甘酒は体にいいの?まず知っておきたいこと
「甘酒は飲む点滴」と紹介されることが増え、毎日飲んでもよいのか迷って調べる方が多いようです。当院の栄養相談でも、健診で血糖値やHbA1cを指摘された方から「甘酒はやめたほうがいいですか」と質問をいただくことがあります。
結論からお伝えすると、甘酒そのものが体に悪い飲み物というわけではありません。ただし、種類によって中身がまったく違い、飲む量とタイミングによって血糖値への影響も変わります。「体にいいと聞いたから毎日たくさん」という飲み方が、いちばん気をつけたいところです。
甘酒は食品であって薬ではありませんので、特定の病気を治したり予防したりする効果をお約束できるものではありません。ここでは、成分の特徴と、飲み方をご自身で決めるための考え方を整理していきます。
米麹甘酒と酒粕甘酒の違い

甘酒には大きく分けて二種類あります。同じ「甘酒」という名前でも、原料も味の付き方も、アルコールの有無も違います。まずはご自宅にある甘酒がどちらなのか、原材料表示を確認してみてください。
| 米麹甘酒 | 酒粕甘酒 | |
|---|---|---|
| 原料 | 米と米麹 | 酒粕(日本酒を搾った後の粕)+砂糖 |
| 甘さの由来 | 麹の酵素が米のでんぷんを分解してできる糖 | 加える砂糖 |
| アルコール | 基本的に含まない | 製品によって微量に含まれることがある |
| 主な成分の特徴 | ぶどう糖、オリゴ糖、アミノ酸など | たんぱく質、食物繊維、酒粕由来の成分など |
ここで大事なのは、米麹甘酒は砂糖を加えていなくても甘いという点です。「砂糖不使用」と書かれていると糖質が少ないように感じますが、甘さのもとは米のでんぷんが分解されてできた糖ですので、糖質としては体に入ってきます。砂糖不使用=糖質が少ない、ではないことを覚えておいてください。
一方の酒粕甘酒は、甘みをつけるために砂糖を加えているものがほとんどです。こちらも当然、加えた分の糖質が入ります。さらに微量ながらアルコールを含むことがありますので、運転前、妊娠中・授乳中の方、お酒に弱い方、アルコールを控えるよう医師から言われている方は、表示を確認してから選んでください。
甘酒に期待されている働きと、期待しすぎないほうがよいこと
甘酒には、米や麹に由来するぶどう糖、オリゴ糖、アミノ酸、ビタミンB群などが含まれています。「飲む点滴」と呼ばれるのは、こうした成分が含まれていることに由来する表現で、点滴と同じ働きをするという意味ではありません。
食品としての位置づけで考える
甘酒は、エネルギーになる糖と、発酵によって生じたさまざまな成分をあわせて摂れる飲み物です。食欲がないときや、暑い時期に食事量が落ちたときに、水分と一緒にエネルギーを補う一手として役立つ場面はあります。
ただし、「毎日飲めば痩せる」「血糖値が下がる」「腸がよくなる」といった効果を確約するものではありません。特定の食品ひとつで体の状態が変わるという説明が出てきたら、いったん立ち止まって考えていただきたいところです。体の調子は、日々の食事全体、運動、睡眠、体重、お薬など、複数の要素の積み重ねで決まります。
「健康にいい」と思うほど飲みすぎやすい
甘酒に限らず、体によいと聞いた食品は量の歯止めが効きにくくなります。当院の栄養相談でも、単品の良し悪しよりも「一日の全体量のなかでどう位置づけるか」をご一緒に考えることが多いです。甘酒も、水やお茶の代わりではなく、間食やデザートに近い位置づけで考えるとバランスを取りやすくなります。
血糖値やHbA1cが気になる方が注意する点
健診で血糖値やHbA1cを指摘されている方、糖尿病で通院中の方は、甘酒を「甘い飲み物のひとつ」として扱ってください。理由は、甘酒の甘みの中心がぶどう糖であることです。ぶどう糖は消化の過程を経ずにそのまま吸収されますので、飲んだあとの血糖の上がり方は比較的早くなりやすいと考えられます。
気をつけたい飲み方
- のどが渇いたときの水分補給として、水やお茶の代わりに飲む
- 空腹のまま、まず甘酒だけを飲む
- 食事はそのままで、甘酒を追加で足す
- 寝る前に習慣として飲む
取り入れやすい飲み方
- 飲む量をあらかじめ決めて、そのぶんは飲みきりサイズにする
- 甘い飲み物やお菓子と重ねず、そのどちらかの代わりにする
- 食事や、たんぱく質を含む食品と一緒にとる
