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肥満症治療はどこまで進んだ?2026年最新の薬物療法と「次世代治療」を解説

☝️ はじめに

「食事に気をつけているのに痩せない」
「何度ダイエットしてもリバウンドする」
「肥満症の薬って、実際どのくらい体重が減るの?」

近年、肥満症治療は大きく変わっています。

特に、セマグルチドやチルゼパチドなど、食欲や満腹感に作用する新しい治療薬の登場によって、従来より大きな体重減少が期待できるようになりました。

さらに2025〜2026年には、

・セマグルチドとチルゼパチドの直接比較
・GLP-1とアミリンを組み合わせるCagriSema
・脂肪を減らしながら筋肉を保つことを目指すビマグルマブ

など、次の世代の肥満症治療に関する研究も相次いで発表されています。

今回は「2026年現在、すでに使える治療」と「まだ研究段階の治療」を分けて、最新の肥満症治療を解説します。

☝️ まず「肥満」と「肥満症」は同じではありません

日本ではBMI 25kg/m²以上を「肥満」と定義しています。

ただし、BMIが25以上というだけで全員が病気というわけではありません。

肥満に加えて、

・2型糖尿病・耐糖能異常
・高血圧
・脂質異常症
・脂肪肝
・睡眠時無呼吸症候群
・高尿酸血症・痛風
・肥満に関連する関節障害

などの健康障害があり、医学的に減量が必要な状態を「肥満症」と呼びます。

肥満症治療の目的は、単に見た目を細くすることではありません。

体重を減らすことで、血糖・血圧・脂質・睡眠などを改善し、将来の病気を減らすことが本当の目的です。

☝️ 現在の代表的な治療① セマグルチド(ウゴービ)

セマグルチドはGLP-1受容体作動薬です。

GLP-1は食事をすると腸から分泌されるホルモンで、脳に作用して食欲を抑え、満腹感を高める働きがあります。

肥満症治療では週1回注射するウゴービが使用されます。

2021年に発表されたSTEP 1試験では、糖尿病のない過体重または肥満の成人を対象に、生活習慣改善とセマグルチド2.4mgを組み合わせました。

68週間後の平均体重変化は、

セマグルチド:約−14.9%
プラセボ:約−2.4%

でした。

例えば体重100kgの方であれば、平均すると約15kgに相当する体重減少です。

もちろんこれは「全員が15%減る」という意味ではなく、試験参加者の平均値です。

効果には個人差があります。

☝️ セマグルチドは「体重を減らすだけ」の薬ではない?

さらに重要な研究がSELECT試験です。

心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の既往があり、BMI 27以上で糖尿病のない17,604人を対象として、セマグルチド2.4mgとプラセボが比較されました。

その結果、

心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中

を合わせた主要心血管イベントは、

セマグルチド群:6.5%
プラセボ群:8.0%

で、セマグルチドによって相対的に20%低下しました。

ただし、この結果は「肥満のあるすべての方で心筋梗塞が20%減る」という意味ではありません。

対象は、すでに心血管疾患を持つ45歳以上の患者さんです。

それでも肥満症治療が、

「体重の数字を下げる治療」

から、

「将来の健康リスクを減らす治療」

へ変化していることを示す重要な研究です。

☝️ 現在の代表的な治療② チルゼパチド(ゼップバウンド)

チルゼパチドは、

GLP-1
+
GIP

という2つの消化管ホルモンの受容体に作用する薬です。

日本では肥満症治療薬として「ゼップバウンド」が承認されています。

2022年のSURMOUNT-1試験では、糖尿病のない肥満または過体重の成人を対象に、最高用量15mgで平均20%を超える体重減少が報告され、大きな注目を集めました。

そして2025年には、さらに重要なSURMOUNT-5試験が発表されました。

この研究ではチルゼパチドとセマグルチドが直接比較されています。

72週間後の平均体重変化は、

チルゼパチド:約−20.2%
セマグルチド:約−13.7%

でした。

これまで別々の研究結果を比較して「どちらの薬が強いの?」と議論されることが多かったのですが、直接比較でもチルゼパチドの体重減少効果がより大きいことが示されました。

ただし、

「体重が一番減る薬=その人に一番良い薬」

とは限りません。

副作用、持病、現在使用している薬、治療の目的なども含めて選択する必要があります。

☝️ 次世代治療① CagriSemaとは?

