カリウムは「増やす栄養素」でも「控える栄養素」でもあります
「カリウムが多い食べ物」と検索される方には、大きく分けて二通りの事情があります。ひとつは、血圧が高めで「野菜や果物を増やしましょう」と言われた方。もうひとつは、健診で腎機能の項目を指摘されて「カリウムを控えたほうがいいのでは」と心配になった方です。同じ栄養素なのに、目指す方向が正反対になるのがカリウムのややこしいところです。
カリウムはミネラルの一種で、体の水分バランスや神経・筋肉のはたらきに関わっています。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、カリウムは生活習慣病の発症予防を目的とした目標量が設定されている栄養素で、多くの日本人にとっては不足しがちな側面があるとされています。一方で、腎臓のはたらきが落ちてくるとカリウムを尿へ捨てる力が弱まるため、同じ食べ方が体に負担になることがあります。
この記事では、まずカリウムが多い食べ物を整理し、そのうえで「増やしたい人」「控える必要がある人」の分かれ目をどう考えるかをまとめます。ご自身がどちら側なのかを判断する材料にしていただければと思います。
カリウムが多い食べ物の一覧

カリウムは、加工されていない食材ほど多く含まれる傾向があります。文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」を参照すると、次のようなグループに多く含まれています。具体的な含有量の数値は食品や部位、調理法によって幅があるため、ここでは「どのグループに多いか」という形でご紹介します。
| グループ | 代表的な食べ物 | 覚え方のポイント |
|---|---|---|
| いも類 | さつまいも、里いも、じゃがいも、山いも | 主食代わりに食べると量がまとまりやすい |
| 豆類・大豆製品 | 大豆、小豆、いんげん豆、納豆、きな粉 | 乾物は水分が抜けている分、少量でも量が入る |
| 果物 | バナナ、メロン、キウイ、アボカド、干し柿・レーズンなどのドライフルーツ | 生果物より乾燥させたものに多く集まる |
| 野菜 | ほうれん草、小松菜、かぼちゃ、たけのこ、切り干し大根、トマト | 青菜と根菜、乾物野菜が中心 |
| 海藻・きのこ | ひじき、昆布、わかめ、干ししいたけ | 乾物のまま食べる形だと多くなる |
| 魚介・肉 | かつお、まぐろ、さわら、豚ヒレ、鶏むね | たんぱく質食品にもまとまって含まれる |
| 飲み物・その他 | 野菜ジュース、果汁100%ジュース、牛乳、コーヒー、ナッツ類、黒糖 | 「飲みもの」は意識から抜けやすい |
ここで見落とされやすいのが、最後の行です。食事の内容だけを気にして、ジュースや牛乳、コーヒーといった飲み物を勘定に入れていない方は少なくありません。飲み物は毎日ほぼ同じ量を続けやすいので、増やしたい方にも控えたい方にも効いてくる部分です。
肉や魚にも含まれているという点
「カリウム=野菜と果物」というイメージが強いのですが、実際には肉や魚にもまとまって含まれています。腎臓の状態によってカリウムを控える必要が出たとき、野菜と果物だけを我慢して肉や魚をそのまま食べ続けると、思ったほど下がらないことがあります。逆に、増やしたい方が野菜だけを頑張らなくても、主菜からも入ってくると知っておくと気が楽になります。
カリウムを増やしたほうがよい人
血圧が高め、あるいは塩分の摂り過ぎを指摘されている方は、カリウムを意識して摂る側になります。日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」では、高血圧の生活習慣修正項目のひとつとして、野菜・果物の積極的な摂取が挙げられています。ただし同ガイドラインでは、腎障害のある方は高カリウム血症をきたす恐れがあるため野菜・果物の積極的摂取を推奨しない、糖尿病などでカロリー制限が必要な方は果物の摂り過ぎに注意する、という但し書きが明記されています。
つまり「野菜と果物を増やしましょう」というアドバイスは、腎臓に問題がないことと、エネルギー量の管理ができていることが前提になっています。糖尿病で通院されている方が、血圧のためにと果物を一日に何度も食べるようになり、血糖の管理が難しくなる、というのは実際にありうる流れです。増やすなら、まずは果物より野菜・海藻・きのこから、と考えると無理がありません。
増やしたい場合の実践のコツ
カリウムは水に溶けやすい性質があります。ゆでこぼしたり、長く水にさらしたりすると、その分だけ煮汁のほうへ移っていきます。増やしたい方は、次のような形が向いています。
- スープや味噌汁にして、汁ごといただく(塩分が増えすぎないよう、だしを効かせて薄味にする)
- 生のまま食べられる野菜はサラダや和え物にする
- 電子レンジ加熱や蒸し料理を使い、ゆで汁を捨てない調理にする
- いも類を主食の一部として取り入れる
忙しくて生野菜を切る余裕がない、という方には冷凍野菜も現実的な選択肢です。使い方については冷凍野菜って栄養はあるの?おいしく上手に活用するコツでまとめていますので、あわせてご覧ください。
カリウムを控えたほうがよい人
