「野菜ジュースなら血糖値は上がらない」と言えるのでしょうか
健診で血糖値やHbA1cを指摘されたあと、「野菜が足りないから野菜ジュースで補おう」と考える方はとても多いです。当院の栄養相談でも、朝食代わりに毎日1本飲んでいます、というお話をよく伺います。
結論からお伝えすると、野菜ジュースは「野菜だから血糖値に影響しない飲みもの」ではありません。液体になった時点で、野菜をそのまま食べるときとは体の中での扱われ方が変わります。ただし、すべての野菜ジュースが同じというわけでもありません。果汁が入っているか、食物繊維がどれくらい残っているか、何と一緒に、いつ飲むかによって、事情はかなり変わります。
この記事では、野菜そのものとの違いを整理したうえで、お店の棚の前で「これはどちらのタイプか」を自分で見分けられるように、ラベルのどこを見ればよいかまでをお話しします。
野菜ジュースと野菜そのもので、何が違うのでしょうか
噛む工程がなくなる
生の野菜を食べるときは、噛んで細かくし、胃で時間をかけて送り出します。ジュースはこの工程がありません。同じ材料でも、液体は胃から小腸へ移るのが速く、含まれる糖が吸収されるまでの時間も短くなりやすい、という違いがあります。
食物繊維が減っていることがある
野菜の食物繊維のうち、水に溶けにくい不溶性食物繊維は、搾汁の工程で取り除かれる場合があります。裏ごしタイプやピューレを戻したタイプでは繊維がある程度残っていますが、透明に近いクリアなジュースでは、ほとんど残っていないこともあります。食物繊維そのものの考え方は、当院のコラム食物繊維が多い食べ物、血糖と便通で選び方が変わりますでも扱っています。
量が「飲めてしまう」
トマトやにんじんを何本分も一度に食べるのは大変ですが、ジュースなら数分で飲み切れます。野菜に含まれる糖は多くありませんが、濃縮されたうえに量が進みやすいという点は、固形の野菜とは違うところです。
栄養素すべてが同じように残るわけではない
一方で、野菜ジュースが役に立たないという話ではありません。トマトのリコピンやにんじんのβ-カロテンのような脂溶性の成分は、加熱・加工を経ても残りやすく、むしろ吸収されやすくなる場合があります。加工トマトの考え方はトマトの栄養と効果、血糖が気になる人の生・加熱・缶詰の選び方にまとめています。ビタミンCなど熱や保存に弱い成分は、製品によって差があります。
| 比べるところ | 野菜そのもの | 野菜ジュース |
|---|---|---|
| 噛む・胃での滞留 | 時間がかかる | 短くなりやすい |
| 不溶性食物繊維 | そのまま残る | 製品により減る/残る |
| 一度にとる量 | 増やしにくい | 増えやすい |
| 脂溶性の成分 | 調理法による | 残りやすい傾向 |
| 果汁の混入 | 基本的にない | 製品により入る |
いちばん差が出るのは「果汁が入っているかどうか」です

血糖の面で野菜ジュースを見るとき、最初に確認したいのは食物繊維よりもまず果汁の有無です。果物の甘さのもとになる糖は、野菜の糖よりも量として多く入りやすく、飲みやすさを出すために加えられていることがあります。
商品の顔つきだけでは判断できません。緑色のパッケージで「野菜」と大きく書かれていても、原材料の上位に果汁が並んでいることは珍しくありません。「1日分の野菜」という表現も、野菜の使用量についての表現であって、果汁が入っていないことを意味するものではありません。
おおまかには、次の3つのタイプに分けて考えると整理しやすくなります。
| タイプ | 見た目・味の傾向 | 血糖を気にするときの位置づけ |
|---|---|---|
| 野菜のみ(果汁なし) | 青くささが残る、塩味を感じるものもある | 日常的に選びやすい |
| 野菜+果汁 | 飲みやすく甘い | 量と回数を決めて飲む |
| 果汁が主体(スムージー系含む) | とろみと甘さが強い | 野菜の代わりではなく嗜好品として扱う |
ラベルのどこを見ればよいのでしょうか

1か所目:原材料名の並び順
加工食品の原材料名は、原則として重量の多い順に表示されます(食品表示基準・消費者庁)。つまり、先頭に近いところに果汁やりんご、ぶどう、オレンジといった名前が並んでいれば、その製品は果物の割合が高いということです。「野菜汁」が先頭で果汁が後ろにあるものと、その逆とでは、中身がかなり違います。
2か所目:栄養成分表示の炭水化物と糖質
栄養成分表示では、熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の表示が義務づけられています(食品表示基準・消費者庁)。炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたもので、製品によっては糖質と食物繊維に分けて書かれています。分けて書かれているものは、どれくらい繊維が残っているかを比べる手がかりになります。
