「キムチは体にいい」と聞くけれど、毎日食べていい?
こんにちは。初台まちのクリニック院長の富田です。診察室や栄養相談室で、「キムチは発酵食品だから毎日食べています」「でも塩分が心配で」というお話をよくうかがいます。健診で血圧や血糖を指摘された方ほど、この二つの気持ちのあいだで迷われているようです。
キムチには、発酵食品としての面と、漬物としての塩分の面の両方があります。どちらか一方だけを見て「体にいいから毎日たっぷり」「塩分が多いからやめる」と決めてしまうと、せっかくの食材を扱いきれません。この記事では、キムチをどんな食べものとして見ればよいか、血圧を指摘された方がどう付き合えばよいかを、食卓で使える形に整理していきます。
キムチにはどんな働きがあると考えられているか
乳酸菌による発酵という面
キムチは、白菜などの野菜に唐辛子、にんにく、塩などを合わせて漬け込み、乳酸菌のはたらきで発酵させた食品です。発酵が進むと酸味が出て、味わいが変わっていきます。この酸味こそが、乳酸発酵が起きている目印です。
発酵食品に含まれる菌は、腸の中の環境に関わる食品成分として研究されています。ただし、特定の食品を食べたことで病気が治る、数値が下がるといった形で言い切れるものではありません。あくまで日々の食事の一部として、野菜や発酵食品をとる習慣の中に位置づけるのが現実的です。
野菜として食べられるという面
見落とされがちですが、キムチは白菜や大根といった野菜が主な材料です。野菜を生のままたくさん食べるのが苦手な方でも、漬けることでかさが減り、量を口にしやすくなります。野菜には食物繊維が含まれ、食事全体の満足感にも関わります。
「副菜が一品足りない」というときに、冷蔵庫から出すだけで野菜が一品増える。これはキムチの実用的な強みです。
唐辛子やにんにくの風味という面
キムチの辛みと香りは、料理の味を決める力があります。薄味の料理は物足りなく感じやすいものですが、辛みや香りがあると、しょうゆや塩を足さなくても食べ進められることがあります(感じ方には個人差があります)。減塩に取り組んでいる方にとって、香辛料や香味野菜は味の物足りなさを補う手段のひとつです。
もう一つの顔、キムチは「漬物」でもある
キムチは塩で漬けてつくる食品です。つまり、塩分を含んでいます。これは欠点ではなく、保存食としての成り立ちそのものです。問題になるのは、「体にいいから」という理由で、量や頻度の感覚なしに食べ続けてしまう場合です。
日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2019』では、高血圧の方の減塩目標として1日6g未満が示されています。この枠の中で、ごはんのおかず、みそ汁、加工品、外食と、すべての塩分が積み重なっていきます。キムチだけを見て多い少ないを判断するのではなく、一日全体の中で自分がどのくらい塩分を使っているかを把握することが先になります。
血圧を指摘された方にとって大切なのは、キムチを「やめるかどうか」ではなく、「どこに置くか」です。みそ汁とキムチと漬物が同じ食卓に並べば、それぞれは少量でも合計は積み上がります。逆に、味つけの薄い主菜に少量のキムチを添えるなら、キムチが味のアクセントとして働きます。
毎日食べたいとき、どう組み立てるか

一日の中で「塩けのある一品」を重ねない
もっとも実行しやすい工夫は、塩けのある副菜を一食に一つまでにすることです。キムチを出す日は、ほかの漬物や佃煮、塩辛は出さない。みそ汁を飲むなら具だくさんにして汁の量を控える。こうした引き算のほうが、キムチ自体をがまんするより続けやすいものです。
「そのまま食べる」より「料理に使う」
小皿に盛ってそのまま食べると、箸が進むうちに量が増えがちです。一方、炒めものや鍋、スープの味つけとして使うと、少ない量で料理全体に風味が回ります。豚肉と炒める、豆腐とあわせる、卵とじにする。キムチを調味料として扱うと、ほかの塩やしょうゆを減らせる場面が出てきます。
たんぱく質や油と組み合わせる
キムチだけでごはんを食べると、ごはんの量が増えやすくなります。肉や魚、卵、豆腐といったたんぱく質を主役に置き、キムチはその横に添える。この順番にしておくと、主食に偏らない食卓になります。食後の血糖が気になる方は、野菜やたんぱく質から食べ始める順序も取り入れやすい工夫です。
汁けは切る
キムチの汁には調味料と塩分が溶け出しています。ごはんにかけたり、器に汁ごと盛ったりすると、その分も口に入ります。軽く汁を切ってから盛るだけでも、入ってくる量は変わります。
