低GIとは、そもそも何を表している数字なのか
GI(グリセミック・インデックス)は、ある食品を食べたあとの血糖の上がり方を、基準食(ブドウ糖など)と比べて数値化したものです。国際的なGI値表としてまとめられているAtkinson FSらの「International Tables of Glycemic Index and Glycemic Load Values 2021」(Diabetes Care誌, 2021年)では、55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類しています。この記事で「低GI」と書いているのは、この分類にあたる食品のことです。
ここで押さえておきたいのは、GIは同じ量の糖質を食べたときの比較だという点です。糖質をほとんど含まない食品(肉・魚・卵・葉物野菜など)は、そもそもGIを測る前提から外れます。「低GIだから血糖に良い食品」「高GIだから悪い食品」という善悪の表ではなく、糖質を含む食品同士を並べたときの、上がり方のクセを示す目安と考えると読み違えにくくなります。
また日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」では、食事療法の基本として総エネルギー摂取量の適正化と栄養素のバランスが挙げられています。GIは食べ方を工夫するための一つの視点であって、それだけで食事療法が完結するものではない、という位置づけです。
低GI・中GI・高GIに分かれやすい食品の一覧

前述の国際的なGI値表で、おおむねどの分類に入りやすいかを食品グループごとに整理しました。数値そのものは調査によって幅があるため、ここでは個別の数値ではなく傾向で示します。
| 分類 | 主食になるもの | 主食以外 |
|---|---|---|
| 低GIに入りやすい | 大麦(もち麦・押麦)、全粒粉パン、ライ麦パン、そば粉の割合が高いそば、かためにゆでたパスタ | 大豆・大豆製品、レンズ豆やひよこ豆などの豆類、牛乳・ヨーグルト、りんご・みかん・いちご・キウイなど |
| 中GIに入りやすい | 玄米、雑穀を混ぜたごはん、うどん、そうめん | さつまいも、バナナ、パイナップル、とうもろこし |
| 高GIに入りやすい | 精白米、もち米・もち、食パン、フランスパン、コーンフレーク | じゃがいも(特につぶしたもの)、せんべい、精製した小麦粉と砂糖が中心の菓子類 |
| GIの対象になりにくい | ― | 肉・魚・卵・チーズ、葉物野菜、きのこ、海藻(糖質が少なく、GIで比べる意味が小さい) |
一覧を眺めると、低GI側には「粒のまま」「皮や外側の層が残っている」「豆や乳製品」という共通点があります。逆に高GI側は、細かく砕かれている・でんぷんが糊状になるまで加熱されている・水分を多く含んで消化されやすい、という特徴が並びます。一覧を丸暗記するより、この傾向を覚えるほうが応用がききます。
主食の置き換えを考えるときは、当院のコラム「もち麦の効果|血糖・食物繊維と続け方がわかる」もあわせてご覧ください。
同じ食品でもGI値は変わる|一覧をそのまま信じない

GI値の資料を見比べると、同じ食品なのに数値が違うことがあります。測定に使われた品種や産地、調理法、対象者が異なるためです。次の要素で変わりやすいことを知っておくと、一覧の読み方が変わります。
加工の細かさ
同じ小麦でも、粒のまま→押しつぶす→粉にする、と細かくなるほど消化・吸収は速くなります。全粒粉と表示があっても、細かく製粉されていれば上がり方は変わります。
加熱時間と水分
パスタはかためにゆでたときと、やわらかくゆでたときで数値が変わることが知られています。おかゆやマッシュポテトのように、水分を含んでやわらかくなった状態は消化が進みやすい形です。
冷めているかどうか
炊いたごはんやゆでたじゃがいもを冷やすと、でんぷんの一部が消化されにくい形(レジスタントスターチ)に変化します。冷ごはんや冷製のいも料理は、温かいときと同じ食品でも振る舞いが変わります(変化の程度には食品差・個人差があります)。
熟しぐあい
果物は熟すほど糖の組成が変わり、上がり方も変わります。青いバナナと完熟バナナが同じ扱いにならないのはこのためです。
一緒に食べるもの