- 日中の活動する時間帯に回す
低血糖を起こしたときの対処に甘酒を使ってよいか、という質問もいただきますが、低血糖時の対応は治療内容によって指示が異なります。自己判断で決めず、必ず主治医の指示に従ってください。
また、糖尿病の治療中に食事内容を変えるときは、お薬との兼ね合いも関わってきます。判断に迷う場合は、次の受診のときに「甘酒を飲んでいます」とお伝えください。血糖の数値の見方については、当院のコラム「血糖値の正常値|空腹時・食後・HbA1cで見分ける」もあわせてご覧いただけます。
毎日飲んでよいのかを、自分で判断する手順

「毎日飲んでいいですか」に一律の答えはありませんが、ご自身で判断するための順番はあります。次の四つを順に確認してみてください。
1. どちらの甘酒かを確認する
原材料表示を見て、米麹タイプか酒粕タイプかを確認します。酒粕タイプはアルコールの有無も確認しましょう。
2. 一日の甘いものの枠に入れる
甘酒を飲む日は、そのぶん菓子や甘い飲み物を控える。この入れ替えができるなら、毎日飲むことがただちに問題になるとは限りません。逆に、これまでの間食に上乗せする形になるなら、頻度を落とすほうが無難です。
3. 体重の変化を見る
習慣を変えたら、体重を週に一度でも記録してください。数か月単位で増加傾向が出ていれば、量か頻度を見直す合図になります。
4. 次の健診・受診の数値で答え合わせをする
体感ではなく数値で確認するのがいちばん確実です。血糖値やHbA1cの推移を見て、飲み方を続けるか調整するかを決めます。健診結果の読み方は「健康診断の結果の見方|血糖・脂質・肝機能を読み解く」で整理しています。
甘酒を料理に取り入れる工夫
甘酒は飲む以外の使い道もあります。飲む量が増えてしまいがちな方には、調味料として使う方法をおすすめしています。
- 砂糖やみりんの一部を置き換える:煮物やたれに使うと、まろやかな甘さがつきます。置き換えであれば、甘味の総量が増えにくくなります。
- 肉や魚の下漬けに使う:麹の働きでしっとりした仕上がりになります。焼く前に表面を軽くぬぐうと焦げにくくなります。
- 無糖ヨーグルトや豆乳に少量あわせる:甘みづけとして少量使い、たんぱく質と一緒にとる形にします。
- ドレッシングの甘み役にする:酢や油、しょうゆとあわせると、野菜がとりやすくなります。
いずれの場合も、砂糖やみりんに「足す」のではなく「置き換える」ことがポイントです。野菜を手軽に増やしたい方は「冷凍野菜って栄養はあるの?おいしく上手に活用するコツ」も参考になさってください。
甘酒を控えたほうがよい場合
次のような方は、飲む前に主治医や薬剤師にご相談ください。
- 糖尿病で治療中の方(お薬の内容によって、食事の変更が血糖に影響することがあります)
- 腎臓の働きが低下していて、カリウムやたんぱく質の摂取量に指示が出ている方
- アルコールを控えるよう指示されている方、妊娠中・授乳中の方、車の運転前(酒粕甘酒の場合)
- 体重を減らす方針で治療を進めている方
カリウムの調整については「カリウムが多い食べ物|増やす人と控える人の違い」で、増やす人と控える人の違いをまとめています。
迷ったときの相談先
甘酒に限らず、「これは食べてよいのか」という悩みは、一般論だけでは答えが出しにくいものです。今の体重、血糖の状態、お薬の内容、そして生活リズムによって、ちょうどよい落としどころが変わるからです。
当院には管理栄養士が在籍しており、院内の栄養相談室で栄養相談を行っています。完全予約制ですので、ご希望の方は受付スタッフにお申し出ください。日々の食事の中で何をどう入れ替えるかを、実際の食生活にあわせてご一緒に考えます。
また、当院では血糖値・HbA1cの迅速検査を院内で行っています。健診で指摘を受けたけれど数値の意味がよく分からない、という段階でも構いません。当院の診療は月・木は18時15分まで、土曜は14時まで(午後の診療はありません)で、受付終了時間は診療終了時間と同じです。火曜・日曜・祝日は休診となります。仕事帰りや週末に相談したい方はご都合にあわせてお越しください。なお、金曜日は非常勤医師が対応いたします。
甘酒は、量とタイミングを決めて楽しめば、日々の食卓を豊かにしてくれる食品です。「体にいいから飲む」ではなく、「どこに入れるか決めて飲む」。この切り替えができれば、無理なく付き合っていけるはずです。