チーズを食べると血糖値は上がるのでしょうか
「チーズは血糖値を上げますか」というご質問は、当院の栄養相談でもよくいただきます。結論から申し上げると、チーズはおおむね糖質の少ない食品の仲間で、同じ量の主食や甘いものと比べれば、食後の血糖の上がり方はゆるやかな傾向があります。ただし「上がらないから自由に食べてよい」という話にはなりません。種類によって中身が違うこと、そして多くの場合チーズは単体ではなく、パンやクラッカー、お酒と一緒に口に入ることが理由です。
チーズは牛乳などの乳を原料に、乳酸菌や酵素で固めて水分(ホエイ)を抜いて作られます。牛乳の糖質である乳糖は、この工程で水分側に移ったり、発酵で分解されたりします。熟成が進むタイプほど乳糖は残りにくく、水分を多く含むタイプほど乳糖が残りやすい、というのが大まかな原則です。血糖の面で種類差が出るのは、この「乳糖がどれだけ残っているか」が中心になります。
一方でチーズは脂質とたんぱく質、そして食塩を含みます。血糖だけを見て量が増えると、体重や血圧、腎臓への負担といった別の面で不都合が出てくることがあります。血糖・体重・血圧をひとまとめに考えるのが、糖尿病や生活習慣病をお持ちの方にとっての現実的な見方です。
種類ごとの違いを、ざっくり整理する

売り場に並ぶチーズは、大きく次のように分けて考えると選びやすくなります。数値は商品ごとに幅がありますので、ここでは傾向としてご覧ください。
| タイプ | 例 | 乳糖の残り方 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|---|
| 熟成したナチュラルチーズ | チェダー、ゴーダ、パルミジャーノ、ブルー系 | ほとんど残らない傾向 | 塩味が濃いものが多い。少量で満足しやすい |
| フレッシュチーズ | モッツァレラ、カッテージ、クリームチーズ、リコッタ | 比較的残りやすい傾向 | クリームチーズは脂質が多め。カッテージはあっさり |
| プロセスチーズ | スライス、6Pタイプ、ベビーチーズ | 原料のナチュラルチーズ次第 | 乳化剤などで食塩相当量が高めの商品がある |
| 「チーズ味」の加工食品 | チーズ風味の菓子、はちみつ入り、ドライフルーツ入り | 砂糖や小麦粉が主体のものもある | チーズとは別物として考える |
熟成タイプ
かたく、削って使うようなチーズは、水分が抜けて熟成が進んだぶん乳糖がほとんど残りません。血糖の面では扱いやすいタイプです。ただし旨みが凝縮している分だけ塩味も強く、つまみとして手が止まりにくいという別の問題が出やすくなります。小皿に取り分けてから食べる、削って料理に散らす、といった使い方のほうが量を保ちやすくなります。
フレッシュタイプ
モッツァレラやカッテージチーズのように水分が多いものは、乳糖が残りやすい側に入ります。とはいえ一般的な食べる量であれば、ごはんやパンの糖質と比べれば小さい範囲です。カッテージチーズは脂質が控えめなので、サラダや野菜と合わせやすい食材です。クリームチーズは口あたりが軽く感じられても脂質が多いタイプですので、パンに厚く塗るような使い方だと量が増えやすくなります。
プロセスチーズ
ナチュラルチーズを溶かして固め直したもので、味が安定していて個包装が多く、量を区切りやすいのが利点です。ただし製造の過程で食塩相当量が高めになる商品もありますので、裏面の表示を一度見ておくと選びやすくなります。
「チーズ味」の商品は別扱い
チーズ風味のスナック、はちみつやドライフルーツを練り込んだデザート系、チーズケーキなどは、砂糖や小麦粉、でんぷんが主役の食品です。名前にチーズが付いていても、血糖への影響はチーズそのものとはまったく違います。市販のお菓子の選び方は糖尿病のおやつを市販品で選ぶとき|表示の3か所と食べる時間で扱っていますので、あわせてご覧ください。
売り場で見るのは、表示の三か所

パッケージの裏面を見るとき、チェックする場所を決めておくと迷いません。
一か所目は「種類別」です。チーズの商品には「ナチュラルチーズ」「プロセスチーズ」「乳等を主要原料とする食品」といった表示があります。最後の表記は、乳製品以外の油脂などを使った商品に付くことがあり、チーズとは組み立てが異なります。
