質・腎機能なども確認しながら、一人ひとりに合った対応を考えていきます。
初台まちのクリニック
初台駅南口から徒歩1分
☝️ 参考文献・参考資料
・Japanese Society of Gout and Uric & Nucleic Acids. Guidelines for Management of Hyperuricemia and Gout, 3rd edition. Gout Uric Nucleic Acids. 2020;44(Suppl):sp-1-sp-40. DOI: 10.14867/gnamtsunyo.44.Supplement_sp-1
・Li M, et al. Hyperuricemia and the risk for coronary heart disease morbidity and mortality: a systematic review and dose-response meta-analysis. Sci Rep. 2016;6:19520. DOI: 10.1038/srep19520.
・Li R, et al. Dietary factors and risk of gout and hyperuricemia: a meta-analysis and systematic review. Asia Pac J Clin Nutr. 2018;27:1344-1356. DOI: 10.6133/apjcn.201811_27(6).0022.
・KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease.
※本記事は医学情報の提供を目的としています。治療の必要性は尿酸値だけでなく、痛風歴、尿路結石、腎機能、合併症などによって異なります。自己判断で治療薬を開始・中止せず、医師にご相談ください。