「玉ねぎは血糖値にいい」とよく聞きますが、本当ですか
外来でもよくいただく質問です。先にお答えすると、玉ねぎを食べれば血糖値が下がる、と言い切れるだけの根拠はまだありません。玉ねぎに含まれる成分について、試験管の中や動物での実験、人を対象にした小規模な研究はいくつも報告されていますが、「毎日これだけ食べれば血糖値がこれだけ下がる」という形で結論が出ているわけではないのです。
日本糖尿病学会の『糖尿病診療ガイドライン2024』でも、食事療法の考え方は「特定の食品で血糖を下げる」ではなく、総エネルギー摂取量と栄養素のバランスを一人ひとりの状態に合わせて決めていく、という組み立てになっています。玉ねぎはその枠組みの中で使いやすい野菜のひとつ、という位置づけで考えていただくのがちょうどよい距離感だと思います。
とはいえ、がっかりしていただく必要はありません。玉ねぎは安くて日持ちして、和洋中どれにも使えます。「血糖に効く食材」として特別扱いするより、野菜を食べる量そのものを無理なく増やす道具として考えると、毎日の食事の中で長く続けやすくなります。
玉ねぎに期待されている成分と、どこまで言えるか
ケルセチン(ポリフェノールの一種)
玉ねぎが話題になる理由の多くは、この成分です。抗酸化作用に関する研究が多く、糖の代謝に関わる報告もありますが、人で血糖値がどう変わるかについては研究によって結果がそろっていません。ケルセチンは茶色い外皮のすぐ内側、外側の層に多いとされます。皮をむくときに外側を厚くむきすぎると、その分は捨ててしまうことになります。
含硫化合物(硫化アリルなど)
玉ねぎを切ったときのあの刺激のもとです。血液や代謝に関する作用が古くから研究されてきましたが、こちらも食事として食べる量で血糖値が動くと証明された段階ではありません。水に溶けやすく、揮発もしやすいという性質があり、この後の「水にさらす」の話につながります。
フルクタン(水溶性の食物繊維に近い糖)
玉ねぎの甘みのもとになる成分で、消化されずに大腸まで届き、腸内細菌のエサになります。食物繊維としての働きが期待される一方で、人によってはお腹の張りやガスの原因にもなります。食物繊維全体の考え方は食物繊維が多い食べ物、血糖と便通で選び方が変わりますにまとめていますので、あわせてご覧ください。
つまり、期待されている成分はある。ただし「薬のように効く」とは言えない。これが現時点で正直にお伝えできるところです。血糖値の薬を飲んでいる方が、薬を減らす目的で玉ねぎを大量に食べる、という使い方はおすすめしません。
生・水にさらす・加熱で、何が変わるのか

同じ玉ねぎでも、下ごしらえと調理で変わる点があります。表で整理します。
| 食べ方 | 味・食感 | 成分の面で起きること | 血糖の面で気にしたい点 |
|---|---|---|---|
| 生(スライス) | 辛みと香りが強い | 水に溶けやすい含硫化合物が残りやすい | ドレッシングやマヨネーズの量が増えやすい |
| 水にさらす | 辛みが抜けて食べやすい | 水溶性の成分が水に出る分がある | 食べやすくなり量を増やせる、という利点もある |
| 炒める・飴色にする | 甘みが強くなる | 加熱でかさが大きく減る | かさが減る分、気づかずに玉ねぎ何個分も食べていることがある |
| 煮る(スープ・味噌汁) | やわらかく食べやすい | 溶け出した成分も汁ごと取れる | 汁物は塩分が増えやすい。市販のスープの素は表示を確認 |
水にさらすべきか、さらさないべきか
「水にさらすと栄養が逃げるから、さらさないほうがいい」という話をよく聞きます。確かに水に溶けやすい成分は一部失われます。ただ、辛くて食べられないなら、そもそも食卓に上がりません。さらして食べやすくなり、サラダの野菜が一品増えるのなら、そちらのほうが現実的です。辛みが気になる方は、繊維に沿って切る、切ってから少し空気にさらす、といった方法もあります(辛みの感じ方には個人差があります)。
飴色玉ねぎは「甘い」ので要注意、ではなく「多い」ので要注意