ここからは、2026年現在ではまだ研究段階の治療です。

注目されているのが「CagriSema(カグリセマ)」です。

これは、

カグリリンチド
+
セマグルチド

を組み合わせた治療です。

カグリリンチドは「アミリン」というホルモンに似た作用を持つ薬です。

GLP-1とは異なる経路から食欲や満腹感に作用することで、より大きな体重減少を目指しています。

2025年にNEJMに発表されたREDEFINE 1試験では、糖尿病のない過体重または肥満の成人3,417人が参加しました。

68週間後の平均体重変化は、

CagriSema:約−20.4%
プラセボ:約−3.0%

でした。

消化器症状は比較的多く、CagriSema群の約8割に何らかの消化器系有害事象が報告されましたが、その多くは一時的で軽度〜中等度でした。

☝️ 日本人を含む研究結果も発表されました

2026年には、日本と台湾の参加者を対象としたREDEFINE 5試験も発表されています。

68週間の平均体重変化は、

CagriSema:約−18.4%
セマグルチド:約−11.9%

でした。

東アジア人でもCagriSemaによる大きな体重減少が示されたことは興味深い結果です。

ただし、CagriSemaは2026年8月現在、日本で日常診療に使用できる肥満症治療薬ではありません。

研究結果が良いことと、「すでに処方できる薬」であることは分けて考える必要があります。

☝️ 次世代治療② 「体重」だけでなく筋肉を守る?ビマグルマブ

肥満症治療のもう一つの課題が「筋肉」です。

大きく体重を減らすと、脂肪だけでなく除脂肪量も減少することがあります。

そこで研究されているのが「ビマグルマブ」です。

ビマグルマブはアクチビンII型受容体を標的とする抗体薬で、

脂肪量を減らす
+
筋肉量を維持・増加させる

という、従来の肥満症治療薬とは異なるアプローチが期待されています。

2026年にNature Medicineへ発表されたBELIEVE試験では、肥満のある成人507人を対象として、

・ビマグルマブ
・セマグルチド
・両者の併用
・プラセボ

などが比較されました。

48週間では、高用量のビマグルマブ+セマグルチド併用によってセマグルチド単独より大きな体重・脂肪量の減少がみられ、さらに除脂肪量の減少が抑えられる結果が示されました。

これは、

「どれだけ体重を落とすか」

だけではなく、

「どんな体組成で体重を落とすか」

という新しい肥満症治療の方向性として注目されています。

ただし、こちらも第2相試験の段階で、ビマグルマブは肥満症治療薬として承認された薬ではありません。

☝️ 「20%痩せる薬」があれば、食事や運動は不要?