一方で、カリウムを制限する必要が出てくるのは、主に腎臓のはたらきが低下している場合です。日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」では、慢性腎臓病(CKD)のステージが進んだ方に対して、血清カリウム値を管理するための食事性カリウム制限が示されています。制限が必要かどうか、どの程度かは、腎機能の段階と血液検査の結果によって変わりますので、自己判断ではなく主治医の指示に沿うことが大切です。
また、腎機能そのものは大きく落ちていなくても、次のような場合にはカリウムが体にたまりやすくなることがあります。
- 血圧や心臓の薬の一部(ACE阻害薬、ARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、カリウム保持性利尿薬など)を使っている
- 糖尿病があり、腎臓でのカリウム排泄に関わるホルモンのはたらきが低下している
- 脱水や急な体調不良で、一時的に腎臓への血流が減っている
ご自身がどれに当てはまるかは、お薬手帳と直近の血液検査の結果を持って受診いただくのが確実です。「野菜ジュースを健康のために毎日飲んでいます」といったことは、こちらから尋ねないと出てこない情報でもありますので、遠慮なくお話しください。
控えたい場合の調理の工夫
制限が必要と言われた場合でも、野菜を一切食べないという話ではありません。カリウムが水に溶ける性質を利用して、量を減らす方法があります。
- 小さめに切ってから、たっぷりの湯でゆでてゆで汁を捨てる(ゆでこぼし)
- 切ったあと水にさらす
- いも類は皮をむいて切ってから調理する
- 汁物は具を中心にして、汁を残す
- 果物は生より缶詰のシロップを切ったものを選ぶ
- ジュース類、乾物、干した果物は量に注意する
ゆでこぼしはカリウム以外のビタミンなども一緒に減ってしまうため、すべての料理でやる必要はありません。どの食材に絞って行うかは、栄養相談で個別に整理していくのが現実的です。
健診で腎機能を指摘されたら、どう考えるか

健診結果で見るべきなのは、クレアチニン、eGFR、尿蛋白の三つです。eGFRは腎臓が老廃物を捨てる力を推定した数値で、尿蛋白は腎臓のフィルターの傷み具合を映します。どちらか一方だけでは判断がつきにくく、両方をあわせて見ます。
ここで大事なのは、一度の結果だけで「腎臓が悪い」と決めつけないことです。脱水、激しい運動の直後、一時的な体調不良などでも数値は動きます。日本腎臓学会のCKDの定義では、腎機能低下や尿異常などの所見が3か月以上続くことが条件とされています。ですから、指摘を受けたときにまずすべきなのは、食事を自己流で変えることではなく、再検査で状態を確かめることです。
実際、腎機能を指摘されたことをきっかけに、良かれと思って野菜ジュースや果物を大幅に増やしてしまう方がいらっしゃいます。血圧のためには理にかなった行動なのですが、腎機能によっては逆向きに働きます。順番としては「確かめる」が先、「変える」が後です。健診結果の読み方全般については健康診断の結果の見方|血糖・脂質・肝機能を読み解く、再検査の受け方については健康診断の再検査を放置するリスクと正しい受け方も参考になります。
糖尿病がある方はとくに両方に関わります
糖尿病は腎臓に影響が及びやすく、血圧の管理も同時に必要になることが多い病気です。つまり「血圧のためにカリウムを増やしたい」と「腎機能のためにカリウムを気にしたい」が、同じ人の中で同居しうるということです。この場合こそ、一般論ではなくご自身の検査値をもとにした調整が必要になります。血糖の数値の見方はHbA1cの基準値の読み方|数値ごとの受診目安がわかるにまとめています。
当院での相談の受け方
当院は糖尿病内科・一般内科を標榜しており、院長は日本糖尿病学会の糖尿病専門医です。院内にグリコヘモグロビン分析装置、自動血球計数CRP測定装置、小型尿分析装置、電極式電解質分析装置を備えており、電解質や尿の項目を院内で測定できます。血糖値・HbA1cは迅速検査に対応しています。
食事の組み立てについては、管理栄養士が在籍しており、院内の栄養相談室で栄養相談を行っています。完全予約制ですので、ご希望の方は受付スタッフへお申し出ください。「カリウムを増やすべきか控えるべきか」というご相談は、検査値と普段の食事内容の両方が揃ってはじめて具体的な話ができる領域です。お薬手帳と健診結果をお持ちいただけると話が早く進みます。
診療時間は月・木が9:00〜12:30と14:15〜18:15、水が8:20〜12:30と13:15〜15:00、金が9:00〜12:30と13:15〜17:30、土が9:00〜14:00です。火曜・日曜・祝日は休診で、受付終了時間は診療終了時間と同じです。なお金曜日は非常勤医師が対応します。デジスマ診療によるWeb予約・Web問診に対応しており、事前に済ませておくと来院後の待ち時間を減らせます。診療対象は15歳以上(高校生以上)の方です。
まとめ:まず自分がどちら側かを確かめる
カリウムが多い食べ物は、いも類、豆類、果物、青菜や根菜、海藻・きのこ、そして肉・魚と飲み物です。この一覧そのものは、増やしたい方にも控えたい方にも共通します。違うのは、それをどう扱うかだけです。
血圧が高めで腎機能に問題がなければ、汁ごと食べる調理でカリウムを活かす方向へ。腎機能の低下や関連するお薬がある場合は、ゆでこぼしや水さらしで量を調整する方向へ。そして、どちらか分からないという方は、まず腎機能と電解質の検査結果を確かめることが最初の一歩になります。食べ物の一覧を眺めるより、ご自身の数字を一枚持っているほうが、迷いはずっと少なくなります。