加熱で砂糖が増えるわけではありません。加熱によって甘みを感じやすくなり、同時にかさが大きく減るため、結果として玉ねぎをたくさん食べることになるのがポイントです。玉ねぎ自体は野菜の中では糖質が少ないほうではないので、飴色玉ねぎをたっぷり使ったカレーやハンバーグソースは、ごはんの量とあわせて考えておくと組み立てやすくなります。
血糖が気になる方の、玉ねぎの取り入れ方

1|食事の最初のほうに野菜を置く
玉ねぎだからというより、野菜や汁物を先に食べ、主食を後にする順番は、食後の血糖の上がり方を穏やかにする方向に働くと考えられています(効果の大きさには個人差があります)。玉ねぎは生でも加熱でも使えるので、この「最初の一品」を作りやすい野菜です。
2|主食の量とセットで考える
玉ねぎを足しても、カレーや丼のごはんの量が変わらなければ、食後の血糖の動きは大きくは変わりません。平日の献立の組み立て方は糖尿病のレシピを簡単に|平日の夕食、主食から決める順番で詳しく書いています。
3|味付けの油と塩に目を向ける
玉ねぎそのものより、かける物のほうが影響が大きい場面は多くあります。生のスライスにマヨネーズをたっぷり、オニオンスープに市販のコンソメと追い塩、といった形です。食材を足すときは、同時に増える調味料も一緒に見るのがこつです。
4|玉ねぎだけで組み立てない
たんぱく質と組み合わせると、一皿として成立しやすくなります。たとえば豆腐や納豆に生の玉ねぎを合わせる、スープに大豆製品を入れる、といった形です。大豆製品の選び分けは大豆の効果と、血糖が気になる人の豆腐・納豆・豆乳の選び分けにまとめています。
気をつけたい場面と、よくある誤解
酢玉ねぎ・玉ねぎ茶・玉ねぎの皮の粉末
いずれも「血糖値に効く」という触れ込みで紹介されることがありますが、人で血糖値がどう変わるかを裏づけるだけの質の高い研究はそろっていません。食べて楽しむ範囲なら問題ありませんが、薬の代わりにはならず、自己判断で薬を減らす理由にはできません。酢玉ねぎに砂糖を多めに入れる作り方もあるので、甘酢に何が入っているかは確認してみてください。
市販の玉ねぎスープ・野菜ジュース
手軽ですが、商品によって中身はかなり違います。ラベルのどこを見るかは野菜ジュースで血糖値が気になる人へ、果汁の有無とラベルの見方と、「糖質」と「糖類」はどう違う?食品表示の見方が参考になります。
「低GIだから安心」ではない
GI値は一つの目安にすぎず、一緒に食べる物や量で食後の血糖の動きは変わります。考え方は低GI 食品 一覧|血糖が気になる人の見方と落とし穴にまとめました。生で食べるか加熱するかで迷う点は、トマトの栄養と効果、血糖が気になる人の生・加熱・缶詰の選び方とも共通します。
お腹の張り・下痢が出るとき
玉ねぎに含まれるフルクタンは、体質によってガスや張りの原因になります。玉ねぎを増やしてから調子が悪いと感じる方は、無理に続けず量を戻してください。食べ物を変えても症状が続くとき、体重が減っていくときは、別の原因を考える必要があります。
血糖値の薬を使っている方へ
食事を大きく変えると、薬の効き方との釣り合いが変わることがあります。野菜を増やす、主食を減らす、といった変更をするときは、次の受診のときに「何をどう変えたか」を具体的に伝えてください。自己判断で薬の量を変えることは避けていただきたいところです。
当院では管理栄養士が在籍しており、栄養相談室で栄養相談を行っています(完全予約制ですので、受付スタッフにお申し付けください)。「玉ねぎを増やしたほうがいいですか」といった個別の質問も、ふだんの食事の中身をうかがったうえでお答えしています。また、院内にグリコヘモグロビン分析装置があり、血糖値とHbA1cの迅速検査ができますので、食事を変えてみた結果をその日のうちに一緒に確認することもできます。
健診で血糖やHbA1cを指摘されたまま様子を見ている方、食事を工夫しても数値が変わらない方、口の渇きや体重減少など気になる変化が続いている方は、早めにご相談ください。当院(東京都渋谷区初台1-37-4)は京王新線 初台駅 南口から徒歩1分で、月曜・木曜は18:15まで診療していますので、お仕事帰りにも立ち寄りやすいかと思います。受付終了は診療終了と同じ時刻です。なお、診療の対象は15歳以上(高校生以上)の方です。