アボカドは「野菜」ではなく、脂の多い果物です
サラダに入っていることが多いので野菜の仲間だと思われがちですが、アボカドはクスノキ科の植物の果実です。ほかの果物と大きく違うのは、甘み(糖質)が少なく、代わりに脂質が多いところ。「森のバター」と呼ばれるのはそのためです。
つまりアボカドは、果物として食べるというより、食事に脂を足す食品として考えると扱いやすくなります。ここを押さえておくと、このあとの「どれくらい食べるか」の判断がしやすくなります。栄養素の種類は、文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」に収載された内容をもとにしています。
アボカドに多い栄養素と、体の中での働き

| 栄養素 | アボカドでの特徴 | 体の中での主な働き |
|---|---|---|
| 脂質(一価不飽和脂肪酸・オレイン酸が中心) | 含まれる脂質の多くを占める | エネルギー源。飽和脂肪酸の代わりにとる脂として位置づけられる |
| 食物繊維 | 果実としては多く含まれ、不溶性・水溶性の両方を含む | 便のかさを増やす、糖や脂質の吸収のしかたに関わる |
| カリウム | 果実の中では多いほうに入る | ナトリウム(塩分)の排泄に関わる |
| ビタミンE | 脂に溶けるビタミンとして含まれる | 体内の脂質の酸化に関わる |
| 葉酸・ビタミンB群 | 果実としては含有量が目立つ | 赤血球や細胞をつくる過程に関わる |
| ビタミンK | 緑色の果肉に含まれる | 血を固める働きに関わる |
「どの栄養素が入っているか」だけを見ると万能に見えますが、食品は一つで体が変わるものではありません。アボカドの価値は、ふだんの食事の中で何と入れ替えるかで決まります。
注目されやすい「脂質の質」とは何のことか
脂質にはいくつか種類があり、肉の脂身やバターに多い飽和脂肪酸と、植物油や魚に多い不飽和脂肪酸に大きく分かれます。アボカドの脂質は、オリーブオイルと同じ一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)が中心です。
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、飽和脂肪酸の摂取を控え、不飽和脂肪酸に置き換える食べ方が勧められています。アボカドが話題になるのは、この「置き換えられる脂」として使いやすいからです。
ただし、脂質そのもののエネルギーは高いままです。今の食事に足すのではなく、入れ替えるという使い方が前提になります。たとえばマヨネーズやドレッシングの代わりにつぶしたアボカドを和え衣に使う、といった形です。これで脂の種類は変わりますが、入れ替えずに追加すれば総量は増えます。
血糖が気になる方にとってのアボカド
アボカドは糖質が少ない食品なので、果物の中では血糖値への影響が小さい部類に入ります。食後の血糖は糖質の量に強く影響されるため、甘い果物の代わりに食べれば、食後の上がり方はおだやかになりやすいと考えられます(体質や食べ合わせによって反応には個人差があります)。
食物繊維については、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」でも、食物繊維を多く含む食品をとることが勧められています。アボカドは果実の中では食物繊維を多く含むほうですが、これ一つで必要量をまかなうものではなく、野菜・海藻・豆・未精製の穀物と合わせて考えるものです。
同じ「置き換え」の発想は、ほかの食材にも応用できます。間食の中身を見直したい方はくるみの効果が気になる方へ|素焼きと味付きの違いと食べる量、主菜のかさ増しを考えたい方は高野豆腐の栄養|血糖が気になる方の戻し方と味つけもあわせてご覧ください。いずれも当院のコラムです。
どれくらい食べるか、を決める考え方
「一日にどれだけ食べればいいですか」とよく聞かれますが、適量は体格・活動量・ほかに何を食べているかで変わるため、一律の数字はお出ししていません。代わりに、次の順番で考えてみてください。
1. その日の食事で、ほかに脂をとっているかを見る
揚げ物、炒め物、肉の脂身、ドレッシング、ナッツ、チーズ。これらが多い日は、アボカドを足すと脂が重なります。
2. 「足す」か「置き換える」かを決める
マヨネーズ・ドレッシング・バターの代わりに使えるなら置き換えです。ごはんや主菜はそのままでアボカドだけ増えるなら、それは追加になります。
3. 体重の動きで確認する
食品単位で細かく計算しなくても、同じ条件で体重をはかり続ければ、全体として増えているか減っているかは見えてきます。体重が上向きに変わってきたら、量ではなく組み合わせのほうを見直す合図です。
選び方と熟し具合の見分け方

アボカドは追熟する果実で、店頭に並ぶ時点では熟していないものも多くあります。切ってみたら固かった、黒ずんでいた、という失敗は見分け方である程度避けられます。
| 見るところ | まだ早い | 食べごろ | 熟しすぎ |
|---|---|---|---|
| 皮の色 | 明るい緑 | 濃い緑〜黒に近い色 | 黒く、つやが落ちている |
| 手で持った感じ | 硬く、へこまない | 手のひら全体で包むと弾力がある | 指が沈む、ぶよぶよする |
| ヘタの周り | ぴったりついている | わずかに浮く/取れるとくぼみが緑色 | すき間が大きい、黒ずんでいる |
| 形 | — | 傷やへこみがなく張りがある | 部分的にくぼみがある |
追熟のしかた
硬いものは、常温(直射日光の当たらない場所)に置くと追熟が進みます。紙袋に入れたり、りんごやバナナと一緒に入れたりすると、これらが出すエチレンの作用で進み方が早まります。食べごろになったら冷蔵庫に移すと、そこから先の進行はゆるやかになります。
切ったあとの変色
切り口が茶色くなるのは、果肉の成分が空気に触れて酸化するためです。レモン汁をかける、種をつけたまま保存する、ラップを果肉に密着させるといった方法は、空気に触れる面を減らす工夫です。変色自体は傷みとは別のもので、においや強い苦みがある場合は食べないでください。
食べるときに気をつけたいこと
- 腎臓の働きが落ちている方:カリウムの制限を受けている場合、アボカドはカリウムが多めの食品にあたります。主治医や管理栄養士の指示を優先してください。
- ワルファリンを飲んでいる方:アボカドにはビタミンKが含まれます。量が急に変わらないよう、主治医に確認しておくと判断しやすくなります。
- ラテックスアレルギーのある方:天然ゴムにアレルギーがある方は、アボカドやバナナ、キウイなどで口の中のかゆみやしびれが出ることがあります(ラテックス・フルーツ症候群)。
- 体重を管理している方:脂質が多いため、置き換えずに量が増えるとエネルギーも増えます。
検査の数値が気になってきたときは
健診で血糖やコレステロール、中性脂肪を指摘されて食事を見直している方は多いと思います。食べ物の工夫は続ける価値がありますが、数値が改善しないまま時間が過ぎていくとき、だるさや体重の変化が重なってきたとき、指摘された項目が年々悪くなっているときは、食事だけで判断せず一度検査を受けてください。
当院では、血糖値とHbA1cを院内のグリコヘモグロビン分析装置で測定し、その日のうちに結果をお伝えしています。あわせて管理栄養士が在籍しており、栄養相談(完全予約制)も行っています。「アボカドは食べていいですか」のような具体的な食品の相談も、ふだんの食事全体を見ながらお話しできます。ご希望の方は受付スタッフへお申し出ください。栄養相談の進み方は糖尿病の栄養指導の内容|初めて受ける日の流れと持ち物にまとめています。
当院は京王新線「初台駅」南口から徒歩1分で、土曜日も9:00から14:00まで診療しています(受付終了は診療終了と同じ時刻です)。平日に時間を取りにくい方もご相談ください。