トマトの栄養は「色」と「水分」に手がかりがあります
トマトは一年を通して手に入りやすく、切るだけで一品になる野菜です。「体にいいと聞くけれど、何がどう良いのかはよく知らない」という声を、当院の栄養相談でもよくいただきます。
トマトの栄養を考えるときは、あの赤い色と、みずみずしい水分にヒントがあります。赤い色のもとになる成分、水分と一緒に含まれるミネラル、皮や種のまわりにある食物繊維。この三つを押さえると、生で食べるか加熱するか、加工品を選ぶかという判断がしやすくなります。
なお、ここでお伝えするのは食品としての一般的な性質です。特定の病気を治したり予防したりする働きを保証するものではありませんので、その前提でお読みください。
トマトに含まれる主な栄養素と、体の中での働き
トマトの成分については、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」に品種や調理法ごとの値が収載されています。ここでは数値ではなく、どんな成分が何のために働いているかを整理します。
| 成分 | どこに多いか | 体の中での役割 |
|---|---|---|
| リコピン(カロテノイドの一種) | 赤く熟した果肉・皮 | 赤い色素であり、体内で酸化を受けにくくする性質をもつ成分として研究されています |
| カリウム | 果肉の水分とともに全体に | 体内のナトリウム(食塩の成分)の排出に関わるミネラルです |
| 食物繊維 | 皮・種のまわり | 胃腸の中で消化されずに進み、便のかさや腸内環境に関わります |
| ビタミンC | 果肉全体(水に溶けやすい) | 皮膚や血管を構成するコラーゲンの生成に必要な栄養素です |
| グルタミン酸などのうま味成分 | 熟した果肉・種のまわりのゼリー状の部分 | だしのようなうま味として感じられ、味つけの助けになります |
「リコピンが多いから健康になる」とは言えません
リコピンは研究が多い成分ですが、トマトを食べた人の血圧や血糖が必ず良くなる、という意味ではありません。食品はひとつの成分だけで働くものではなく、食事全体と生活の組み立てのなかで位置づけるものです。トマトは「野菜の量を増やしやすく、うま味で味つけを控えやすい食材」と考えるほうが実際に役立ちます。
うま味は減塩の助けになります
熟したトマトのうま味は、塩やしょうゆを足さなくても味がまとまりやすいという性質があります。スープや炒め物にトマトを入れておくと、味つけの調味料を増やさずに済む献立になりやすく、結果として食塩の量を抑えやすくなります(好みの味の濃さには個人差がありますので、ご自身の舌に合う範囲で調整してください)。
生で食べるか、加熱するかで変わる点

「トマトは加熱したほうがいい」と聞いたことがある方もいると思います。どちらが正しいというより、成分の性質が違うだけです。
| 生(サラダ・そのまま) | 加熱(スープ・炒め物・煮込み) | |
|---|---|---|
| ビタミンC | 水に溶けやすく熱に弱い性質があるため、生のほうが損失が少ない | 煮汁に溶け出す。スープごと食べれば汁に移った分もとれる |
| リコピン | 細胞の中に閉じ込められた状態 | 加熱で細胞がこわれ、油と一緒だと吸収されやすいと考えられている |
| 食べられる量 | かさがあり、量が増えると食べにくい | 体積が減るため、結果的に多く食べやすい |
| 使いやすさ | 切るだけ。忙しい日に向く | 作り置きしやすく、主菜の味つけに使える |
まとめると、生と加熱は対立するものではなく、役割が違います。朝はそのまま、夜は加熱して主菜に混ぜる、という使い分けで構いません。油と一緒に加熱するとリコピンは吸収されやすい形になりますが、油を足せば足すほど良いという話ではないので、炒め油の量は普段どおりで十分です。
トマトジュース・缶詰・ケチャップの見分け方

加工品はとても便利ですが、トマト以外に何が入っているかで位置づけが変わります。買う前に確認したいのは、原材料名と栄養成分表示の二か所です。
トマトジュース
原材料名を見て、トマトだけのものか、食塩が加えられているものかを確かめます。パッケージに「食塩無添加」と書かれているものは、食塩を足していない製品です。血圧が気になる方は、まず食塩無添加を選ぶところから始めると選択がぶれません。
トマト缶(ホール・カット)
多くはトマトとトマトジュースのみで、調味されていないものが中心です。煮込みやスープの土台に使いやすく、生のトマトを切る手間が省けます。味つきの「トマトソース」と表示された製品は、食塩や砂糖、油が加わっていることがあるので、原材料名で区別します。
ケチャップ・トマトソース
