間食をやめられないのは、意志が弱いからではありません
「甘いものはよくないと分かっているのに、夕方になるとどうしても手が出てしまう」。当院の診察室でも、糖尿病や血糖値の指摘を受けた方から本当によく聞くお話です。
まずお伝えしたいのは、間食そのものが常に悪者というわけではない、ということです。昼食から夕食まで時間が空きすぎると、強い空腹のまま夕食に向かい、結果として食べる速さも量も増えやすくなります。おやつを完全に禁止した結果、夕食が大きく崩れてしまう方もいらっしゃいます。
大事なのは「やめる/やめない」の二択ではなく、何を、どれくらい、いつ食べるかを自分で決められるようになることです。この記事では、コンビニやスーパーで売られている市販品を前提に、パッケージのどこを見れば判断できるのかを整理していきます。なお、具体的な商品名や、お一人おひとりに合わせた分量の数値はここでは扱いません。必要な量は体格・活動量・お薬の内容によって変わるため、主治医や管理栄養士と決めていただくのが確実です。
まず見るのは「栄養成分表示」の3か所

市販のおやつには、法律に基づいて栄養成分表示が付いています。ここを見る習慣がつくと、売り場での判断がぐっと具体的になります。見る順番を決めておくと迷いにくくなります。
1. 「1袋あたり」か「100gあたり」か
最初に確認したいのは、表示されている数値が何を単位にしているかです。「100gあたり」で書かれている商品を「1袋分の数字」だと思い込んでしまうと、実際に食べる量と表示のズレが大きくなります。袋の内容量と見比べて、自分が食べる分に換算して考えるくせをつけてください。「1個あたり」「1本あたり」と書かれているものは、そのまま読めるので扱いやすい表示です。
2. 炭水化物(糖質と食物繊維)
血糖の上がり方に直接関わるのは、主に糖質です。表示では「炭水化物」とだけ書かれている場合と、「糖質」「食物繊維」に分けて書かれている場合があります。分けて書かれているものは、食物繊維がどれくらい含まれているかが見えるので判断しやすくなります。
ここで混同しやすいのが「糖類ゼロ」という表示です。糖類は糖質の一部で、砂糖やぶどう糖などを指します。ですから「糖類ゼロ」でも、でんぷんや糖アルコールなど他の糖質が含まれていることがあります。この違いについては当院のコラム「「糖質」と「糖類」はどう違う?食品表示の見方」で詳しく書いていますので、あわせてご覧ください。
3. 脂質とエネルギー
糖質だけに目を向けると、脂質の多い菓子が見落とされます。糖質が控えめでも脂質が多ければエネルギーは高くなりますし、体重が増えれば血糖のコントロールにも影響します。糖質・脂質・エネルギーの3つをセットで見ることをおすすめします。
売り場で使える、おやつの見分け方

表示を細かく読む時間がないときのために、ざっくりした見当の付け方も知っておくと役に立ちます。
| 着目点 | 選びやすいもの | 量やタイミングに気をつけたいもの |
|---|---|---|
| 形状 | 1個ずつ包装されている、小分けになっている | 大袋で、開けたら口が閉じにくいもの |
| 主な材料 | ナッツ、乳製品、豆、寒天やこんにゃく、果物そのもの | 砂糖と小麦粉と油が主体の焼き菓子、砂糖入りの飲みもの |
| 食物繊維 | 表示に食物繊維が記載されている | 炭水化物のみの表示で、繊維源が想像しにくい |
| 飲みもの | 無糖のお茶・水・ブラックコーヒー | 甘い清涼飲料、加糖のコーヒー飲料 |
特に気をつけたいのが液体の糖質です。噛まずに飲み込める分、量の感覚がつかみにくく、満足感も残りにくい傾向があります。おやつを見直すとき、まず飲みものから無糖に替えるだけでも、日々の糖質の入り方は変わってきます。
また、「大袋を買って少しだけ食べる」は、多くの方にとって難しい方法です。小分け包装のものを選ぶ、あるいは買った日に食べる分だけ小皿に出して袋はしまう、という手順にしておくほうが現実的です。
「糖質オフ」「ロカボ」表示はどう受け止めるか
糖質を抑えたと謳う菓子は年々増えています。選択肢が増えるのはよいことですが、次の点は押さえておいてください。
ひとつは、ゼロではないということです。食品表示基準では、一定の基準を下回れば「糖質ゼロ」と表示できる決まりになっており、まったく含まれないという意味ではありません。複数個食べれば、その分は積み上がります。