いいえ。

セマグルチド、チルゼパチド、CagriSemaなどの臨床試験は、基本的に薬だけを使用した試験ではありません。

食事や身体活動などの生活習慣への介入と組み合わせています。

薬によって食欲が抑えられていても、

・たんぱく質が不足する
・極端に食事量を減らす
・運動を全くしない

といった状態では、筋肉量の減少や栄養バランスの悪化につながることがあります。

肥満症治療では、

✅ バランスのよい食事

✅ 筋肉を維持するための運動

✅ 睡眠

✅ ストレス管理

✅ 定期的な体重・血圧・血液検査

などを組み合わせることが重要です。

☝️ 「一番痩せる薬」を選べばよいわけではありません

最新研究を見ると、

「15%」
「20%」

という数字が目立ちます。

しかし、肥満症治療で本当に重要なのは、減量率のランキングではありません。

例えば患者さんによって、

・糖尿病を改善したい
・高血圧を改善したい
・心血管疾患のリスクが高い
・脂肪肝がある
・睡眠時無呼吸症候群がある
・膝や腰への負担を減らしたい

など治療目的が異なります。

さらに、

・副作用
・既往歴
・併用薬
・妊娠の可能性
・治療費
・継続できるか

も重要です。

「どの薬が一番強いか」ではなく、

「自分の健康状態には、どの治療が適しているか」

を考えることが大切です。

☝️ 肥満症治療は「ダイエット」から「病気を予防する医療」へ

肥満症治療は、この数年間で大きく進歩しました。

現在、日本ではセマグルチドやチルゼパチドなどの治療薬が使用できるようになっています。

さらに研究段階では、

・CagriSema
・ビマグルマブとの併用
・その他の多重受容体作動薬

など、新しい治療法の開発も進んでいます。

しかし、新しい薬が登場しても治療の目的は変わりません。

「ただ痩せること」

ではなく、

糖尿病、高血圧、脂質異常症、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患などのリスクを減らし、将来の健康を守ること

です。

☝️ まとめ

2026年現在の肥満症治療を整理すると、

✅ セマグルチドは平均約15%の体重減少を示した大規模試験がある

✅ 心血管疾患既往患者では、セマグルチドによる主要心血管イベント低下も示されている

✅ チルゼパチドはセマグルチドとの直接比較で、より大きな体重減少を示した

✅ セマグルチドとチルゼパチドは日本でも肥満症治療薬として承認されている

✅ CagriSemaでは約20%の体重減少が報告されているが、現在は研究段階

✅ ビマグルマブとの併用では、脂肪を減らしながら除脂肪量を保つ新しい治療戦略が研究されている

✅ 最新治療でも食事・運動・睡眠などの生活習慣管理は重要

ということになります。

「自分は肥満症?」
「薬を使った治療の対象になる?」
「セマグルチドとチルゼパチドは何が違う?」
「何度ダイエットしてもリバウンドしてしまう」

といった方は、お気軽にご相談ください。

初台まちのクリニックでは、体重だけを見るのではなく、血糖、血圧、脂質、肝機能、睡眠時無呼吸症候群なども含めて健康状態を確認し、一人ひとりに合った治療方法を考えていきます。

初台まちのクリニック
初台駅南口から徒歩1分

【参考文献】

・Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2021;384:989-1002.

・Lincoff AM, et al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes. N Engl J Med. 2023;389:2221-2232.

・Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2022;387:205-216.

・Aronne LJ, et al. Tirzepatide as Compared with Semaglutide for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2025;393:26-36.

・Garvey WT, et al. Coadministered Cagrilintide and Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2025;393:635-647.

・Yamauchi T, et al. Efficacy and safety of co-administered cagrilintide and semaglutide versus semaglutide alone in adults with overweight or obesity with or without type 2 diabetes in Japan and Taiwan (REDEFINE 5). Lancet Diabetes Endocrinol. 2026;14:450-462.

・Heymsfield SB, et al. Bimagrumab plus semaglutide alone or in combination for the treatment of obesity: a randomized phase 2 trial. Nat Med. 2026;32:869-882.

※治療効果や副作用には個人差があります。肥満症治療薬には適応や使用条件があり、研究段階の薬剤は通常診療で使用できる薬剤とは異なります。自己判断で治療薬を使用・変更せず、医師にご相談ください。

院長 富田恭子

この記事の監修

富田 恭子初台まちのクリニック 院長/日本糖尿病学会 糖尿病専門医

経歴

  • 2008年 福岡大学医学部医学科 卒業
  • 鳥取大学医学部附属病院、山陰労災病院、上尾中央総合病院、総合健診センターヘルチェック 勤務

資格・所属学会

  • 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
  • 日本内科学会 内科認定医
  • 日本医師会認定産業医/認知症サポート医
  • 抗加齢医学会 会員/日本フットケア・足病医学会 会員

糖尿病は初期に自覚症状が乏しく、放置すると合併症につながることがあります。糖尿病専門医として、将来の合併症を見据えながら「今できること」を一人ひとりと一緒に考え、継続して治療を進めます。

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