結果表は「判定区分・基準範囲・前年比」の3か所から読み始めます

健康診断の結果が届くと、細かい数字がびっしり並んでいて、どこから見ればよいのか迷ってしまいますよね。実は、最初に見るべき場所は3つだけです。
1つめは、いちばん目立つ場所にある総合判定(判定区分)。2つめは、各項目の右側に小さく書かれている基準範囲。3つめは、同じ施設で毎年受けている方なら前年・前々年の数値です。この3つを押さえるだけで、「今すぐ動くべきか」「様子を見てよいか」の見当がつきます。
判定区分の記号は施設によって表記が異なりますが、日本人間ドック・予防医学会が示す判定区分をもとに、おおむね次のように分かれています。
| 区分の例 | 意味 | そのあとの行動 |
|---|---|---|
| A(異常なし) | 基準範囲内 | 来年も同じ時期に受ける |
| B(軽度異常) | わずかな逸脱。日常生活に支障はない | 生活を整えて次回の変化を見る |
| C(要再検査・要生活改善) | その日の値だけでは判断できない、または改善の余地がある | 指定された時期に採血などをやり直す |
| D(要精密検査・要治療) | 病気の可能性を確かめる必要がある | 医療機関で追加の検査や治療の相談をする |
| E(治療中) | すでに通院している項目 | 結果を主治医に見せる |
大切なのは、「C」や「D」がひとつでもあれば、それは結果表からのお手紙だと受け取ることです。判定の欄だけ見て封筒にしまってしまう方が少なくありませんが、あとから振り返ると、ここが分かれ道になっていることがよくあります。
血糖の欄:HbA1cと空腹時血糖はセットで見ます

糖尿病に関わる項目は、多くの健診で「空腹時血糖」と「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」の2つが並んでいます。血糖値は採血したその瞬間の値、HbA1cはおおよそ過去1〜2か月の平均を映す値で、性格がまったく違います。片方だけを見て安心したり落ち込んだりしないことが、読み方のコツです。
日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイド』では、判定の区切りが次のように示されています。
| 項目 | 正常域の目安 | 糖尿病型とされる値 |
|---|---|---|
| 空腹時血糖 | 110mg/dL未満(100〜109は正常高値) | 126mg/dL以上 |
| 随時血糖 | — | 200mg/dL以上 |
| HbA1c | — | 6.5%以上 |
ここで押さえておきたいのが、1回の結果だけでは糖尿病と確定しないという点です。血糖値とHbA1cの両方が同じ日に糖尿病型なら診断されますが、片方だけの場合は日をあらためて再検査を行います。「疑い」と書かれていた方が慌てすぎる必要はありませんし、逆に「まだ確定じゃないから」と放っておく理由にもなりません。
また、空腹時血糖が100〜109mg/dLの「正常高値」や、110〜125mg/dLの境界域は、数字としては小さな差でも、体の中では変化が始まっているサインのことがあります。数値ごとの目安はHbA1cの基準値の読み方|数値ごとの受診目安がわかるや血糖値の正常値|空腹時・食後・HbA1cで見分けるで細かく整理しています。境界域だった方は空腹時血糖の基準値と境界域で次にすべきこともあわせて読むと、次の一手が決めやすくなります。
なお、健診当日の朝に飲み物を口にしていたり、前日の夕食が遅かったりすると、空腹時血糖や中性脂肪は本来より高く出ることがあります。心当たりのある方は、次回に向けて健康診断の前日、食事は何時まで?血糖・中性脂肪の整え方を確認しておくと、より実態に近い数値が得られます。
脂質の欄:LDL・HDL・中性脂肪は3つ並べて考えます

