☝️ はじめに

「ヨーグルトを食べれば、花粉症が軽くなる?」
「乳酸菌サプリで、アトピーのかゆみを改善できる?」
「腸内環境を整えれば、アレルギー体質は変わる?」
腸内細菌と免疫の関係は、医学研究でも注目されています。しかし、「腸が免疫に関わること」と「腸活でアレルギーを治療できること」は、分けて考える必要があります。
研究結果は、病気の種類、治療と予防の違い、使用する菌の種類などによって異なります。今回は、アトピー性皮膚炎と花粉症について、期待できることと、まだ確かではないことを整理します。
☝️ 腸内環境・プロバイオティクスとは?
腸内には多様な微生物が生息しており、食べ物の分解や免疫の調節などに関わっています。
腸内細菌が食物繊維などを利用して作る「短鎖脂肪酸」も、腸や免疫との関係が研究されている物質です。ただし、その仕組みが分かってきたからといって、特定の食品やサプリでアレルギー症状が改善するとは限りません。
関連する言葉には、次の違いがあります。
✅ プロバイオティクス
適切な量を摂取することで、健康上の利益をもたらす生きた微生物のことです。
✅ プレバイオティクス
体内の微生物に利用され、健康上の利益をもたらす成分のことです。一部の食物繊維やオリゴ糖などが該当します。
✅ シンバイオティクス
生きた微生物と、それらに利用される成分を組み合わせたものです。
発酵食品と、研究で使われた製剤は同じではありません
ヨーグルト、納豆、味噌などは食生活に取り入れられる食品ですが、発酵食品をすべて「効果が確認されたプロバイオティクス」と呼ぶことはできません。
製造方法や加熱によって、生きた菌が残っていない食品もあります。また、研究で使用された菌株・量・期間と、市販食品やサプリの内容が一致するとは限りません。[5]
☝️ 研究では何が分かっている?
① アトピーの「治療」:症状改善の結果は一貫していません
2018年のCochraneレビューは、湿疹のある患者さんを対象とした39件の無作為化比較試験(RCT)、計2,599人をまとめました。対象は主に小児で、成人を調べた試験は限られていました。[1]
患者さんや保護者が評価した症状では、プロバイオティクスによる改善は、ほとんどないか、あっても小さいという結果でした。
0〜20点の症状スコアの平均差は−0.44点、95%信頼区間は−1.22〜0.33点でした。この範囲には「差がない」場合も含まれます。
医療者の評価などを組み合わせた重症度スコアには小さな改善がみられましたが、患者さんが実感できるほどの変化かは明確ではありませんでした。
その後も改善を報告する研究はあります。しかし、菌株や年齢によって結果が異なり、日本の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」では、すべての患者さんに特定のプロバイオティクスやプレバイオティクスを一律に推奨することはできないとしています。[2]
② 乳幼児の「発症予防」:治療とは別の研究です
2025年のCochraneレビューは、24研究、計7,077組の母子を対象に、主に生後6か月までのプロバイオティクス投与によるアレルギー発症予防を検討しました。[3]
2歳までの湿疹については、18研究・3,494人の解析で、発症リスクがやや低いという結果でした。
リスク比は0.87、95%信頼区間は0.78〜0.97です。これは相対的なリスクが約13%低いという意味で、発症率が13ポイント下がるという意味ではありません。
ただし、研究の偏りが少ない試験だけに絞ると、明確な差は確認されませんでした。根拠の確実性も低いと評価されています。
日本の2024年ガイドラインでは、アトピー性皮膚炎の発症予防を目的としたプロバイオティクス・プレバイオティクス投与は推奨していません。[2]
乳幼児の発症予防に関する結果を、すでにアトピーや花粉症がある成人の治療効果に置き換えることはできません。
③ 花粉症・アレルギー性鼻炎:補助効果の可能性はあります
2026年に公表されたレビュー・メタ解析では、アレルギー性鼻炎の小児と成人を対象とした29件のRCT、計2,078人を解析しました。[4]
鼻症状や生活の質の一部に改善が報告されました。鼻症状スコアの一つでは、平均差−1.97点、95%信頼区間−3.61〜−0.32点でした。
一方、症状全体や目の症状など、改善が確認されなかった評価項目もあります。菌株や試験条件の違いも大きく、著者らは日常診療で一律に勧めるだけの確実性の高い根拠はないとしています。
また、対象には花粉症だけでなく、ほかのアレルギー性鼻炎も含まれます。この結果だけで「市販のヨーグルトを食べれば、日本のスギ花粉症が改善する」とは言えません。
☝️ まだ分かっていないこと
腸内細菌の違いが、病気の原因とは限りません
アレルギーのある方とない方で、腸内細菌の構成が異なるという報告があります。しかし、観察研究では、食事、年齢、薬、病気そのものの影響を完全には分けられません。
「腸内細菌が違う」という関連だけでは、それが原因なのか、病気などの結果なのかは判断できません。
どの菌を、誰が、どのくらい摂ればよいかは未確立です
同じ「乳酸菌」でも、菌株が違えば働きが同じとは限りません。研究結果を、すべての発酵食品やサプリに一般化することはできません。
ストレスや睡眠とアレルギー症状の関係もありますが、「腸内環境の乱れが、かゆみや気分の落ち込みの原因」と一つの仕組みで説明することはできません。
☝️ 実生活ではどうすればいい?
