糖尿病のフットケアは「足を見る習慣」から始まります
糖尿病と付き合ううえで、血糖値やHbA1cと同じくらい気にかけていただきたいのが足です。日本糖尿病学会の『糖尿病診療ガイドライン2024』でも、糖尿病足病変は独立した項目として取り上げられ、日常的な足の観察と予防的なケアの大切さが示されています。
診察室で靴下を脱いでいただくと、ご本人がまったく気づいていなかった小さな傷や、かかとの深いひび割れ、指の間のふやけが見つかることは珍しくありません。痛みがないから大丈夫、ではなく「痛くないからこそ見て確かめる」。これがフットケアの出発点になります。
糖尿病で足のトラブルが起こりやすくなる3つの理由
1. 神経障害で痛みに気づきにくくなる
血糖の高い状態が続くと、足先の神経がはたらきにくくなることがあります。すると、靴ずれや画びょうを踏んだ痛み、やけどの熱さといった「危険を知らせる感覚」が鈍くなります。ジンジンする、砂利の上を歩いているような感じがする、逆に感覚が鈍い——こうした変化は、足を守るセンサーが弱っているサインかもしれません。夜に足がつりやすい方はこむら返りの原因と受診の目安|夜に足がつる理由もあわせてご覧ください。
2. 血流が悪いと治りが遅くなる
足へ向かう動脈が細くなると、酸素や栄養、そして薬が傷まで届きにくくなります。ふだんなら数日で治る程度の傷が、なかなかふさがらないことがあります。歩くとふくらはぎが痛み、休むと楽になるという症状は、血流の低下を疑うきっかけになります。
3. 高血糖では感染が広がりやすい
血糖値が高い状態では、細菌と戦う力が落ちやすいことが知られています。小さな傷や水虫のひび割れが入口となり、皮膚の下で炎症が広がってしまうこともあります。だからこそ「小さいうち」に気づくことが何よりの近道です。傷の治りが気になる方は小さな傷が治らない時に考えられる原因と受診のサインも参考になります。
毎日1分の足チェック|どこを、何を見るか

お風呂上がりなど、時間を決めてしまうと続けやすくなります。目が届きにくい足の裏は、手鏡を床に置いて映すか、ご家族に見てもらいましょう。
| 見る場所 | チェックすること |
|---|---|
| 足の裏・かかと | 傷、ひび割れ、タコ・魚の目、色の変化、出血のあと |
| 指の間 | ふやけ、皮むけ、白くなっていないか、においの変化 |
| 爪 | 厚み、変色、巻き爪、深爪、爪の脇の赤みや痛み |
| 足の甲・くるぶし | むくみ、赤み、熱感、靴のあたりあと |
| 皮膚全体 | 乾燥、うろこ状のかさつき、毛が減っていないか |
| 感覚・温度 | 左右で冷たさが違わないか、触った感じが鈍くないか |
気づいた変化は、スマートフォンで写真を撮っておくと変化を比べやすく、受診時にも役立ちます。
洗い方・保湿・爪の切り方の基本
洗う
石けんをよく泡立て、手のひらでやさしく洗います。ナイロンタオルやブラシでこすると、気づかないうちに皮膚を傷つけます。忘れやすいのが指の間で、洗ったあとは水分をやわらかいタオルで押さえるように拭き取ります。お湯は熱くしすぎず、手で触れて熱く感じない温度に。感覚が鈍っていると、熱さに気づけないことがあります。
保湿する
乾燥してひび割れた皮膚は、細菌の入口になります。入浴後に保湿剤を足全体へのばしますが、指の間は蒸れやすいため塗り込まないようにします。かかとが硬く厚くなっている場合は、削るより保湿を続けるほうが安全です。
爪を切る
爪は角を落としすぎない「スクエアオフ」が基本です。深爪は爪の脇が皮膚に食い込む原因になります。切りにくいときは無理をせず、やすりで少しずつ整えるか、医療機関に相談してください。爪が厚い、白く濁っている場合は、水虫(爪白癬)のことがあり自己判断で削るのは避けましょう。
靴と靴下の選び方
足のトラブルは、多くが靴との摩擦や圧迫から始まります。
| 選ぶとき | ポイント |
|---|---|
| 靴のサイズ | つま先に少し余裕があり、幅がきつくないもの。夕方に試すとむくんだ状態で確認できます |
