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糖尿病

くるみの効果が気になる方へ|素焼きと味付きの違いと食べる量

「くるみは体にいい」と言われる理由を、まず脂質から見てみます

くるみは、ナッツのなかでも「体にいい」と語られることの多い食材です。ただ、何がどう良いのかまで説明されることは少なく、なんとなく健康食品として買ってはみたものの、食べ方がわからないまま棚に置いてある、という方もいらっしゃるかもしれません。

くるみの特徴は、まず脂質の質にあります。くるみは重さのおよそ7割が脂質という、かなり脂の多い食材です。ただしその中身は、飽和脂肪酸ではなく多価不飽和脂肪酸が中心で、とくにn-3系脂肪酸であるα-リノレン酸を比較的多く含むことが、他のナッツと違う点として知られています(文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」)。

α-リノレン酸は体内で作ることができないため、食事から摂る必要がある必須脂肪酸に分類されます。日本人の食事摂取基準(2025年版・厚生労働省)でも、n-3系脂肪酸には目安量が設定されています。魚を食べる機会が減っている方にとって、くるみはこの系統の脂肪酸をとりやすい食品のひとつ、という位置づけになります。

ここで大事なのは、「α-リノレン酸を含む=食べれば何かが治る」ではない、ということです。くるみは薬ではありませんし、特定の病気を防いだり改善したりすると言い切れるものでもありません。毎日の食事全体のなかで、脂質の内訳を少し動かす材料のひとつ、と考えていただくのがちょうどよい距離感だと思います。

くるみに含まれる主な成分と、期待できる働きの整理

くるみの成分をもう少し具体的に見ていきます。数値は挙げず、何が多いかという傾向でまとめます。

成分 くるみでの位置づけ からだでの働き
多価不飽和脂肪酸(α-リノレン酸など) ナッツ類のなかでは多い部類 必須脂肪酸として、細胞膜の材料などに使われる
食物繊維 野菜ほどではないが含まれる 便の量を増やし、腸内細菌のはたらきに関わる
たんぱく質 植物性としてはそれなりに含む からだの組織をつくる材料になる
ビタミンE・ポリフェノール類 渋皮の部分にも含まれる 抗酸化に関わる成分として知られる
マグネシウム・銅などのミネラル 種実類に共通して含まれる 酵素のはたらきなどに関わる

こうして並べると、くるみは「栄養が偏りなく詰まった、脂の多い種子」だとわかります。甘くないのに満足感が出るのは、脂質とたんぱく質、食物繊維が一緒に入っているためです。噛む回数も自然と増えます。

一方で、カリウムやリンを含むため、腎臓の機能に応じて摂取量の調整が必要な方もいらっしゃいます。治療中の方は、自己判断で量を増やす前に、主治医や管理栄養士に確認していただくのが確実です。

「血糖値にいい」と聞いたのですが

くるみそのものには糖質がほとんど含まれていません。そのため、甘いお菓子の代わりにくるみを食べれば、その一口分の糖質は減ります。ここは理屈としてはっきりしています。

ただし、くるみを食べたから血糖が下がる、という意味ではありません。くるみを「追加」すれば、そのぶんエネルギーは増えます。置き換えなのか、上乗せなのか。この違いで結果はまったく変わります。くるみを取り入れるときは、何かの代わりに食べる、という形をまず考えてみてください。

間食そのものとの付き合い方については、夕食後、ついお菓子に手が伸びるのはなぜ?でも触れています。

他のナッツとどう違うのか

くるみと他のナッツの脂質の種類を比べた図

ナッツ売り場にはアーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、ミックスナッツと並んでいます。どれを選べばいいのか迷ったときのために、特徴の違いを整理します。

種類 脂質の傾向 選ぶときの目安
くるみ 多価不飽和脂肪酸が中心。α-リノレン酸を含む点が特徴 魚を食べる機会が少ない方の選択肢に
アーモンド 一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)が中心。ビタミンEが多い 歯ごたえがあり、よく噛みたいとき
カシューナッツ 脂質はやや少なめだが、糖質は種実類のなかでは多い側 料理に使いやすい。甘く感じやすい
ピスタチオ 一価不飽和脂肪酸中心。殻つきが多い 殻をむく手間が、食べる速度を落とす
落花生(ピーナッツ) 厳密にはナッツではなく豆類。一価不飽和脂肪酸が多い 価格が手頃。味付き商品が多い点に注意

どれが一番、という話ではありません。脂肪酸の種類が違うので、いくつかを混ぜて食べるほうが内訳は自然にばらけます。ミックスナッツが理にかなっているのは、この点です。ただし市販のミックスナッツには味付きや砂糖がけが混じるものもあるため、原材料の表示は見る価値があります。

