「このごろ疲れやすい」と血糖は、どうつながるのか
朝起きても体が重い、午後になると急に動けなくなる、以前と同じ仕事量なのにぐったりする。こうした疲れやすさは、寝不足や年齢のせいとして見過ごされがちです。ただ、糖尿病の初期にも「疲れやすい」という形で体の変化が出てくることがあります。
食べたものに含まれる糖は、インスリンのはたらきで細胞に取り込まれ、エネルギーとして使われます。インスリンの出が足りなかったり、効きが悪くなったりすると、血液のなかに糖がたまっている一方で、筋肉や脳の側はエネルギーを受け取りにくい状態になります。「食べているのに力が出ない」という感覚が生まれるのは、この仕組みによるものです。
当院の院長は糖尿病を専門に診ていますが、糖尿病は初期に痛みなどのはっきりした症状が出にくい病気です。だからこそ、疲れやすさのような言葉にしにくい変化が、最初の手がかりになることがあります。
血糖が高い状態が続くときに起こりやすいこと
血糖が高い状態が続くと、余分な糖を尿として出そうとして尿の量が増えます。尿が増えれば体の水分が減り、のどが渇きます。脱水気味になると、それ自体が倦怠感やだるさにつながります。夜に何度もトイレで目が覚めれば、眠りも細切れになります。疲れやすさの裏に、こうした連鎖が隠れていることがあります。
食後の眠気・だるさという形で出ることもあります
食後に強い眠気が出る、夕方に手が震えるほど力が抜ける、といった訴えもよく聞きます。食事のあとに血糖が大きく上がり、そのあと下がるときの振れ幅が大きいと、だるさや集中力の低下として感じられることがあります(感じ方には個人差があり、同じ食事でも人によって反応は異なります)。
すでに治療中の方は「低血糖」も考えます
糖尿病の治療を受けている方の疲れやすさは、血糖が高いときだけでなく、低いときにも起こります。冷や汗、動悸、手のふるえ、急な空腹感、頭がぼんやりする、といった症状が食前や運動後に出るなら、低血糖の可能性を一度考えてみてください。自己判断で薬を調整せず、どの時間帯にどんな症状が出たかを記録して、処方を受けている医療機関に伝えることが大切です。
疲れやすい=糖尿病、とは限りません

「疲れやすい」は非常に多くの病気や状態に共通する症状です。糖尿病だけを疑って他を見落とすのは、かえって回り道になります。診察では、次のような可能性を並べて考えていきます。
| 考えられること | 疲れやすさ以外に出やすい変化 | 確認に使う主な検査 |
|---|---|---|
| 糖尿病・高血糖 | のどの渇き、尿の量や回数の増加、体重が減る、傷が治りにくい | 血糖値、HbA1c、尿糖 |
| 貧血 | 動悸、息切れ、立ちくらみ、顔色が悪い | 血算(赤血球・ヘモグロビン) |
| 甲状腺の病気 | むくみ、寒がり/汗が多い、体重の増減、脈が遅い/速い | 甲状腺ホルモン、TSH |
| 腎臓のはたらきの低下 | むくみ、尿の泡立ち、夜間の尿 | 血液の腎機能項目、尿たんぱく |
| 感染症・炎症 | 発熱、のどの痛み、関節痛 | 血算、CRP |
| 睡眠不足・ストレス・気分の落ち込み | 寝つきが悪い、早朝に目が覚める、興味がわかない | 問診を中心に評価 |
| 服用中の薬の影響 | 薬を変えた時期と症状の始まりが重なる | お薬手帳の確認 |
甲状腺の病気は、疲れやすさや体重の変化で見つかることがあり、糖尿病と紛らわしい場面があります。この点は疲れやすい・体重が変わるのは甲状腺のせい?コレステロールとの関係と検査の考え方で詳しく書いています。炎症の数値が気になる方はCRP検査で数値が高いと言われたら、結果の見方と受診の目安もあわせてご覧ください。いずれも当院のコラムです。
家で確かめておきたい、体の変化

受診の前に、疲れやすさ以外の変化が起きていないかを振り返っておくと、診察での話が具体的になります。次の項目を思い出してみてください。
- のどが渇いて、水やお茶を飲む量が以前より増えた
- トイレの回数や尿の量が増えた。夜中にトイレで起きるようになった
- 食事量を減らしていないのに体重が落ちてきた
- 小さな傷やできものが治りにくい、化膿しやすい
- 足の裏がしびれる、ジンジンする、感覚が鈍い
- 目のかすみが前より強い
- 皮膚がかゆい、とくに乾燥していないのにかゆい
あてはまる項目があれば、いつごろから始まったかをメモしておきましょう。健診結果やお薬手帳が手元にあれば、それも一緒にまとめておくと役に立ちます。
受診を考えたい場面
疲れやすさは誰にでも起こるもので、休めば戻ることもたくさんあります。そのうえで、次のような状況では一度調べておくことをおすすめします。
- 十分に眠って休んでも、疲れやすさが変わらない、あるいは少しずつ強くなっていく
- 疲れやすさに加えて、のどの渇きと尿の増加がそろっている
- 意図していないのに体重が減ってきた