同じシリーズでも味ごとに数値が違うことがあるので、比べるときは「同じ内容量あたり」で見るのがこつです。100mlあたりで書かれているものと1本あたりで書かれているものが混ざっているため、そこをそろえないと比較になりません。糖質と糖類の違いについては、当院のコラム「糖質」と「糖類」はどう違う?食品表示の見方で整理しています。
3か所目:食塩相当量
トマトジュースには食塩を加えたタイプと無塩タイプがあります。血圧も一緒に指摘されている方は、ここも合わせて見ておくと選びやすくなります。表示に「食塩無添加」とあるものは、加えていないという意味で、もともと野菜に含まれるナトリウムがゼロという意味ではありません。
ついでに見ておきたい容量
200mlの紙パックか、それより大きいペットボトルかで、一度に入ってくる量が変わります。大きいボトルをコップに注がずに飲むと、思ったより量が進みます。
「低糖質」「無糖」と書いてあれば安心してよいのでしょうか
これらの表現には、食品表示基準で定められた条件があります(食品表示基準・消費者庁)。ただし注意したいのは、「糖類無添加」は砂糖などを加えていないという意味であって、素材そのものに含まれる糖がないという意味ではないことです。果汁100%のジュースは、砂糖を加えていなくても果物由来の糖を含みます。
また、GI値が低いとされる食品でも、量が増えれば入ってくる糖の総量は増えます。この点は低GI 食品 一覧|血糖が気になる人の見方と落とし穴でも触れています。表示の言葉は「そこだけを見て決める材料」ではなく、原材料名と栄養成分表示と合わせて読むものだとお考えください。
飲み方でできる工夫
空腹のまま単独で飲まない
朝、何も食べていない状態で甘い飲みものだけを流し込むと、糖だけが先に入ってくる形になります。たんぱく質を含むもの(ゆで卵、納豆、ヨーグルト、チーズなど)や主食と一緒に、食事の一部として飲むほうが、糖だけが単独で入る形にはなりません。ヨーグルトやチーズの選び方はヨーグルトの効果|量・タイミング・選び方がわかる、チーズと血糖値|糖尿病が気になる人の選び方と食べる時間をご覧ください。
「野菜の代わり」ではなく「野菜の足し」と考える
野菜ジュースを飲んでいるから今日は野菜料理はいらない、という置き換えをすると、噛むことや食物繊維の部分が抜け落ちます。汁物に野菜を足す、主菜に付け合わせをつける、といった固形の野菜は残したうえで、足りない日の補いとして使うほうが、もとの目的に合います。
コップに注いで量を決める
パックやボトルから直接飲むと、どれだけ飲んだかが見えません。コップに注ぐ、1日1本までと決めるなど、量が見える形にしておくと、無意識に増えていくことを防げます。
水分補給の役目は水やお茶に任せる
のどが渇いたときの1杯を毎回野菜ジュースにすると、回数がそのまま増えます。渇きをいやす役目は水やお茶に任せて、野菜ジュースは「食事の一部」として位置づけると、回数の管理がしやすくなります。
自分の場合はどうか、数字で見る方法もあります
ここまでお話ししてきたのは、あくまで一般的な考え方です。同じ製品を飲んでも、その後の血糖の動き方には個人差があります。ご自身の体でどうなるかは、実際に測ってみないと分かりません。
当院では、院内にグリコヘモグロビン分析装置があり、血糖値とHbA1cの迅速検査を行っています。受診したその日のうちに結果をお伝えできるため、「最近こういう飲み方をしていました」というお話と数字を突き合わせながら、次に何を変えるかを一緒に考えることができます。また、当院には管理栄養士が在籍しており、栄養相談室で栄養相談を行っています(完全予約制ですので、受付スタッフにお申し出ください)。実際に飲んでいる製品のパッケージや写真をお持ちいただければ、表示を一緒に見ながらお話しできます。
健診の結果を渡されたものの、数値が改善しないまま時間が過ぎている、悪くなっていくようだ、というときは、食事の工夫だけで抱え込まずに一度ご相談ください。当院は京王新線「初台駅」南口より徒歩1分で、月・木は18時15分まで、土曜も14時まで診療していますので、平日の日中に時間が取りにくい方もご相談いただけます(火曜・日曜・祝日は休診です。金曜日は非常勤医師が対応します)。診療対象は15歳以上の方です。
あわせて見直しやすいところ
飲みものを見直したあとは、毎日の食事の組み立てにも目を向けると続けやすくなります。主食から決める順番は糖尿病のレシピを簡単に|平日の夕食、主食から決める順番に、間食の選び方は糖尿病のおやつを市販品で選ぶとき|表示の3か所と食べる時間にまとめています。外食が続く方は糖尿病の外食、選び方と食べる順番|飲み会の乗り切り方もご参考になさってください。