ケチャップは砂糖と食塩、酢などで調味された調味料です。野菜の一皿としてではなく、しょうゆやソースと同じ「味つけに使うもの」として数えるのが自然です。表示の見方に迷うときは、「糖質」と「糖類」はどう違う?食品表示の見方も参考にしてください。
ドライトマト
水分が抜けているため、うま味が濃く、少量で味の輪郭がはっきりします。同じ重さで比べると成分が濃縮されている点、油漬けの製品は油も一緒にとることになる点を頭に置いて使うと、使い過ぎを避けられます。
血糖が気になる人のトマトの取り入れ方
トマトは水分が多く、主食やいも類と比べると糖質が少ない野菜です。とはいえ「トマトを食べれば血糖が下がる」というものではありません。実際に役立つのは、次のような使い方です。
食事の最初に野菜を置く役として使う
食べる順番を野菜から始めると、同じ献立でも食後の血糖の上がり方が穏やかになりやすいと考えられています(個人差があり、上がり方は食事の内容や活動量でも変わります)。トマトは洗って切るだけで一皿になるため、この「最初の一皿」を続けやすい食材です。順番の考え方は食物繊維が多い食べ物、血糖と便通で選び方が変わりますでも取り上げています。
フルーツトマトは「甘い」ことを覚えておく
高糖度をうたうトマトは、その名のとおり糖度が高くなるよう育てられたものです。デザート代わりに食べる量が増えると、糖質としての量も増えます。おいしい品種を楽しむのは構いませんが、「野菜だからいくらでも」とは考えないほうが安全です。GI値の扱い方については低GI 食品 一覧|血糖が気になる人の見方と落とし穴でまとめています。
ジュースは「飲み物」として数える
トマトジュースは野菜の代わりになりそうに見えますが、液体はかまずに飲めるため短時間で量が入ります。食事に添える一杯として位置づけ、水やお茶の代わりに何杯も飲む形にはしないほうが組み立てが崩れません。
外食・コンビニでも同じ考え方で選べます
ミニトマト入りのサラダ、トマトベースのスープ、無塩のトマトジュース。外で食べるときも「最初に野菜」「味つけは足しすぎない」という二点は変わりません。外食の選び方は糖尿病の外食、選び方と食べる順番|飲み会の乗り切り方にまとめています。
血圧・腎臓が気になる人が確認したい点
トマトはカリウムを含む野菜です。カリウムは体内のナトリウムの排出に関わるため、食塩を控えたい方にとっては意味のある成分です。一方で、腎機能が低下している方や、カリウムを上げる作用のあるお薬を使っている方は、カリウムを控えるよう指導されている場合があります。
つまり、同じ食材でも「増やしたい人」と「控えたい人」がいます。ご自身がどちらなのかは、血液検査の結果と処方内容を見ないと判断できません。健診や通院でカリウムや腎機能について指摘を受けたことがある方は、自己判断でトマトやトマトジュースを増やす前に、主治医か管理栄養士に確認してください。考え方の整理はカリウムが多い食べ物|増やす人と控える人の違いで説明しています。
また、トマト料理は調味料でおいしくなるぶん、食塩が増えやすい面もあります。ケチャップ、ドレッシング、トマト鍋のスープ、味つきのトマトジュース。トマトそのものではなく、一緒に入るものが積み上がっていないかを見直すと、改善できる余地が見つかることがあります。
食事を工夫しても数値が動かないとき
野菜を増やし、食塩を意識しても、血糖や血圧の数値が思ったように動かないことはあります。食事は要因のひとつで、体重、運動量、睡眠、お薬、そして体質も関わるためです。数値が横ばいのまま、あるいは少しずつ悪くなっていくときは、食事のがんばりを増やす前に、いまの体の状態を検査で確かめたほうが方針を立てやすくなります。
当院では血糖値とHbA1cの迅速検査を院内で行っており、受診したその日に結果を見ながら相談できます。院内にはグリコヘモグロビン分析装置、小型尿分析装置、電極式電解質分析装置、血圧脈波検査装置・心電図を備えています。また管理栄養士が在籍し、栄養相談室で栄養相談を行っています(完全予約制ですので、受付スタッフへお申し出ください)。「トマトはどれくらい食べていいのか」「ジュースは飲んでよいのか」といった具体的な疑問は、検査結果とお薬の内容を見ながらのほうが答えを出しやすい種類の質問です。
診療時間は月・木が9:00〜12:30と14:15〜18:15、水が8:20〜12:30と13:15〜15:00、金が9:00〜12:30と13:15〜17:30、土は9:00〜14:00(午後なし)で、火曜・日曜・祝日は休診です。受付終了時間は診療終了時間と同じで、診療終了より早く受付を締め切ることはありません。診療対象は15歳以上(高校生以上)です。金曜日は非常勤医師が対応します。