① 食事は、特定の食品に偏らずバランスよく
野菜、豆類、きのこ、海藻、適量の果物などを、無理のない範囲で組み合わせましょう。食物繊維を急に増やすとお腹が張ることもあるため、体調を見ながら調整してください。
ヨーグルトや納豆も、食事の選択肢の一つです。アレルギー治療のために、特定の商品を大量に摂る必要はありません。
糖尿病がある方は、加糖ヨーグルトや乳酸菌飲料の糖質量も確認しましょう。味噌や漬物は塩分にも配慮します。
② アトピーのスキンケアと炎症の治療を続ける
アトピー性皮膚炎では、皮膚を清潔に保つこと、保湿、炎症を抑える外用薬などが治療の基本です。
腸活を始めたことを理由に、必要な治療を自己判断でやめないでください。
また、アトピーがあるだけで食物アレルギーとは限りません。卵や乳製品などを自己判断で広く除去せず、必要な場合は診断に基づいて調整します。[2]
③ 花粉症は、症状に合った治療と花粉対策を
花粉症では、第二世代抗ヒスタミン薬、鼻噴霧用ステロイド薬、点眼薬などを、症状や生活に合わせて選びます。
鼻づまりが続く方や、飲み薬だけでは十分に改善しない方は、点鼻薬などの治療を相談しましょう。眠気や運転への影響も、薬を選ぶ際の大切なポイントです。
外出時のマスク・メガネ、帰宅時に衣服の花粉を落とすことなども取り入れましょう。[6]
④ 「効かない」「眠れない」を我慢しない
鼻づまりやかゆみで眠れない、仕事や学校に支障がある、現在の治療で十分によくならない場合は、受診の目安です。
サプリを使用している場合は、商品名や成分が分かるものを診察時にお持ちください。
☝️ まとめ
腸内細菌と免疫の関係には、興味深い研究が増えています。ただし、腸活をアレルギーの確立した治療として扱うことはできません。
✅ アトピー治療では、一部に改善の報告があるものの、一律の摂取は推奨できない
✅ 乳幼児の発症予防と、すでにある症状の治療は別の研究
✅ 花粉症では補助効果の可能性があるが、標準治療の代わりにはならない
✅ 食事はバランスよく、必要なスキンケアや薬の治療を続ける
初台まちのクリニックでは、花粉症などのアレルギー症状や生活習慣について相談をお受けしています。皮膚症状についても状態を確認し、必要に応じて皮膚科などの専門医療機関と連携します。
初台まちのクリニック
初台駅南口から徒歩1分
【参考文献・参考資料】
- Makrgeorgou A, Leonardi-Bee J, Bath-Hextall FJ, et al. Probiotics for treating eczema. Cochrane Database Syst Rev. 2018;11.
DOI:10.1002/14651858.CD006135.pub3
PMID:30480774
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30480774/ - 佐伯秀久、大矢幸弘、荒川浩一、ほか.アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024.日本皮膚科学会雑誌.2024;134(11):2741–2843.特にCQ37・CQ38。
DOI:10.14924/dermatol.134.2741
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2024.pdf - Wang HZ, Hayles EH, Fiander M, Sinn JKH, Osborn DA. Probiotics in infants for prevention of allergic disease. Cochrane Database Syst Rev. 2025;6.
DOI:10.1002/14651858.CD006475.pub3
PMID:40511642
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40511642/ - Wang Z, Lu Y. Efficacy of probiotics on immunological and clinical outcomes in allergic rhinitis: an umbrella review and updated meta-analysis of RCTs in children and adults. BMC Immunol. 2026 Jul 17. Online ahead of print.
DOI:10.1186/s12865-026-00873-1
PMID:42469658
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42469658/ - Marco ML, Sanders ME, Gänzle M, et al. The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on fermented foods. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021;18(3):196–208.
DOI:10.1038/s41575-020-00390-5
PMID:33398112
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33398112/ - 日本アレルギー学会「アレルギーポータル:アレルギー性鼻炎」。
https://allergyportal.jp/knowledge/allergic-rhinitis/
※本記事は一般的な医学情報を提供するもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。食品やサプリの効果は、研究で使用された菌株・量・対象者などによって異なります。食物アレルギーのある方は原因食品を避け、治療や食事制限の変更は主治医にご相談ください。情報は2026年10月確認時点のものです。