もうひとつは、糖アルコールや甘味料を使った製品では、体質によってお腹がゆるくなることがある点です。これは商品の良し悪しではなく、合う・合わないの問題です。
そして最も見落とされやすいのが、「糖質オフだから」と食べる量そのものが増えてしまうことです。表示は量を決めるための材料であって、量を増やす許可証ではありません。ここを切り分けて考えられると、糖質オフ食品は使いやすい味方になります。
いつ食べるか──タイミングの考え方
同じものを食べても、タイミングによって体への入り方は変わります。決め方の目安を挙げておきます。
食後すぐより、食事と食事のあいだ
食後のデザートは、食事の糖質におやつの糖質が上乗せされる形になります。一方、昼食から夕食までが長く空く日は、その途中に少量をはさむほうが、夕食前の強い空腹を避けやすくなります(空腹の感じ方には個人差があります)。
夜遅い時間は避けたい
就寝前は活動量が少なく、食べたものが使われにくい時間帯です。夜にどうしても口さみしくなる方は、まず無糖の温かい飲みものを試してから、それでも食べるかどうかを決める、という順番にしてみてください。
お薬を使っている方は必ず主治医へ
インスリンや、血糖を下げる作用の強いお薬を使っている方では、間食のとり方が低血糖・高血糖の両方に関わります。「おやつを減らす」という判断も、自己判断で急に行うと危ない場合があります。お薬の内容によって答えが変わるところなので、必ず主治医にご相談ください。
おやつを「食事の一部」として組み立てる
間食を単なる嗜好品ではなく、その日の食事全体の一部として考えると、選び方が変わってきます。
たとえば、朝食でたんぱく質が少なかった日は乳製品や豆製品を、野菜が不足している日は果物や海藻・こんにゃく系を、といった具合に、足りていないものを補う枠としておやつを使う方法があります。食物繊維を意識したい方は「食物繊維が多い食べ物、血糖と便通で選び方が変わります」、乳製品の選び方は「ヨーグルトの効果|量・タイミング・選び方がわかる」も参考になさってください。
また、「低GI」という言葉を手がかりにされる方もいらっしゃいますが、GI値は調理法や一緒に食べるものによって変わり、数値だけで選ぶと外すことがあります。考え方と注意点は「低GI 食品 一覧|血糖が気になる人の見方と落とし穴」にまとめています。
続けるための、ちいさな仕組み
おやつの見直しは、意志の力より仕組みで支えるほうがうまくいきやすいところです。
- 買い置きは「食べたい量」ではなく「食べてよいと決めた量」で買う
- 空腹の状態で買い物に行かない
- 職場のデスクには、無糖の飲みものだけを置く
- 食べたものを記録する(写真を撮るだけでも構いません)
記録は、我慢のためではなく、ご自身のパターンを知るために行うものです。「疲れた日に甘いものが増える」「会議のあとに手が伸びる」といった傾向が見えると、対策の立てどころが決まります。
自分に合う量が分からないときは
ここまで選び方を書いてきましたが、「では自分は具体的にどれくらいならよいのか」は、体格・活動量・検査値・お薬の内容によって一人ひとり違います。インターネット上の一般的な数字をそのまま当てはめると、多すぎたり、逆に厳しくしすぎて続かなかったりします。
当院には管理栄養士が在籍しており、院内の栄養相談室で栄養相談を行っています。完全予約制ですので、ご希望の方は受付スタッフへお申し出ください。普段召し上がっているおやつのパッケージを持参していただくか、写真を撮ってきていただくと、表示を一緒に見ながら具体的にお話しできます。
また当院では、血糖値・HbA1cの迅速検査を院内で行っています。診察の日にその場で結果を見ながら、食べ方の話に進められる体制です。健康診断で血糖値やHbA1cを指摘されたものの、そのままになっているという方も、一度ご相談いただければと思います。診療は月・水・木・金と土曜(午前中心)で、受付終了時間は診療終了時間と同じです。診療対象は15歳以上(高校生以上)となっています。
おやつをどう扱うかは、糖尿病の治療のなかでも、ご自身で選べる余地が大きいところです。全部やめる必要はありません。表示の見方をひとつ覚えるところから、始めてみてください。