素焼きと味付き、ローストと生──表示の見分け方

くるみの原材料表示を見比べて素焼きと味付きを見分ける図

くるみ選びで実際に差が出るのは、成分表よりも商品の加工です。ここは店頭で誰でも確認できます。

原材料欄を見ると、ほぼ判別できます

裏面の原材料名が「くるみ」の一語だけなら、味付けも油も加えていない素焼き(または生)です。ここに「食塩」が入れば塩味つき、「植物油脂」が入れば油で揚げるか油をまぶした加工、「砂糖」「水あめ」「蜂蜜」が入れば甘い加工品です。「調味料(アミノ酸等)」が並ぶものは、味を強めた商品だと考えてよいと思います。

塩味つきは、食べ始めると止まりにくくなります。しょっぱさが次の一粒を呼ぶためで、意志の強さの問題ではありません。くるみを毎日の習慣にしたいなら、素焼きか生を選んでおくほうが、量をコントロールしやすくなります(感じ方には個人差があります)。

「無塩」「素焼き」の表記だけで安心しない

パッケージ表面の「素焼き」「無添加」といった文字は目立ちますが、油を使っていないかどうかまでは表面からわかりません。判断は必ず裏面の原材料欄で行ってください。表面の言葉は宣伝文句、裏面の表示は決められた記載、という違いがあります。

生のくるみとローストの違い

生のくるみは香りが穏やかで、料理に混ぜ込むのに向きます。ローストしたものは香ばしく、そのまま食べるのに向きます。栄養面で決定的な差がつくわけではありませんが、ローストは熱が加わるぶん脂質が酸化しやすい状態になります。開封後は早めに食べきるほうが無難です。

渋皮は取らなくてかまいません

くるみの表面にある薄い茶色の皮は、えぐみのもとですが、ポリフェノール類を含む部分でもあります。苦手でなければそのまま食べていただいて差し支えありません。

どのくらい、いつ食べるか

量について、ここで具体的な数値は挙げません。腎臓や脂質の治療を受けている方、体重を減らしたい方で適量は変わりますし、当院の管理栄養士が個別に確認していない数値を一律にお示しするのは適切ではないと考えています。そのうえで、考え方としての目安をお伝えします。

袋から直接食べない

くるみは脂質が多く、少量でもエネルギーのある食品です。袋ごと手元に置くと、食べた量が自分でも把握できなくなります。小皿に出す、あるいは小分け包装の商品を選ぶ。これだけで「どれだけ食べたか」が目に見えるようになります。

「足す」より「置き換える」

すでに食べている菓子パンやスナック、チョコレートの一部をくるみに替える。これが最も現実的です。いまの食事に純粋に追加すると、脂質の質は改善しても総エネルギーは増えます。

食べるタイミング

間食として食べるなら、空腹が強くなりすぎる前のほうが、量が増えにくくなります。夕食後の習慣的な間食をくるみに替える方もいらっしゃいますが、夜は活動量が落ちるため、昼から夕方のほうが組み込みやすい時間帯です。

料理に混ぜる使い方

刻んでサラダに散らす、和え物の衣に混ぜる、ヨーグルトに加える、炒め物の仕上げに入れる。おやつとして単独で食べるより、食事の一部になるほうが食べ過ぎにくくなります。和食なら、ほうれん草の白和えや胡麻和えのごまの一部をくるみに替えると、香りが変わって飽きにくくなります。

植物性の食材で食事を組み立てる考え方は、高野豆腐の栄養|血糖が気になる方の戻し方と味つけでも扱っています。

保存と、気をつけたいこと

酸化しやすい脂です

くるみに多い多価不飽和脂肪酸は、空気・光・熱で酸化しやすい性質があります。酸化が進むと、舌に残るような苦み・古い油のにおいが出ます。この味がしたら食べないでください。

保存は、開封後は密閉して冷蔵または冷凍が向いています。常温の棚に開けたまま置くのは、この食材にはあまり向きません。大袋をまとめ買いするより、食べきれる量を買うほうが結果的に質を保ちやすくなります。

アレルギーについて

くるみは、食品表示法で表示が義務づけられている特定原材料に含まれています(消費者庁、2023年の改正で義務表示へ移行)。ナッツ類のアレルギーは症状が強く出ることがあるため、過去にナッツで口のかゆみ・じんましん・息苦しさが出たことのある方は、自己判断で試さないでください。

治療中の方が確認しておきたいこと

腎機能が低下している方はカリウム・リンの調整が必要な場合があります。脂質異常症や体重の管理をしている方は、くるみを「増やす」のではなく「何かと入れ替える」形が基本になります。治療内容によって答えが変わるので、通院されている方は診察の場で確認していただくのが確実です。