| 靴の形 | 先の細い靴やヒールは指を圧迫します。かかとが安定し、ひもやベルトで調整できるものが安心です |
| 新しい靴 | 初日から長時間履かず、短時間から。帰宅後に必ず足を確認します |
| 靴下 | 白や淡い色だと出血や浸出液に気づきやすく、縫い目が当たらない、締めつけの強すぎないものを |
| 履く前 | 靴の中に小石や異物がないか手で確かめる習慣をつけます |
やらないほうがよい5つのこと
よかれと思って行ったケアが、かえって足を傷めることがあります。
- 素足で過ごす:屋内でもスリッパなどを履き、踏み抜きやぶつけを防ぎます
- 湯たんぽ・電気毛布を足に直接あてる:感覚が鈍いと低温やけどに気づけません。就寝前に寝具を温め、寝るときは外すのが安全です
- タコ・魚の目を自分で削る、市販の角質除去剤を使う:皮膚を傷つけ、そこから感染することがあります
- 傷を「そのうち治る」と様子見する:糖尿病では治りが遅れやすく、小さな傷ほど早めの相談が有利です
- 水虫を放置する:指の間のひび割れは細菌の入口になります。市販薬で改善しないときは受診を
受診の目安|すぐ相談したい足のサイン

迷ったときは「見つけた日に連絡する」で構いません。早いほど、できることが多く残ります。
| 緊急度 | 足の状態 | 行動 |
|---|---|---|
| その日のうちに | 赤く腫れて熱を持つ/膿が出る/黒く変色した/発熱を伴う/急に強く痛む・冷たく色が悪い | 受診先へ電話で相談し、当日診てもらう |
| 数日以内に | 1週間たっても治らない傷/水ぶくれ/深いひび割れ/爪の脇が赤く痛む/じくじくする | 予約を取って早めに受診 |
| 次の診察で | タコ・魚の目/爪が厚い/しびれや感覚の鈍さ/乾燥がひどい | 診察時に靴下を脱いで足を見てもらう |
足の変化は、血糖コントロールの状態と切り離せません。ご自身の数値の位置づけを確認したい方はHbA1cの基準値の読み方|数値ごとの受診目安がわかるや血糖値の正常値|空腹時・食後・HbA1cで見分けるをあわせてご覧ください。
医療機関でのフットケアと費用の考え方
診察では、足の皮膚や爪を見るほか、モノフィラメントや音叉を使って感覚を調べたり、足の脈に触れて血流を確かめたりします。必要に応じて、腕と足首の血圧を比べる検査などで動脈の状態を評価することもあります。
費用については、厚生労働省の診療報酬点数表に「糖尿病合併症管理料」が設けられており、足潰瘍や壊疽の既往、神経障害や末梢動脈疾患があるなど一定の条件を満たす方は、医師や看護師によるフットケア指導を保険診療の中で受けられます。該当するかどうかは状態によって異なりますので、通院先で確認してください。一方、美容目的の角質ケアなどは保険の対象外です。
足を相談する先の選び方
「どこに行けばよいか分からない」という声をよくいただきます。次のような点を目安にすると選びやすくなります。
- 糖尿病を継続して診てもらえる(糖尿病専門医が在籍しているかは一つの目安になります)
- 足病変やフットケアに関する学会・研修に関わっている医師がいる
- 通いやすい場所と時間帯にある。傷ができたときにすぐ相談できる距離かどうかは、想像以上に大切です
- 皮膚科や血管の専門医療機関と連携できる体制がある
渋谷区初台のように駅から近い内科であれば、仕事の前後にも立ち寄りやすくなります。地域で相談先を決めるときの考え方は初台でクリニックを探す|健診結果の相談先を決めるにまとめています。まだ糖尿病の指摘を受けたばかりという方は、健康診断の結果の見方|血糖・脂質・肝機能を読み解くから確認してみてください。
今日からできる3つのこと
完璧を目指さなくて大丈夫です。まずは、お風呂上がりに足の裏まで一度見る。靴を履く前に中を手で確かめる。保湿剤を足元に置く。この3つだけでも、足を守る力は変わってきます。薬や数値の話だけでなく、こうした毎日の小さな習慣が、これから先も自分の足で歩き続けることにつながります。