脂質の項目は「コレステロール」とひとまとめに呼ばれがちですが、役割が異なる3つの数値です。日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』では、脂質異常症の診断基準が次のように示されています。
| 項目 | 基準(空腹時採血) | 呼び方 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| 中性脂肪(トリグリセライド) | 150mg/dL以上(随時採血では175mg/dL以上) | 高トリグリセライド血症 |
LDLは120〜139mg/dLが「境界域」とされ、この帯にいる方は他の危険因子(喫煙、高血圧、血糖の異常、家族歴など)と合わせて判断されます。同じLDL 145mg/dLでも、他に何も持っていない方と、血糖も血圧も高めの方とでは、意味合いが変わります。脂質の欄だけを切り取らず、血糖・血圧・喫煙の有無と並べて眺めてみてください。
中性脂肪は食事の影響をとても受けやすく、前夜のお酒や遅い夕食で跳ね上がることがあります。極端に高い値が出たときほど、条件を整えて測り直す価値があります。
肝機能・腎機能・尿の欄:見落としやすいけれど大事な3つ
AST・ALT・γ-GTP
肝臓の状態をみる項目です。日本肝臓学会は2023年に「奈良宣言」として、ALTが30U/Lを超えたらかかりつけ医に相談するという考え方を示しています。お酒を飲まない方でも、体重の増加とともに脂肪肝が進んで数値が上がることがあり、血糖や中性脂肪の異常と一緒に見つかるケースが多くみられます。γ-GTPは飲酒の影響を受けやすい項目ですが、それだけが原因とは限りません。
クレアチニン・eGFR
腎臓のはたらきを示す項目です。eGFR(推算糸球体濾過量)は60mL/分/1.73m²未満の状態、または尿蛋白などの異常が3か月以上続く場合に慢性腎臓病(CKD)と判断されます(日本腎臓学会)。腎臓は症状が出にくい臓器なので、自覚がなくても数字だけが先に動きます。前年と比べて下がってきていないかを見るのが有効です。
尿蛋白・尿糖
尿糖は血糖がある程度高くなると出はじめるため、「±」や「+」がついたときは血糖の欄と見比べてください。尿蛋白は腎臓からのサインで、血圧の高さと関係することもあります。
尿酸
7.0mg/dLを超える状態が高尿酸血症とされます(『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』)。痛風発作だけでなく、腎臓や生活習慣全体と関わる項目です。
血圧・BMI・腹囲:数字の意味を体感に結びつける
血圧は、診察室や健診会場での測定で140/90mmHg以上が高血圧とされます(日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2019』)。家庭で測る場合は135/85mmHg以上が目安です。健診会場では緊張で上がる方も多いので、気になった方は自宅で朝と晩に測って記録すると、実像がつかめます。
BMIは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算し、25以上が肥満と判定されます(日本肥満学会)。腹囲は特定健診において、男性85cm以上・女性90cm以上がメタボリックシンドロームの判定に用いられます(厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」)。
この欄は、結果表のなかで唯一、自分で毎日測れる項目です。採血は年に1回でも、体重と血圧は今日から追いかけられます。数字を動かす手ごたえがいちばん得やすいところでもあります。
「要再検査」と「要精密検査」は何が違うのですか
混同されやすいのですが、意図が異なります。
- 要再検査…その日の値がたまたまなのか、いつもそうなのかを確かめるため、同じ検査をもう一度受けるものです。空腹時血糖や中性脂肪、肝機能でよく指示されます。
- 要精密検査…病気の可能性を確かめるため、健診とは違う検査(詳しい血液検査、画像検査など)に進むものです。
受診の時期は結果表に記載があればそれに従いますが、記載がない場合でも、数か月単位で先延ばしにしないほうが安心です。特に血糖や血圧は、放置している間も静かに進むことがあります。詳しくは健康診断の再検査を放置するリスクと正しい受け方にまとめています。
また、結果表に出ない「体からのサイン」も、あわせて振り返ってみてください。喉が渇く原因は?水を飲んでも治らない時の受診目安、夜間頻尿の原因|水分・血糖・睡眠から整理、体重減少の原因は?ダイエットなしで痩せる時の受診目安、疲れやすい・だるいが続く|内科受診の目安といった変化が重なっているときは、数値の意味づけが変わることがあります。足の小さな傷が治りにくい(小さな傷が治らない時に考えられる原因と受診のサイン)、目がかすむ(目のかすみ 原因は疲れ目?血糖?眼科と内科の相談先)といった点も、受診時に伝えていただきたい情報です。
結果を持って相談するとき、伝えると話が早いこと
再検査や相談で医療機関に行くとき、次のものがそろっていると、限られた診察時間で踏み込んだ話ができます。
- 今年の結果表と、できれば過去2〜3年分(変化の向きが分かります)
- 健診当日の朝、何時に何を口にしたか
- 飲んでいる薬・サプリメント(お薬手帳があれば確実です)
- 直近半年の体重の増減と、生活で変わったこと(転職、夜勤、単身赴任など)
糖尿病専門医として診療にあたる初台まちのクリニックの富田恭子院長は、合併症を正しく理解したうえで「今できること」を一緒に考える方針を大切にしています。数値を責めるための時間ではなく、次の1年をどう組み立てるかを決める時間だと考えていただければ十分です。
なお、空腹での再検査は午前中が向いています。平日の日中に時間が取りにくい方は、朝早い時間帯や土曜午前に対応している医療機関を探すと続けやすくなります(初台まちのクリニックの場合、水曜は8時20分から、土曜は9時から14時まで診療しています。休診日は火曜・日曜・祝日です)。京王新線「初台駅」南口から徒歩1分という立地です。
数値が気になったとき、明日から食事でできること
再検査までの数週間、何もせずに待つ必要はありません。ただし、極端な絶食や単品ダイエットは、かえって数値を乱すことがあります。無理なく続く範囲で、次のような整え方から試してみてください。
- 食べる順番を変える…野菜・海藻・きのこ、次に肉や魚、最後にごはんやパン。同じ献立でも食後の血糖の上がり方がゆるやかになります。
- 夕食の時間を前倒しする…遅い夕食は中性脂肪や翌朝の血糖に響きます。難しい日は、夕方に軽く食べて帰宅後は主菜だけにする「分food(分けて食べる)」も一案です。
- 飲み物を見直す…甘い飲料は液体のぶん吸収が速く、量の自覚も持ちにくいものです。まず水やお茶に置き換えるところから。
- 食後10〜15分の散歩…食後すぐに体を動かすと、血糖の山がなだらかになりやすくなります。買い物や洗い物のついででかまいません。
- 体重を毎朝はかる…数値の上下より、1週間の平均が下向きか上向きかを見ます。
結果表は、成績表ではなく地図のようなものです。今どこにいるかが分かれば、進む方向は選べます。気になる欄がひとつでもあったら、そこだけでも次の1年の目標にしてみてください。