食物繊維・たんぱく質・脂質を含むおかずと一緒に食べると、胃から腸へ食べ物が送られる速度が変わります。白いごはん単体と、汁物・野菜・主菜をそろえた定食とでは、同じごはんでも食後の血糖の動き方は同じになりません。食物繊維が多い食べ物、血糖と便通で選び方が変わりますもあわせて参考にしてください。
GI値だけで選ぶと外しやすい3つの落とし穴
1. 量の視点が抜ける
GIは「同じ量の糖質を食べたとき」の比較なので、たくさん食べれば当然その分の糖質が入ります。この点を補うために、実際に食べる量まで含めて計算する指標(グリセミック・ロード)が前述の国際的なGI値表に併記されています。低GIだから何杯でもよい、という読み方にはならないということです。
2. 脂質が多い食品も低GIになりうる
脂質が多いと胃の内容物が送り出される速度が落ち、その分だけ血糖の立ち上がりはゆるやかになります。結果として、菓子やスナックでもGIが低めに出るものがあります。GIが低いこととエネルギー量が少ないことは、別の話です。
3. 個人差と「その日の条件」が反映されない
同じものを食べても、食べる速さ、前の食事からの間隔、睡眠、運動、服用している薬によって食後の値は変わります。一覧はあくまで平均的な傾向であり、自分の体での動きをそのまま表したものではありません。
血糖が気になる人の、現実的な使い方
主食を一段ずらす
全部を低GI食品に入れ替えるのではなく、毎日食べる主食を一段ずらすところから始めると続けやすくなります。白米に大麦を混ぜる、食パンをライ麦入りに替える、パスタはかためにゆでる、といった小さな置き換えです。
組み合わせで整える
主食だけの食事(麺だけ、おにぎりだけ)を、汁物・野菜・たんぱく質のおかずがそろう形に近づけます。前の章のとおり、同じ主食でも一緒に食べるものによって条件が変わるためです。
朝食を抜かない
食物繊維を含む朝食をとった場合、昼食後の血糖の上がり方が穏やかだったという報告があります(Jenkins DJAら, Am J Clin Nutr, 1982年。セカンドミール効果と呼ばれます)。朝を抜いて昼にまとめて食べる形は、この点では不利に働きます(反応には個人差があります)。
間食や飲み物も同じ物差しで見る
飲み物は液体である分、吸収の条件が固形物と異なります。乳製品や果物を選ぶときの考え方は「ヨーグルトの効果|量・タイミング・選び方がわかる」「甘酒の効果と飲み方|血糖値が気になる人へ」でも取り上げています。
市販品の「低GI」表示はどう見ればよいか
パッケージに低GIとうたわれている商品もありますが、GI値の測定条件は商品ごとに異なり、日本では表示の統一された基準が定められているわけではありません。表示を見るときは、原材料名の並び(先頭に何がきているか)と、栄養成分表示の炭水化物・食物繊維の欄を確認するほうが手がかりになります。原材料の先頭が精製された穀物や砂糖で、食物繊維の記載がごく少ない場合、「低GI」という言葉だけで判断するのは早いということです。
食事の工夫だけで様子を見ないほうがよい場面
低GI食品の活用は、あくまで食べ方の工夫です。次のような場合は、食事の見直しを続けながら、並行して医療機関で数値を確認することをおすすめします。
- 健康診断で血糖値やHbA1cの値を指摘されたまま、受診していない
- のどの渇き、尿の回数の増加、体重が思い当たる理由なく減る、といった変化が続いている
- 食事を見直しても、次の健診で数値が改善していない、あるいは悪化している
- 家族に糖尿病の方がおり、自分の現在地を知りたい
数値の見方そのものを知りたい方は「血糖値の正常値|空腹時・食後・HbA1cで見分ける」「HbA1cの基準値の読み方|数値ごとの受診目安がわかる」もご覧ください。
当院(初台まちのクリニック)では、院内のグリコヘモグロビン分析装置で血糖値・HbA1cの迅速検査を行っており、その日の診察のなかで結果をお伝えしています。また管理栄養士が在籍し、栄養相談室で栄養相談を行っています(完全予約制ですので、受付スタッフにお申し出ください)。「一覧のどれを自分の食卓に取り入れるか」は、ふだんの食事内容と生活リズムによって答えが変わります。実際の一週間の食べ方を見ながら一緒に決めていくほうが、無理のない形に落ち着きやすいところです。診療は月・木9:00〜18:15、水8:20〜15:00、金9:00〜17:30、土9:00〜14:00(火・日・祝は休診)で、受付終了は診療終了と同じ時刻です。診療対象は15歳以上(高校生以上)となっています。