二か所目は栄養成分表示の炭水化物(または糖質)です。チーズそのものであれば小さな数字に収まることが多く、そこから大きく外れている商品は、砂糖や果実、でんぷんが加えられていると考えられます。なお「糖質ゼロ」と「糖類ゼロ」は意味が違いますので、表示の読み分けは「糖質」と「糖類」はどう違う?食品表示の見方で確認できます。
三か所目は食塩相当量です。血圧が高めの方、腎臓の数値を指摘されている方は、糖質より先にここを見ていただきたい項目です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、食塩は目標量が定められている栄養素です。同じ棚の商品どうしで見比べると、差がはっきり出ることがあります。
脂質と塩分をどう考えるか
チーズは飽和脂肪酸を含む食品です。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では飽和脂肪酸にも目標量が示されており、とりすぎはLDLコレステロールの面で不利に働くと考えられています。血糖が上がらないからといってチーズで満腹にする食べ方は、脂質とエネルギーの面で別の負担をつくります。
実際の食卓では、チーズを「主役」ではなく「味つけ役」に置くと収まりがよくなります。たとえば、蒸した野菜に削ったチーズを少し散らす、サラダにカッテージチーズを混ぜる、という使い方です。塩気のあるチーズを使った日は、汁物やドレッシングの塩分を控えめにして全体で調整する、という考え方もできます。
いつ食べるか、何と食べるか
血糖の動きを左右するのは、チーズ単体よりも「一緒に食べるもの」であることがほとんどです。チーズトースト、ピザ、クラッカー、チーズ入りのパスタ——いずれも糖質側が主役です。この場合は、主食の量をどこまでにするかを先に決めるほうが現実的です。主食から組み立てる考え方は糖尿病のレシピを簡単に|平日の夕食、主食から決める順番にまとめています。
間食としてチーズを選ぶ場合は、個包装のものを使い、袋ごと手元に置かないことが量を保つうえで役立ちます。夕食までの間が長い日に、甘い菓子の代わりに選ぶ候補にはなりますが、これも「食べても増えない食品」ではないという点は変えられません。
お酒の席では、チーズは比較的合わせやすいおつまみです。ただし塩気が強いものはお酒が進みやすいという面もあります。飲み会での食べる順番や選び方は糖尿病の外食、選び方と食べる順番|飲み会の乗り切り方で触れています。同じ乳製品で迷われた方はヨーグルトの効果|量・タイミング・選び方がわかるもご参照ください。
「自分はどのくらいまで食べてよいか」の決め方
ここがいちばん知りたいところだと思いますが、適量は体格、活動量、腎臓や脂質の数値、飲んでいるお薬によって変わります。インターネット上の一般的な目安がそのまま当てはまるとは限りません。ご自分の場合を決めるには、普段の食事内容を一度書き出して、医師や管理栄養士と一緒に見直すのが確実です。
当院には管理栄養士が在籍しており、栄養相談を行っています(完全予約制ですので、受付スタッフにお申し出ください)。院内にグリコヘモグロビン分析装置があり、血糖値とHbA1cは院内で測定して当日の診察でお伝えできますので、「この食べ方を続けて数値がどうだったか」を近い間隔で確認しながら調整していけます。診療は月・木は夕方18時15分まで、土曜も14時まで行っていますので、平日の日中に時間を取りにくい方もご相談ください(診療対象は15歳以上の方です)。
なお、体重の面が気になる方には肥満症外来を設けており、BMI25以上の方を対象に診察しています。BMI23以上25未満の方もご相談いただけます。
受診を考えたほうがよい場面
食べ方を整えているのに体重が増え続けるとき、健診で血糖や脂質、腎機能の項目を指摘されたとき、のどの渇きや尿の量の変化など気になる症状が出てきて、様子を見ても変わらないときは、自己流で調整を続けるより一度検査を受けたほうが判断しやすくなります。糖尿病は初期に症状が乏しく、食事の工夫だけでは追いつかない段階に入っていることもあります。当院では、いまの数値を確かめたうえで、今日から手をつけられることを一緒に考えています。