- 健診で血糖値やHbA1cを指摘されたまま、受診していない
- 家族に糖尿病の方がいて、同じような症状が出てきた
一方で、強い吐き気や嘔吐をともなう、呼吸が速く意識がぼんやりする、といった場合は様子を見るべき状況ではありません。急いで医療機関を受診するか、救急要請を検討してください。夜間に迷ったときの考え方は内科の夜間診療を探す夜に|救急外来との違いと持ち物にまとめています。
受診すると、何を調べるのか
問診で症状の始まりや生活の様子をうかがったうえで、血液検査と尿検査を行うのが基本です。糖尿病については、日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』に示された診断の手順にそって判断します。同ガイドラインでは、空腹時血糖値126mg/dL以上、随時血糖値200mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値200mg/dL以上のいずれかを「糖尿病型」とし、HbA1c 6.5%以上とあわせて診断する流れが示されています。1回の採血だけで決まるわけではなく、別の日の結果や症状の有無と組み合わせて評価します。
疲れやすさが主訴のときは、糖尿病の項目だけでなく、貧血の有無、腎臓や肝臓の状態、炎症の程度、必要に応じて甲状腺のホルモンもあわせて確認します。原因が1つとは限らず、たとえば軽い貧血と血糖の高さが重なっていることもあるためです。
当院では、血糖値とHbA1cの迅速検査を行っています。院内にグリコヘモグロビン分析装置、自動血球計数CRP測定装置、小型尿分析装置、電極式電解質分析装置、血圧脈波検査装置・心電図があり、院内で測定できる項目については、その日の診察のなかで結果を見ながらお話しできます。診療対象は15歳以上(高校生以上)です。一般内科は女性医師が対応しており、女性医師への相談を希望される方の考え方は幡ヶ谷の内科で女性医師を探すとき、確認したい4つの点にも書いています。
費用や所要時間の目安について
糖尿病や疲労の原因を調べるための血液検査・尿検査は、症状があれば保険診療の対象になります。自己負担額は検査項目数と加入している保険の負担割合によって変わるため、一律の金額をお示しすることはできません。時間の面では、問診票の記入から会計まで含めて考えておくと余裕があります。当院はデジスマ診療のWeb予約とWeb問診を導入しており、来院前に予約と問診を済ませておくと、来院してからの待ち時間を減らせます。受付時にクレジットカード決済を選んだ場合は、診察後に自動決済となり会計待ちがありません。
なお、当院の受付終了時間は診療終了時間と同じです。月曜・木曜は18:15まで、金曜は17:30まで(金曜は非常勤医師が対応します)、土曜は14:00まで診療しています。火曜・日曜・祝日は休診です。
疲れにくい毎日のために、今日から整えられること
食事は「抜く」より「順番と組み合わせ」から
疲れているときほど、食事を抜いたり、菓子パンやおにぎりだけで済ませたりしがちです。糖質だけの食事は血糖の振れ幅が大きくなりやすいので、たんぱく質(卵、魚、肉、豆腐、納豆)と野菜・海藻・きのこを一緒にとる形に寄せてみてください。野菜やたんぱく質から食べ始め、主食を後にする順番も、取り入れやすい工夫です。
間食をやめられないときは、無理にゼロにせず、食べる時間と中身を決めておくほうが続きます。季節の選び方は糖尿病のおやつ、秋の選び方|3つの分け方と食べる時間を参考にしてください。
水分は、こまめに
血糖が高めのときは尿として水分が出ていきやすく、脱水がだるさを強めます。のどが渇いてから飲むのではなく、朝・仕事の合間・入浴前後など、タイミングを決めて水やお茶をとりましょう。甘い飲み物で水分を補うと血糖が上がりやすいため、普段の水分は無糖のものが向いています。腎臓の治療を受けている方は、水分量について主治医の指示を優先してください。
長く座り続けない
デスクワークで座り続ける時間が長いと、筋肉が糖を使う場面が減ります。立ち上がって数分歩く、階段を使うといった短い動きをはさむことは、特別な道具がなくても始められます。考え方は座りっぱなしと血糖値|テレビ・デスクワークの合間に「3分動く」意味は?に、歩数の目安の考え方は糖尿病の運動に1日1万歩は必要?歩数とHbA1cの研究から考える、続けられる歩き方にまとめています。
睡眠の長さと時間帯も見直す
眠りが浅い日が続くと、翌日の食欲や活動量にも影響します。眠りと血糖の関係については睡眠時間を増やせばHbA1cは下がる?2026年の研究から考える、糖尿病と眠りの整え方で取り上げています。
ひとりで組み立てにくいときは
食事の話は、一般論を聞いただけでは自分の生活に落とし込みにくいものです。当院には管理栄養士が在籍し、院内の栄養相談室で栄養相談を行っています。完全予約制ですので、ご希望の方は受付スタッフにお申し出ください。