- 8月 24, 2023
糖尿病と運動療法ついて
糖尿病の治療には食事療法・運動療法を基本として薬物療法があります。運動療法は食事療法と共に糖尿病の治療の基本となります。なぜ、運動を取り入れることが糖尿病の治療へとつながるのでしょうか?
運動を取り入れるメリット
日本人に多い2型糖尿病の原因の多くは過食や運動不足による肥満です。食事量を減らすだけでは筋肉量が減り、基礎代謝が下がるため、減量ができてもリバウンドしやすくなります。
運動を行うことでエネルギー源であるブドウ糖を消費することで、血糖値が下がります。筋肉はインスリンの働きにより、血糖値が高くなった時に余分な糖を取り込んでくれます。余分な脂肪が筋肉や肝臓についている場合、インスリンの取り込みが悪くなります。運動をすることで筋肉や肝臓の中の脂肪が減り、インスリンの働きが良くなるため、糖分の取り込みが良くなり、血糖値が改善します。
※患者さんによっては運動を制限しなければいけない場合もあります。運動療法を取り入れる場合は主治医のアドバイスを受けるようにしましょう。
具体的な効果
・インスリンの働きを助ける
・インスリンの節約になる
・肥満やストレスの解消
・血糖値の改善を促す
・血液の循環を良くする
・血管の老化をふぜぐ
◇運動の種類
有酸素運動(脂肪燃焼、ダイエット向き)
ジョギング、ウオーキング、水泳、自転車など全身を使う有酸素運動は、筋肉内の血流を増やしてインスリンの働きを高めます。運動の強度は息がはずむ程度で行います。
レジスタント運動(筋力維持・増強向き)
ダンベル体操、スクワットなど無酸素運動である筋力トレーニングを継続することで、筋肉量が増え、血糖値の低下につながります。
プラス10 (プラス・テン)のすすめ
運動をする時間がなかったり、余裕がない場合は、今より10分多く体を動かすこと(=プラス・テン)を日常生活に取り入れます。毎日の少しの工夫で活動量をあげることができます。日常の座位が長くならないよう、30分置きにストレッチを行うなど、身体を動かすことを意識しましょう。
・歯磨きをしながら足上げ運動
・駅や職場では階段を使う
・歩くときはリズミカルに歩く
・椅子に座って片足をあげる
・テレビを見ながらストレッチをする
・ラジオ体操を取り入れる
◇運動の時間
有酸素運動の場合、20分以上が糖質や脂質の代謝に適しています。ウオーキングの目安は1日20分~30分を目安に、早足で歩幅は大幅を意識して歩きましょう。1週間に3日以上の運動が望ましいです。
糖尿病で治療している方は、低血糖を起こしにくい時間帯である食後に運動時間を設けます。(※食後直後は避ける)
◇運動をする時の注意事項
運動によって、症状が悪化する場合があります。薬物療法を行っている場合は、運動により低血糖が起こりやすいので注意します。使用している薬剤により、低血糖のリスクが異なります。かかりつけ医に「運動強度」「頻度」「タイミング」などを確認してから運動療法を取り入れます。
運動を禁止または制限した方がよい場合
・糖尿病の代謝コントロールが極端に悪い場合
・増殖前網膜症以上の場合
・腎不全の状態にある場合
・虚血性心疾患や心肺機能に障害のある場合
・骨・関節疾患がある場合
・急性感染症
・糖尿病黄疸
・高度の糖尿病性自律神経障害
出典:日本糖尿病学会(糖尿病治療ガイド2020-2021)