当院での栄養相談について

当院(初台まちのクリニック)には管理栄養士が在籍しており、院内の栄養相談室で栄養相談を行っています。完全予約制ですので、ご希望の方は受付スタッフへお申し出ください。「ナッツを間食にしてよいか」「いまの食事のどこを入れ替えるか」といった、ご自身の検査結果と治療内容をふまえた具体的な相談ができます。

また当院では、血糖値・HbA1cの迅速検査を院内で行っています。健診で血糖値やコレステロールを指摘されたけれど、食事をどう変えればよいかわからない、という段階でご相談いただいて差し支えありません。栄養指導を初めて受ける日の流れは、糖尿病の栄養指導の内容|初めて受ける日の流れと持ち物にまとめています。

診療は月・水・木・金・土で、火曜と日祝は休診です。受付終了時間は診療終了時間と同じですので、診療時間内であればご来院いただけます(金曜日は非常勤医師が対応します)。デジスマ診療によるWeb予約・Web問診を導入しており、事前に済ませておくと来院後の待ち時間を減らせます。

まとめ

くるみの特徴は、ナッツのなかでα-リノレン酸を比較的多く含むという脂質の質にあります。ただしそれは「食べれば健康になる」という話ではなく、いまの食事の脂質の内訳を少し動かす材料、という位置づけです。

選ぶときは裏面の原材料欄を見て、「くるみ」だけのものを。食べるときは袋から直接ではなく小皿に。そして、いまの間食に足すのではなく、置き換える。この3点を押さえておけば、くるみは無理なく続けられる食材のひとつになります。

くるみは毎日食べても大丈夫ですか
くるみは脂質が多く、少量でもエネルギーのある食品です。毎日食べること自体に問題はありませんが、いまの食事に追加するのではなく、菓子類など他の間食と入れ替える形が現実的です。腎臓の機能が低下している方はカリウムやリンの調整が必要な場合があり、脂質や体重の治療を受けている方も適量が変わります。通院中の方は診察や栄養相談の場でご確認ください。
素焼きのくるみと味付きのくるみは、どこで見分けられますか
パッケージ裏面の原材料名の欄で判断します。「くるみ」の一語だけなら味付けも油も加えていないものです。「食塩」があれば塩味つき、「植物油脂」があれば油を使った加工、「砂糖」「水あめ」「蜂蜜」があれば甘い加工品です。表面に「素焼き」と大きく書かれていても油の使用までは表面からわからないため、判断は裏面の表示で行ってください。
くるみを食べると血糖値が下がりますか
くるみを食べることで血糖値が下がると言い切ることはできません。くるみ自体には糖質がほとんど含まれないため、甘いお菓子の代わりに食べればその分の糖質は減りますが、いまの食事に上乗せすればエネルギーは増えます。置き換えとして使うのか追加するのかで結果は変わります。血糖が気になる場合は、食品ひとつではなく食事全体の組み立てで考えることが必要です。
くるみとアーモンドは何が違いますか
主に脂質の種類が違います。くるみは多価不飽和脂肪酸が中心で、n-3系脂肪酸であるα-リノレン酸を比較的多く含みます。アーモンドは一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸が中心で、ビタミンEを多く含むことで知られます。どちらが優れているという関係ではないため、数種類を組み合わせて食べると脂肪酸の内訳が自然に分散します。
くるみが古くなったかどうかは、どう判断しますか
くるみに多い多価不飽和脂肪酸は、空気や光、熱によって酸化しやすい性質があります。酸化が進むと、舌に残る苦みや古い油のようなにおいが出ます。この味やにおいを感じたときは食べずに処分してください。開封後は密閉して冷蔵または冷凍で保存し、常温で開けたまま置かないこと、食べきれる量を買うことが保存の基本になります。

院長 富田恭子

この記事の監修

富田 恭子初台まちのクリニック 院長/日本糖尿病学会 糖尿病専門医

経歴

  • 2008年 福岡大学医学部医学科 卒業
  • 鳥取大学医学部附属病院、山陰労災病院、上尾中央総合病院、総合健診センターヘルチェック 勤務

資格・所属学会

  • 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
  • 日本内科学会 内科認定医
  • 日本医師会認定産業医/認知症サポート医
  • 抗加齢医学会 会員/日本フットケア・足病医学会 会員

糖尿病は初期に自覚症状が乏しく、放置すると合併症につながることがあります。糖尿病専門医として、将来の合併症を見据えながら「今できること」を一人ひとりと一緒に考え、継続して治療を進めます。

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