市販のキムチを選ぶとき、ラベルのどこを見るか

スーパーに並ぶキムチは、製法によって性格が異なります。選ぶときは、パッケージの表示を見るのがいちばん確実です。
| 見る場所 | 確認したいこと |
|---|---|
| 商品名・表示 | 「キムチ」と「白菜キムチ(浅漬け)」など、発酵させたものか調味液で和えたものかの違い |
| 原材料名 | 野菜・唐辛子・魚介類などが中心か、調味料や甘味の材料が前のほうに並んでいないか |
| 栄養成分表示の食塩相当量 | 100gあたりか1袋あたりか、どの単位で書かれているか |
| 保存方法 | 要冷蔵のもの。発酵が進むと酸味が増すため、味の変化は自然な現象 |
日本では、乳酸発酵をさせず調味液で和えた「キムチ風」の浅漬けタイプも広く売られています。どちらが良い悪いではありませんが、発酵食品としての面を期待して買うのであれば、表示を見て選ぶ意味があります。酸味が出てきたものは、炒めものや鍋に使うとおいしく食べ切れます。
栄養成分表示を見るときは、単位をそろえることが大切です。100gあたりで書かれている商品と、1食分で書かれている商品を並べて比べると、実際より少なく見えたり多く見えたりします。自分が一度に食べる量に換算して見る癖をつけておくと、ほかの食品を選ぶときにも役立ちます。
胃が弱い方、服薬中の方が気をつけたいこと
唐辛子の辛みは刺激になります。胃の調子が悪いとき、胸やけや胃の痛みがあるときは、量を控えるか間をあけてください。逆流性食道炎などで治療を受けている方は、辛いものとの付き合い方を主治医に確認しておくと安心です。
また、キムチには魚介を使った材料が含まれることがあります。アレルギーのある方は原材料名を確認してください。腎臓の病気でカリウムや塩分の制限を受けている方は、自己判断で量を決めず、担当の医師や管理栄養士に相談してから取り入れてください。
血圧や血糖を指摘されたとき、食品より先に見るところ
健診で血圧や血糖を指摘されると、「何を食べればいいか」を探したくなります。けれど実際の生活で効いてくるのは、一つの食品の良し悪しよりも、食事全体の組み立てと、毎日の記録です。
家庭で血圧を測る習慣があると、どんな日に数値が上がりやすいかが見えてきます。外食が続いた週、麺類の汁を飲み干した日、睡眠が短かった日。食品単位ではなく、生活の流れとして見るほうが、自分に合った調整点が見つかります。
数値が気になる状態が続くとき、家庭での工夫を重ねても改善しないとき、あるいはじわじわ悪くなっていくときは、一度相談にいらしてください。当院では、グリコヘモグロビン分析装置を備えており、血糖値とHbA1cの迅速検査を行っています。血圧脈波検査装置・心電図も院内にあります。
また、当院には管理栄養士が在籍しており、栄養相談を行っています(完全予約制です。ご希望の方は受付スタッフにお申し出ください)。「キムチは食べていいですか」といった具体的なご質問も、ふだんの食卓の話をうかがいながら一緒に考えていきます。栄養相談室は院内にありますので、診察とあわせてお越しいただけます。
診療時間は月・木が9:00〜12:30と14:15〜18:15、水が8:20〜12:30と13:15〜15:00、金が9:00〜12:30と13:15〜17:30、土は9:00〜14:00です。火曜・日曜・祝日は休診です。受付終了時間は診療終了時間と同じですので、終わり際の時間でもご相談いただけます(金曜日は非常勤医師が対応します)。診療対象は15歳以上の方です。
食材ごとの付き合い方を知りたい方へ
当院のコラムでは、ほかの食材についても同じように、働きと注意点の両方から書いています。あわせてご覧ください。
- アボカドの効果と脂質の質|血糖が気になる方の食べる量と選び方
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- 糖尿病の栄養指導の内容|初めて受ける日の流れと持ち物
まとめ
キムチは、乳酸発酵による面と、塩で漬けた漬物という面を同時に持つ食品です。発酵食品だからたくさん、と考えるのではなく、一日の塩分の枠の中に置いて、ほかの塩けのある一品と重ねない。そのまま食べるより料理の味つけに使う。汁けを切る。買うときは表示を見て、発酵させたものか調味液で和えたものかを確かめる。
この程度の扱い方が決まっていれば、キムチは食卓で長く付き合える食材です。血圧や血糖の数値が気になっている方は、食品を一つずつ足し引きするより、食事全体と記録を見ていくほうが近いところに答えがあります。